平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題8解説
問1 中間言語
第一言語でもなく第二言語(学習言語)でもない、学習者が独自に作り上げた発達途上の言語体系を中間言語と言います。
1 中間言語は母語の影響を受けて構築されますが、構築された言語体系はその人にとって正用です。
2 ティーチャートークの説明です。教師が学生に話すときの特別な話し方のこと。
3 「学習者独自の言語体系」が中間言語の説明で、「動的なもの」が中間言語の可変性を指しています。
4 ただの錯乱肢。気にしないでください。
答えは3です。
問2 過剰般化
過剰般化とは、ある文法規則を本来適用できないところにも過剰に適用することによって起きる言語内エラーの一種です。
選択肢1
母語の文法を学習言語に適用してしまうのは言語転移です。この選択肢は間違い。
選択肢2
たぶんマス形基準にテ形を作るみたいなことをしているんだと思います。だとすれば…
一段動詞「起きます」「寝ます」などは語末の「ます」を「て」に換えれば「起きて」「寝て」のようにテ形にできます。これと同じく五段動詞の「書きます」の「ます」を「て」にして「書きて」としてしまったわけですね。これは一段動詞に適用できる文法規則を五段動詞にも適用してしまったために起こった過剰般化です。これが答え。
選択肢3
日本語は主語を省略できる言語ですが、例えば英語とかは主語を省略できない言語です。そういう母語のルールを日本語に適用しておきた誤用に見えるので、選択肢1と同じく言語転移です。
選択肢4
コミュニケーション・ストラテジーの「借用」です。
答えは2です。
問3 語用論的転移
語用論的転移とは、母語の語用論的知識を転移させることです。これは説明すると長くなってしまうので、詳しくはリンク先をご覧ください。ここでは簡単に説明します。
選択肢1
英語では「パーティを開く」を throw a party と言います。この throw は直訳すると「投げる」です。つまりこの学習者は英語の throw をそのまま訳して日本語で言ってるみたい。これは語彙の領域に関する転移で、語用論的転移ではありません。
選択肢2
「開いているうちに」と言ったほうがよさそう。転移じゃなさそうだし、単なる言語内エラーだと思われます。
選択肢3
分からない部分を英語に言い換えただけなので、コミュニケーション・ストラテジーの「借用」です。
選択肢4
勧誘するとき、日本語では「~しませんか?」や「~はどうですか?」などの言い方をするんですが、英語では Would you like to~(~したいですか) を用います。このような英語の語用論的知識を転移させて、日本語でも「~したいですか」と言ってます。これが答え。
答えは4です。
問4 言語内の誤りと言語間の誤り
言語内の誤りは第一言語とは関係なく、目標言語の習得段階で起きるエラーのことです。一方、言語間の誤りは第一言語に起因するエラーのことです。つまり母語からの負の転移によって生じるエラー。
選択肢1
正しいです。言語内の誤りは目標言語の学習不足から起きる、母語とは関係ない誤用を指します。
選択肢2
誤りです。言語間の誤りは母語と関係しています。
選択肢3
文法的な誤りでも語用論的誤りでも、それが目標言語の勉強不足が原因で起きたエラーなら言語内の誤りに含まれます。
選択肢4
文法的な誤りでも語用論的誤りでも、それが母語の影響で起きたエラーなら言語間の誤りに含まれます。
答えは1です。
問5 化石化
化石化とは、ある言語形式の習得がそれ以上進まないで誤用のまま残ってしまうことです。
1 臨界期仮説
2 自動化かな? (宣言的知識が非宣言的知識に移行すること)
3 これが答え
4 削減的バイリンガル
答えは3です。
問6 フォリナー・トーク
フォリナートークとは、母語話者が非母語話者に対してする話し方のことで、ゆっくり話したり、繰り返したり、簡単な語彙や文法を扱って分かりやすいように話すのが特徴的です。
選択肢1
「目標言語の母語話者が非母語話者に使う」はフォリナートークのことです。
「簡略化された言語」もフォリナートークの特徴です。
選択肢2
「目標言語の母語話者が非母語話者に使う」はフォリナートークのことです。
「規範的な言語」はフォリナートークの特徴ではありません。フォリナートークは母語話者同士が話す話し方とは違うものなので、規範的な話し方ではない。
選択肢3
「非母語話者が目標言語の母語話者に使う」はフォリナートークじゃないです。
フォリナートークは母語話者が話すものなので誤用は含まれません。
選択肢4
「非母語話者が目標減の母語話者に使う」はフォリナートークじゃないです。
「誤用を含まない言語」はフォリナートークの特徴。なぜなら母語話者が話すものに通常誤用はないからです。
答えは1です。
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