6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説

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平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説

問1 文章理解における予測

選択肢1

 文化が違うと、予測内容も変わったりします。

選択肢2

 正しいです。意識的にする予測もありますが、多くの場合は知らず知らずのうちに無意識に予測してます。

選択肢3

 予測は先行文脈から得られる解釈(情報の範囲)を広げ、内容の理解を促進します。

選択肢4

 文が正しいかどうか確認できなくても、とりあえずはその時点の理解で文章を理解していきます。
 予測した内容と違って文章理解がうまくいかない場合はやり直しになりますが、正しいことが確認されて初めて文章理解に貢献するわけではありません。

 したがって答えは2です。

問2 文章理解に関わるスキーマ

 読解に活用されるスキーマは、形式スキーマと内容スキーマに分けられます。この2つを用いて読み進めていきます。

形式スキーマ テキストの文章構造、言語形式に関する知識のこと。論文、説明文、小説、新聞、詩などにおける文章構造、展開の違いについての知識や、文字、つづり、語彙などの形式に関する知識。
内容スキーマ 読み手自身の経験や知識から構成された、社会的・文化的に関する背景知識のこと。お店、病院、経済、歴史などなど…

 したがって答えは1です。

問3 橋渡し推論

 文章中に明示されていない情報を予想することを推論といいます。推論は2つに分けられます。

橋渡し推論 直接表現されていないことを、文脈や既有知識によって理解すること。例えば、「向こうで一輪車を練習してた子供が大きい声で泣いていた。私は近づいて、『大丈夫?』と声をかけた。」では、「子供は一輪車から落ちて怪我をした」という推測がこれ。橋渡し推論は読解中に常に行われており、正しく推論できなければ理解に大きな支障が生じる。
精緻化推論 文章から読み取った事柄をもとに具体的なイメージを膨らませること。主人公の顔、髪型、表情、性格、様子を想像したりするのがこれにあたるが、実際想像したイメージは人によって異なる。橋渡し推論とは異なり、精緻化推論はできなくても理解には影響しない。

 1 先行文脈と今読んでいる部分が自然につながるように推論し、文全体の整合性を高める作業は橋渡し推論です。
 2 先行文脈で明示されなかった情報を推測して、後続文脈と意味的につなげるのは橋渡し推論です。
 3 具体的なイメージをするのは精緻化推論です。
 4 上記の例だと、「一輪車を練習していた」と「子どもが泣いていた」の間に省略された部分があって、それを推測するのが橋渡し推論です。

 したがって答えは3です。

問4 心的表象

 読み手がテキストを読んで記憶に残ったもの心的表象(mental representation)といいます。テキストを理解するときの心的表象には、「表層的記憶(surface memory)」、「命題的テキストベース(prepositional text base)」、「状況モデル(Situational Model)」の3つのレベルがあり、これら全てが一貫性のある心的表象を形成することによって、テキスト理解がなされます。

表層的記憶/表層形式
(surface memory)
テキストに提示されたそのままの単語やその語順の記憶のことです。最も記憶に残りにくいのはこのレベルの記憶です。語や文の意味が理解できなくても記憶できます。
命題的テキストベース
(prepositional text base)
テキストの意味そのものの記憶のことです。テキストの命題がネットワークを形成することによって得られる文の意味が記憶されていると考えられています。語や文の意味が理解できなければ、このレベルの表象は形成できません。
状況モデル
(Situational Model)
テキストに記述された情報に読み手のスキーマから関連する情報を付け加え、精緻化されたイメージなどの記憶のことです。このレベルの記憶は最も記憶に残りやすいです。

 1 表層形式
 2 命題的テキストベース
 3 命題的テキストベース
 4 状況モデル

 したがって答えは1です。




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