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ヤコブソンの言語の6機能について

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ヤコブソンの言語の6機能

 ヤコブソン(R.Jakobson)は言語の機能を明らかにするため、まずは言語事象や言語伝達を構成する要素として<送り手><受け手><メッセージ><コンテクスト><接触><コード>の6つあることを指摘しました。

言語伝達の構成要素

 言語伝達には必ず<送り手>(addresser)と<受け手>(addressee)が存在し、送り手は受け手に対して<メッセージ>(message)を送ります。そのメッセージが有効であるためには、第一としてメッセージが言語化される<コンテクスト>(context)が必要。第二に、送り手と受け手で完全に、あるいは部分的に共通した<コード>(code)も必要です。送り手が英語でメッセージを送っても、受け手が英語を理解できなければメッセージは伝わりません。最後に<接触>(contact)、つまり言語伝達の開始や持続を実現する送り手と受け手の物理的・心理的繋がりです。言語伝達を構成するこれらの要素は次のように図式化されています。

送り手 コンテクスト 受け手
メッセージ
―――――――――――――――――
接触
コード

 そしてヤコブソンは、これら6つの要素一つひとつが言語コミュニケーションにおいてそれぞれ異なる言語機能を持っていると考えました。

referential function(指示的機能)

 メッセージに関して説明する<コンテクスト>の機能。
 指示詞で「それ」などというとき、指示詞の指示対象が何であるか理解するためには<コンテクスト>の支えが必要です。

emotive function(主情的機能)

 メッセージが言及する対象に対する<送り手>の態度を表出する機能。
 <送り手>は今話されていることに対する情動を表出する傾向があります。その際たるものとして「えっ」「やった」などの間投詞が挙げられています。心情的機能、情動的機能とも呼ばれます。

conative function(動能的機能)

 メッセージによって<受け手>に働きかける機能。
 典型的な例として呼びかけや命令を挙げています。「飲め」というメッセージを受けた受け手は、そのメッセージによって働きかけを受けます。

phatic function(交話的機能)

 主として言語伝達を開始、延長、終了させたり、あるいは伝達の回路が通じているかどうかを確認したり、聞き手の注意を惹いたり、話し手が聞き手の話に注意していることを示す<接触>の機能。
 伝達の回路が通じているか確認する例としては「もしもし」などがあり、相手に注意を惹くには「聞いてますか」や咳払いなどがあります。

poetic function(詩的機能)

 <メッセージ>そのものがもつ、<メッセージ>の意味内容を表す機能。
 詩的(poetic)とありますが、その範囲は詩歌に限りません。あらゆる言語的なメッセージは何らかの意味内容を持ち、<メッセージ>はそれに対して焦点を合わせる機能があります。

metalingual function(メタ言語的機能)

 送り手と話し手が同じコードを使っているかどうか確認する<コード>の機能。
 受け手が「どういう意味ですか?」と聞いたり、送り手が「意味が分かりますか?」と聞いたりするのが挙げられます。

まとめ

 6つの要因とそれに対応する機能を図式化すると次のようになります。

送り手
(主情的機能)
コンテクスト
(指示的機能)
受け手
(動能的機能)
メッセージ
(詩的機能)
―――――――――――――――――
接触
(交話的機能)
コード
(メタ言語的機能)

参考文献

 R.ヤコブソン(著)・池上嘉彦(訳)・山中桂一(訳)(1984)『言語とメタ言語』p101-116.勁草書房
 ロマーン.ヤコブソン(著)・川本茂雄(訳)・田村すゞ子(訳)・村崎恭子(訳)・長嶋善郎(訳)・中野直子(訳)(1973)『一般言語学』p187-194.みすず書房




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