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平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説

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平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説

問1 アニマシーが関係する誤用例

 アニマシーは日本語では有生性と訳される文法カテゴリーの一種で、そのものが生きていると感じられる度合いのことです。私たちがそれを生きている(有生物)か生きていない(無生物)かを区別する意識は文法現象と関係します。例えば日本語では、おおざっぱに言って生きていると感じられるものの存在には「いる」を用い、生きていないと感じられるものの存在には「ある」を用います。

選択肢1

 「来る」のニ格名詞は場所性が高い場所名詞でなければいけません。典型的には「学校」「部屋」「トイレ」などです。しかし「わたし」は場所性が低く、人物を指すので場所名詞とは言えません。この文は場所性に関わる誤用が見られます。

選択肢2

 他動詞「あける」ではなく自動詞「あく」を使って「あいた」と言うべきです。自他の混同が見られます。

選択肢3

 「鳴く」は本来主に鳥などの動物の発声に使われますが、ここでは電話に用いています。あまり現実的な推測には思えないんですが… この学習者は電話を有生性が高いものだと思っているから「鳴く」を使ったのかもしれません。ややこじつけ感はあるけど、有生性に関する誤用と見れそうです。この選択肢が答え。

選択肢4

 「子どもを戦争で」と来たら「亡くした」というべきです。「亡くす」は他動詞なので、「(私が)子どもを戦争で亡くした」という言い方は可能です。もしどうしても自動詞「死ぬ」を用いたいのなら、自動詞の受身文にしないといけません。例えば「(私が)子どもに戦争で死なれた」のように。
 有生性とは関係ない誤用です。

 答えは3です。

問2 日本語と中国語の特徴

 膠着語や孤立語についてはちょっと複雑なので、詳しくはこちらを見てほしいです。ここでは超簡単に説明するだけにしておきますね。

 膠着語というのは、一つの語に複数の形態素が含まれていて、それでいてその形態素と形態素の境界が明確という傾向がある言語のことを指します。例えば日本語の「見させる」という語を例に考えてみると…

 mi-sase-ru
 見る-使役-非過去

 「見させる」という一語には、mi- と -sase- と -ru という3つの形態素が含まれていて、その形態素境界は上述のように明確に分けられます。動詞語幹 mi- に対して文法的形態素がきれいに膠で接着されたかのように語が形成されているので膠着語と呼ばれます。

 一方、中国語は一語がたった一つの形態素からなる傾向が強く、このような傾向を持つ言語を孤立語と言います。↓の例では「我」「被」「他」「骂」「了」がそれぞれ一語と見なされ、さらにそれぞれがたった一つの形態素からなっています。

 我被他骂了。
 私-受身-彼-罵る-完了

 なので日本語は膠着語で、中国語は孤立語。答えは2です。
 抱合語屈折語もちょっと難しいので詳しくはリンク先をご覧ください。

問3 人間を表す普通名詞

 まず下線部Cが何を言ってるか理解しないといけないですね。

 人間を表す代名詞は単数と複数が必ず区別される。
 人間を表す代名詞とは、私、君、彼、彼女、あの人などを指してます。これらを複数形にする場合は「たち」や「ら」をつけます。複数の対象を指して「あなた」ということは許されず、必ず「あなたたち」「彼ら」「彼女たち」と複数形になります。このように日本語と中国語は人間を表す代名詞のとき、単数と複数は必ず区別されるそうです。

 人間を表す普通名詞は、単数と複数の区別は原則として義務的ではない。
 人間を表す普通名詞とは、学生、親などのを指してます。これらを複数形にする場合は↑と同様に「たち」や「ら」をつけます。しかし、「私の学生にはプログラミングに詳しい人がいる」というとき、この「学生」が一人なのか複数なのかはっきりしません。一人を指しても複数を指しても「学生」と言えます。つまり人間を表す普通名詞は単数と複数を区別する必要がないということを言ってます。(少なくとも日本語と中国語では)

選択肢1

 「親」は人間を表す普通名詞ですから、上記の内容にしたがうと単数と複数の区別は義務的ではありません。「私の親が…」と言っても、それが母親を指しているのか、父親を指しているのか、あるいは両方を指しているのか分かりません。指されているのは一人とは限りません。

選択肢2

 上記の内容にしたがうと、「彼女」は人間を表す代名詞なので単数と複数は区別されます。指されているのは必ず一人です。

選択肢3

 上記の内容にしたがうと、「彼ら」は人間を表す代名詞なので単数と複数は区別されます。「彼ら」は男性の集団を指す場合にも、女性の集団を指す場合にも、男性と女性が混じった集団を指す場合にも使えます。それに、男性だけでなく女性も含まれているかどうかは単数と複数の問題とは関係ないです。

選択肢4

 上記の内容にしたがうと、「学生」は人間を表す普通名詞ですから単数と複数の区別は義務的ではありません。上述したように、「私の学生には…」というとき、指されているのは単数の可能性もあるし、複数の可能性もあります。

 答えは2です。

問4 英語におけるアニマシーの原則の例外

 アニマシーが高いものほど数を区別するという傾向について、英語は例外となるそうです。

選択肢1

 人間を表す名詞 student には複数形 students があり、動物を表す名詞 dog には複数形 dogs があります。
 どちらも単複の区別があるのでこの選択肢は間違い。

選択肢2

 人間を表す一人称 I には複数形 we がありますが、二人称 you の複数形は同じく you で形が同じ。三人称 he や she の複数形は they があります。一人称、三人称には形式上単複の区別がありますが、二人称にはありません。この選択肢は間違い。

選択肢3

 flowers というように植物にも複数形があります。
 この選択肢は間違い。

選択肢4

 選択肢2で述べたように、二人称 you の複数形は同じく you です。二人称の代名詞には複数形がありませんので、この選択肢が答え。

 答えは4です。

 




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