6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

自然習得と教室習得について

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自然習得と教室習得

自然習得と教室環境

 日常生活や社会的な活動(学業や仕事など)の中で自然なコミュニケーションを行いながら第二言語を学んでいくことを自然習得(naturalistic acquisition)、第二言語を学ぶ教室に通ったり教科書を用いたりして第二言語を学んでいくことを教室習得(classroom acquisition)と言います。第二言語習得研究では、この両者の環境を比較して第二言語習得に与える影響を明らかにする研究が行われてきました。しかし、実際は全ての学習者が必ずどちらかの環境で第二言語を学び通すわけではありません。日本語学校に留学してきた学習者は、日中は日本語学校で教室習得環境にひたって日本語を学びますが、一方で夕方には遊びにいったりアルバイトをしたりなどして自然習得も起こります。

 次のは自然習得環境と教室習得環境の簡易的な比較です。

自然習得環境
(naturalistic acquisition)
教室習得環境
(classroom acquisition)
訂正 学習者の誤用に対する訂正は教室習得環境より少ない。 学習者の誤用に対する訂正は自然習得環境より圧倒的に多い。
言語形式と意味 文法的に適格かどうかよりも意味が通じるかどうかを重視する。 文法的に適格かどうかをより重視する。
インプットの難易 場面によって異なる言語形式にさらされ、難易に関係なくインプットを受ける。 教師によって調整されているので、易しいものから難しいものに移っていく。
インプットの量 母語話者が周囲にたくさんいるため、インプット量は多い。 母語話者は教師に限られる傾向があるため、インプット量は少ない。
インプットの質 学習者に分かるように調整されたインプット形式に触れることもあれば、触れられないこともある。 学習者は教師によって分かるように調整されたインプットを受ける。
場面 スーパー、郵便局、アルバイト、ネット、ビジネス、友達など様々な場面を経験する。 教室の中のみ。ロールプレイなどで現実的な場面を作り出したとしても疑似的で、自然習得環境に及ばない。

参考文献

 大関浩美(2010)『日本語を教えるための第二言語習得論入門』77-78頁.くろしお出版
 小柳かおる(2004)『日本語教師のための新しい言語習得概論』95-97頁.スリーエーネットワーク




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