令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題2(3)解説

令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題2(3)解説

(3)古い人

 この問題は語彙に関する負の転移を聞いてる問題。
 例えば、中国語では「生死観」というのが正しいんですけど、これをそのまま日本語にもってきて「せいしかん」と言ってしまうと間違いになってしまいます。日本語では「死生観」というほうが良いですね。こういうように母語の語彙に関する知識を持ってくることを転移といい、それがマイナスの影響(誤用)になったのを負の転移と言います。

 問題の「古い人」は「高齢の人」などと言うべき。英語では高齢者を old person と呼ぶので、英語から来た転移です。

選択肢1

 「多い」はちょっと特別なイ形容詞。
 イ形容詞は普通そのままの形で名詞に接続することができます。「明るい部屋」「面白い本」「おいしい水」などなど… しかし「多い」は「多い人」「多い費用」というふうに直接名詞に接続できません。「多くの人」「多くの費用」と「多くの~」の形をとるんです。(ちなみに「最も台風の多い日」みたいに名詞修飾節だったら「多くの~」の形にならないで接続できます)

 この学習者は「多い」が名詞を修飾するときに例外の形をとることを知らなかったみたい。そういう種類の誤りです。

選択肢2

 これも負の転移。
 「重い雨」は英語 heavy rain からの転移です。
 ちなみに中国語は「大きい雨」と言います。

選択肢3

 これも英語から負の転移。
 「忙しい通り」は英語 busy street からの転移です。

選択肢4

 「寒い飲み物」は英語 cold drink からの転移。
 日本語では「冷たい」も「寒い」も触覚なんですが、触ってみたときなどの部分的な触覚には「冷たい」を、肌全体を覆うような触覚には「寒い」を使って区別します。

 これは面白い問題でした。
 答えは1です。




コメント

コメント一覧 (6件)

    • >匿名さん
      ありがとうございます! 英語からの転移だったんですね。知りませんでした。
      解説を更新いたしました。ご協力助かります!

  • 答えは1でも、2〜4は名詞と形容詞が共起していない。一方1は共起はしているが活用が違うとの説明も可能なようです。英語からの転移の説明の方が好きですが、日本語の範囲で考えれば、こう言う説明もありなのかと思いますがどうでしょうか?

    • >駄目教師さん
      共起、もしくはコロケーションという考え方でも大丈夫です。
      日本語では「雨」に対して「強い」が共起しますが、この共起関係を無視しているために選択肢2のような言い方をしています。ただし、この共起関係を無視した根源的な理由は転移です。したがって転移の面から見たほうがより誤用を正確に見られると思います。

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