死喩(dead metaphor)
隠喩(メタファー)は異なる2つの概念領域があって成り立ちますが、喩えるもの(起点領域)の選択が1つしかなく、他の概念を喩えるものとして据えられない場合、そのような隠喩表現はすぐ固定化して使われるようになり、次第に比喩らしさがあまり感じられなくなっていきます。
(1) テーブルの脚
(2) パソコンのマウス
(3) 餃子の羽根
(4) 首振り扇風機
(5) 台風の目
これらはあまりの自然さで人々に深く根付き、それ以外の表現が思い浮かばないほどになっています。しかしながら元を辿れば隠喩的写像による表現なので隠喩(メタファー)であることは間違いありません。このように、代わりとなる表現を作るのが困難で比喩らしさが感じられなくなるほど日常的に用いられるようになった隠喩表現を死喩(dead metaphor)と言います。死喩は一般にそれが隠喩だと意識されずに使われるので、隠喩的写像に気づくことは珍しいです。谷口(2006: 53)は「死んだ比喩(dead metaphor)」、吉村(2004: 112)は「慣習的メタファー(dead metaphor)」、大堀(2013: 83)は慣習的メタファー(conventional metaphor)と呼んでいます。
参考文献
リンク
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荒川洋平(2013)『デジタル・メタファー – ことばはコンピューターとどのように向きあってきたか』62,64頁.東京外国語大学出版会
大堀壽夫(2002)『認知言語学』83頁.東京大学出版会
谷口一美(2006)『学びのエクササイズ 認知言語学』52-54頁.ひつじ書房
吉村公宏(2004)『はじめての認知言語学』112頁.研究社
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