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誤用とは?

誤用

 誤用とは、「無知や不注意などから、言葉などの使い方を誤ること。また、その誤った使い方」(『新明解国語辞典第七版』2012)のことです。第二言語習得では言語の習得過程で学習者によって産出される誤った表現を指します。誤用に対して、誤りのない表現のことを正用と言います。誤用はピット・コーダー(Pit.Corder 1967)によってエラー(error)とミステイク(mistake)に分類されました。ミステイクはその場限りの誤用、エラーは一貫して繰り返し起こる誤用を指します。エラーは、エラーが生じる原因から言語間の誤り言語内の誤りに分類されます。第一言語が原因となって生じるのが言語間の誤り、第一言語に関係なく、目標言語の学習過程で生じるのが言語内の誤りです。また、エラーは、コミュニケーションに支障をきたすかどうかでグローバルエラーローカルエラーに分けられます。

 (1) 私たちは狭い部屋で一緒に住んでいます。
 (2) クラスのと仲が良いです。
 (3) 私には役不足です。

 誤った表現を誤用と呼ぶわけですが、それが誤っているかどうかの判断は人によります。例えば(1)は不要な「の」が付与されている、日本語母語話者から見れば明らかな誤用です。しかし(2)(3)はどうでしょう。人によっては「女の子」「女の人」などと表現するほうがより自然に感じ、また「女」と表現したことで尊大な感じを受ける場合がありますが、文法的には正しいものです。(3)は、与えられた役目が重すぎるという意味で用いていることを誤用とする人もいますが、現代ではそのような意味で用いられることも多くなり、人によっては正用と感じられるでしょう。このように正用か誤用かの分類はときに困難です。

参考文献

 大関浩美(2010)『日本語を教えるための第二言語習得論入門』1-9頁.くろしお出版
 迫田久美子(2002)『日本語教育に生かす第二言語習得研究』23-27頁.アルク
 森山卓郎,渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』74頁.三省堂




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