6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

カテゴリー化とは?

カテゴリー化(categorization)

 私たちはいろんな概念を分類して名前をつけてきました。同じ「本」と呼ばれるものであってもそのサイズによって文庫本、新書、単行本などと分けられ、「性」といっても男性、女性、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなどと色んな分類がなされています。このように、さまざまな概念を必要に応じて何らかの観点からグループにまとめることカテゴリー化(categorization)と呼び、カテゴリー化によってグループになった1つ1つのまとまりをものをカテゴリー(category)と言います。カテゴリー化によって形成されたカテゴリーに命名することによって私たちは様々な情報を効率的に処理することができるようになっています。

 カテゴリー化は概念の「隣接性や、行為・出来事の継起的連続性に動機づけられて」(吉村 2004: 25)生じます。ほうれん草、ニンジン、ピーマンなどが同じ「野菜」としてカテゴリー化されているのはそれらが隣接しているからです。「片付けまでが料理」という言い方がありますが、これは調理して、皿を洗うという時間順序に伴う2つの動作を「料理」としてカテゴリー化したものと言えます。

野菜

ほうれん草、ニンジン、ピーマン、玉ねぎ、ニラ…

泳ぎ方

クロール、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライ、犬かき…

料理

調理する、皿を洗う

 カテゴリーは階層構造を持ち、大きく三つの階層に分けられます。上位概念を含むカテゴリーは上位レベル・カテゴリー(superordinate level category)、その下のレベルとして基本レベル・カテゴリー(basic level category)、さらにその下のレベルとして下位レベル・カテゴリー(subordinate level category)と呼びます。例えば、「動物」という概念は上位レベル・カテゴリーで、その下に「猫」「犬」「牛」などの基本レベル・カテゴリーがあり、さらに「猫」カテゴリーの下には「雑種」「マンチカン」「ラグドール」などの下位レベル・カテゴリーがあります。

 基本レベル・カテゴリーは日常生活で最も馴染み深いメンバー(member:成員)が含まれ、子どもの頃に覚えるような基本的な名前がつけられています。外国語学習においてもまず基本レベル・カテゴリーが先に習得され、次に下位レベル・カテゴリー、最後に上位レベル・カテゴリーが習得されます。

参考文献

 大堀壽夫(2002)『認知言語学』29-72頁.東京大学出版会
 児玉一宏・谷口一美・深田智(2020)『はじめて学ぶ認知言語学:ことばの世界をイメージする14章』61-76頁.ミネルヴァ書房
 谷口一美(2006)『学びのエクササイズ 認知言語学』17-23頁.ひつじ書房
 籾山洋介(2010)『認知言語学入門』18-26頁.研究社
 吉村公宏(2004)『はじめての認知言語学』23-29頁.研究社




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