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平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題2解説

目次

平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題2解説

問1 メタ言語

 1 メタ言語とは、言語自体に言及した言語のこと。
 2 パラ言語は、簡単にいうと話し方のこと。
 3 機能語は文法的な機能を持った語のこと。
 4 媒介語は言語教育における学習者の目標言語ではない言語のこと。多くの場合、学習者の母語を指します。

 「用語の説明や定義づけ」とは、つまり言語について説明することです。例えば「春は3月~5月くらいの暖かい季節だ」などは春を説明した表現でメタ言語。
 答えは1です。

問2 口語の縮約形

 「~では」の口語形は「~じゃ」です。「学生ではない」に対して「学生じゃない」のほうが話し言葉っぽくなりますよね。このような音韻的対立を選択肢から探しましょう。

選択肢1

 「あまり」に「ん」を挿入した「あんまり」はちょっと強調する意味が増すかなと感じます。
 「あまり」と「あんまり」はどちらも話し言葉で使えるし、「~では」と「~じゃ」のような対立とは異なるものです。

選択肢2

 「食べてしまう」と「食べちゃう」だと後者のほうが話し言葉っぽくなります。これは「~では」と「~じゃ」のような対立と同じもの。

選択肢3

 ただの表記の揺れ。

選択肢4

 「さくら」が「やま」と複合すると「ざくら」になるのは連濁

 答えは2です。

問3 漢語と和語

選択肢1

 「(~が)ビルを建設する」「ビルが建設される」の漢語動詞「建設」はそれぞれ自動詞と他動詞で自他同形です。これに対応する和語動詞は、自動詞なら「建つ」、他動詞なら「建てる」です。対応する和語も自他同形とは限りません。この選択肢は間違い。

選択肢2

 漢語動詞「休業」は仕事を休むことを表し、「欠席」は授業を休むことを表し、「休憩」はそれまでの作業をいったんやめて休むことを表します。これらに対応する和語動詞は「休む」ですが、「休む」は仕事を休むときも、授業を休むときも、それまでの作業をいったんやめて休むときも使えます。つまり和語動詞「休む」は漢語動詞「休業」「欠席」「休憩」などを意味的に包括しています。漢語動詞は和語動詞に比べて指し示す意味が限られるとするこの選択肢は正しいです。

選択肢3

 漢語動詞「建設」は名詞としても働き、「する」をつけて動詞にできるのでサ変動詞語幹とも呼ばれます。これに対応している和語動詞「建つ」と「建てる」はいずれも名詞ではなく、動詞です。品詞は同じとは限りません。

選択肢4

 「(~が)ビルを建てる」と「ビルを建設する」の使い分けの基準は意味論的な立場から考察されます。例えば会話だと「建てる」を使いやすいし、堅めの場面や文章だと「建設する」を使いやすいです。こういうのは語が持っている意味を研究する意味論の範疇です。

 答えは2です。

問4 接続表現

 各接続表現が同じ働きを持つかどうかを検証するには、特定の文章の中で交替できるかどうか見ればいいです。試しに一つ目の接続表現で例文を考えてみて、それを2つ目、3つ目に置き換えられるかどうかやってみましょう。

選択肢1

 (1) 明日は雨だ。  なぜならば 、山に雲がかかっているからだ。
 (2) 明日は雨だ。  というのも 、山に雲がかかっているからだ。
 (3)✕明日は雨だ。  つまり 、山に雲がかかっているからだ。

 選択肢3だけ異なるようです。この選択肢は間違い。

選択肢2

 (4) 明日は雨だ。  とはいえ  行かないわけにはいかない。
 (5)✕明日は雨だ。  とすると  行かないわけにはいかない。
 (6)✕明日は雨だ。  ただし  行かないわけにはいかない。

 全部全く違う働きをしてるようです。この選択肢は間違い。

選択肢3

 (7) 彼女は辞めた。  したがって  、この部署は忙しくなるだろう。
 (8) 彼女は辞めた。  ゆえに  、この部署は忙しくなるだろう。
 (9) 彼女は辞めた。  そのため  、この部署は忙しくなるだろう。

 この3つは同じ文脈で交替できるので同じ働きをしていま。全て順接を表す接続詞です。

選択肢4

 (10) お腹が空いた。  しかしながら  、私は今ダイエット中だ。
 (11)✕お腹が空いた。  というのも  、私は今ダイエット中だ。
 (12)✕お腹が空いた。  ところで  、私は今ダイエット中だ。

 交替できないので同じ働きをしていません。

 答えは3です。

問5 分裂文

 分裂文とは、単文の中のある成分を強調するために抜き出して複文にしたもののことです。「私はコーラが飲みたい」の「コーラ」を強調するために、「私が飲みたいのは、コーラだ」と取り出した文が分裂文です。

 選択肢3の「ここで確認したいのは、両者に相関関係が認められるということである。」は、「両者に相関関係が認められるということをここで確認したい。」に言い換えることができます。

 したがって答えは3です。

問6 アカデミック・ライティングの指導

 レポートや論文などの学術的な文章の執筆をアカデミック・ライティングと言います。

選択肢1

 理解語彙は読んだり聞いたりした際に理解できる語彙の集合のことで、使用語彙は自分が話したり書いたりした際に使える語彙の集合のことです。「読めるけど書けない」「意味は分かるけど使わない」といった類の語彙は理解語彙に属しているので、一般的には誰でも使用語彙よりも理解語彙の方が多いです。使用語彙が理解語彙を上回ることはありません。

選択肢2

 論文と新聞の文体は同じですが、法律文はそれとは全く異なります。

選択肢3

 直接引用とは、他者の発言や文章を「 」を使って忠実に引用するものです。
 「A氏は『これは~~~~である』と述べている。」みたいに、直接引用であればダイクシス表現もそのまま引用するので、変換についての指導は不要です。
 ちなみにダイクシスとは発話現場にいなければ意味が成立しない表現のことで、上記の例文の「これ」がダイクシスです。

選択肢4

 そうですね! 真っ先に思いついたのは「位相」です。言語学だと社会階層による言葉の違いを指すんですが、これ元々物理学のほうの用語でした。同じ言葉ですけど分野によって意味が違うので、学習者の専門によってこういう指導は必要です。

 したがって答えは4です。




コメント

コメント一覧 (4件)

  • 問題2問2について
    基本的なことで申し訳ないですか、音韻的対立とは例えばKとgのことと別の解説で読んたのですが、この問題の「じぁ」と「では」と「ちゃう」と「てしまう」が音韻的対立となってます。
    この2つは意味的には同じかなと推測できるのですが、音韻的に対立しているという意味がわかりません。
    教えていただけると助かります。

    • >大福もちさん
      「では」は硬く、「じゃあ」は口語
      「てしまう」は硬く、「ちゃう」は口語
      表現の硬さ、使う場面で対立しているということです。

      • 先生 お忙しいところすみませんでした。
        ありがとうございました。
        質問しときながら、問題番号忘れて、お礼が遅くなりました。
        音韻的対立とあるけれども、意味的な対立ということですね。
        音韻とあったので、辞書で音韻とは音素とあったので、混乱の極みでした。
        ゆっくり寝れます。ありがとうございました。

        • 先程の間違いました。
          音韻的対立とは、意味的ではなく、硬い言い方か口語的な言い方の対立と解釈すればいいですね。

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