平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題6解説

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平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題6解説

問1 レベル別の語彙数

 ヒントになるのは「初級修了段階」と「約300時間」。
 初級修了辞典はJLPTでいうN4くらいに相当しますが、現在の試験は全てのレベルで必要な語彙数が示されていません。代わりにN4に相当する旧試験3級には次のような指標が定められていました。(参考:旧試験と新試験の比較をしている資料魚拓))

 基本的な文法・漢字(300字程度)・語彙(1500語程度)を習得し、日常生活に役立つ会話ができ、簡単な文章が読み書きできる能力(日本語を300時間程度学習し、初級日本語コースを修了したレベル)

 だいたい300時間だと1500語程度だそうです。ちなみに旧試験4級(現N5)は約150時間で800語彙。
 1500語はないけど… 一番近いものとして答えは2です。

問2 初級段階での語彙のグルーピング

 1 容姿を形容する語が「すてき」「きれい」「かわいい」と並んでいますが、「好き」「上手」はそれとは異なるグループです。これが答え。
 2 衣類の着脱に関する語彙でまとまっています。
 3 頻度に関する語彙でまとまってます。
 4 存在構文で使える存在場所を表す語彙でまとまってます。

 答えは1です。

問3 多義語の指導

選択肢1

 どっちの「悪い」も否定的な意味を持っていて同義です。多義語じゃない。

選択肢2

 「あした」も「あす」も「みょうにち」も読み方が違うだけで意味が同じなので多義語ではありません。

選択肢3

 「遠い」と「遠く」、「近い」と「近く」は品詞が違うだけで同じ意味です。多義語ではありません。

選択肢4

 「甘いお菓子」の「甘い」は味覚の一種で、「甘い考え」の「甘い」は成熟していない、醸成されていないという意味。同じ語だけど意味が異なります。これが対義語。後者は一般的ではない方の意味なので余裕が出てくる中級以降で扱うべきです。

 答えは4です。

問4 語の記憶を促進するストラテジー

 学習ストラテジーからの出題です。これは優秀な言語学習者が行っている外国語学習のコツみたいなもので、次の6つのストラテジーに分類されています。

直接 記憶 記憶するために用いる暗記、暗唱、復習、動作などの記憶術。新しい知識を蓄え、蓄えた知識の想起を支えるもの。
認知 記憶した情報の操作や変換に用いるストラテジー。リハーサルしたり、既知の要素を組み合わせて長い連鎖を作ったり、分析・推論するなど。または、より理解を深めたりアウトプットするためにメモ、要約、線引き、色分けなどをして知識を構造化するなど。
補償 外国語を理解したり発話したりする時に、足りない知識を補うために用いるストラテジー。知識が十分でなくても推測やジェスチャーなどによって限界を越え、話したり書いたりできるようになる。
間接 メタ認知 学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジー。自分の認知を自分でコントロールし、自ら学習の司令塔となって学習過程を調整したり、自分自身をモニターする。
情意 学習者が学習者自身の感情、態度、動機などの情意的側面をコントロールし、否定的な感情を克服するためのストラテジー。自分を勇気づけたり、音楽を聴いてリラックスしたりするなど。
社会的 学習に他者が関わることによって学習を促進させるストラテジー。質問したり、明確化を求めたり、協力したりするなど。

 1 記憶ストラテジー
 2 記憶ストラテジー
 3 記憶ストラテジー
 4 補償ストラテジー

 答えは4です。

問5 中級段階以降の漢語の指導

選択肢1

 初級は意味が広くていろんな場面で使いやすい和語が多いんですが、中級になると意味が限定的な漢語が増えてきます。例えば、友達と特に目的のない話をするときは「雑談する」といい、いろいろ論を交わすことを「議論する」といい、困ったことを誰かに言うときに「相談する」といい… 漢語は特定の場面でしか使えない言葉が多いんですが、でもこれらの場面では全部「話す」を使うことができます。和語は漢語より意味領域が広いわけです。
 で、話を戻すと、中級からは漢語が増えます。そして漢語が増えるとそれに合わせて接辞も増えてきます。例えば「自由」と「不-自由」、「常識」と「非-常識」、「可能」と「可能-性」、「機械」と「機械-化」とか。だからこの選択肢は正しいです。

選択肢2

 漢字には呉音・漢音・唐音など様々な読み方がありますが、日本語を学ぶ際にそれをわざわざ識別する必要はありません。この選択肢は間違い。

選択肢3

 選択肢1でも述べましたが、「分ける」のような和語は意味が広くて、「分配する」「分割する」のような漢語は意味が狭い傾向があります。中級になると漢語が増えますが、漢語は意味が狭いので特定の場面でしか使えないことが多いです。そういう意味・用法の違いを学ぶ必要がでてくるからこの選択肢は正しいです。

選択肢4

 これも正しいです。「国際関係」の「国際」は名詞、「国際的」だとナ形容詞です。「影響する」は動詞だけど「影響を受ける」の「影響」は名詞です。こういう漢語動詞の品詞の違いが分からないと、それを原因として誤用が生まれたりします。この選択肢は適当。

 答えは2です。

 




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