兼類語(兼类词)
中国語において、二つあるいは二つ以上の品詞の文法的性質を具えている同音同形の語を兼類語(兼类词 jiānlèicí)と言います。例えば「绿 lǜ」は「緑」という意味の名詞にもなりますが、近年はネットを中心に「浮気する」「不倫する」といった意味の動詞としても用いられるようになり、名詞と動詞の兼類となっています。
中国語の兼類語でよく見られるのは名詞と動詞の兼類、名詞と形容詞の兼類、形容詞と動詞の兼類です。
(1)a 绿色是自然界中常见的颜色。(緑は自然界によく見られる色だ。) <名詞>
b 他被绿了。 (彼は浮気された。) <動詞>
(2)a 自然科学 (自然科学) <名詞>
b 他的这种方法很科学。 (彼の方法はとても科学的だ。) <形容詞>
(3)a 说得很明白了。 (言ってることがはっきりしてる) <形容詞>
b 我一直不明白这个问题。 (私はずっとこの問題が分からない) <動詞>
例(1a)の「绿」は直接「色」を修飾していることから名詞であり、(1b)の「绿」は助詞「了」が後置されていることから動詞であることが分かります。(2b)(3a)のように副詞「很」で修飾できる語は形容詞とみなされます。(3b)のように他動詞の目的語(賓語)「这个问题」をとっている「明白」は動詞です。
(4)a 他在天津。 (彼は天津にいる) <動詞>
b 他在天津工作。 (彼は天津で働く) <介詞>
(5)a 很难。 (難しい) <形容詞>
b 难理解。 (理解しにくい) <副詞>
このように、中国語ではある一つの語が二つ以上の品詞の文法的性質を具えているものが少なくありませんが、兼類語は特定の文脈において同時に二つ以上の品詞の文法的性質を具えているというわけでもありません。例えば、「緑」は名詞と動詞の兼類ですが、(1a)の「緑」は上述の通り名詞であり、その後ろに「了」などの助詞が来ることができないために動詞の文法的性質は認められず、動詞ではないとみなされます。兼類する品詞は統語関係においていずれかが発現するものです。
参考文献
輿水優(1985)『中国語の語法の話-中国語文法概論-』68-79頁.光生館
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