6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説

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平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説

問1 前作業

 <資料>を見ると、   ア   は前作業に含まれています。前作業は本作業を行う前の準備段階を指します。本作業で行うタスクに関連する話題を提示したり、学習項目を導入したり。

選択肢1

 この授業は聴解の授業なので、スクリプトを読ませて正確に覚えさせるのは不適当です。また、この授業はトップダウン処理の授業だから推測させて理解を進めていくような演繹的な授業じゃないといけません。ただ正確に覚えさせるのはトップダウンじゃないからダメ。突っ込みどころ満載。

選択肢2

 文型の意味や形式に焦点を当てているのでボトムアップの活動をしています。
 この選択肢は間違い。

選択肢3

 聴解授業でスクリプト読ませてキーワードを探させるのは謎。聴解の授業じゃなくなってます。

選択肢4

 背景知識を活性化させるための活動で、「予測」というのがトップダウン処理の特徴。前作業にやることとして適当です。

 よって答えは4です。

問2 語の確認

選択肢1

 トップダウン処理は単語単語から大まかに意味を推測するために行うので、先に未習のキーワードを説明しておくのは重要なことです。それによってそのキーワードを聞いても意味が分かるようになります。この選択肢が答え。

選択肢2

 細部を正確に聞き取れるようにするのはボトムアップ処理の特徴です。この選択肢は間違い。

選択肢3

 トップダウン処理では大意を理解することに重きを置くので、全ての語を聞いたりしません。全ての語を聞き取るようにするのはボトムアップ。この選択肢は間違いです。

選択肢4

 導入する語の類義語を調べさせる必要はなく、導入する語だけで十分です。また、類義語を調べさせたからといって関連する語を聞き取れるようになるかどうかは疑問。この選択肢は間違い。

 したがって答えは1です。

問3 聴解素材

選択肢1

 その通りです。基本は聞き取れるようにゆっくりめだけど、一部速いスピードのところも容易して少し難しいくらいにしておくのがいいです。これは適当。

選択肢2

 初級レベルでも自然な表現を用いるべきですが、習っていない複文は避けたほうがいいです。単文中心で、さらに短いものがいいのでこの選択肢は不適当。

選択肢3

 その通り。文句のつけようがない。

選択肢4

 これもいいですね。現実場面に近い環境を再現してます。

 不適当なのは2。答えは2です。

問4 再話

 再話とは、読解や聴解後に自分が理解したことを自分の言葉で話すことです。話すことが目的なのではなく、話すことによって記憶に定着させることが目的です。この点注意してください!

 選択肢3には「定着」というキーワードがあります。
 したがって答えは3です。

問5 非営利の教育機関が授業で著作権者の承諾なしに利用できる聴解素材・教材

選択肢1

 「自宅で復習できるように」がダメ。復習はいわゆる「授業」にあたらないので、授業以外のところに複製物が及ぶとダメです。これは不適当。

選択肢2

 学習者に向けて共有するのはダメです。学習者が購入する代わりにコピーしたものを配るのは著作権者の利益を不当に害するのでダメ。授業中に必要最小限の部分を使用するのは問題ありませんが、SNSで共有してしまったらそれは「購入等に代えて」複製していることになってしまいます。

選択肢3

 「著作権Q&A|一般社団法人 日本著作権教育研究会」のQ2-1には、「参考書、問題集、ドリル、ワークブック、資料集、テストペーパー、白地図、教材として使われる楽譜」は複製して配るとダメと書かれています。この選択肢にあるワークシートはドリルやワークブックに該当するもので、購入等に代えてコピーするのは著作権者の利益を損なわせます。

選択肢4

 ニュースのスクリプトの利用は必要最小限なので大丈夫。

 答えは4です。




コメント

コメント一覧 (4件)

  • 問5-選択肢3は、なぜ④に該当するのでしょうか。
    ワークシート「すべて」をコピーすると書いてあれば、理解できるのですが、
    この文章からは必要な分だけかどうか判断つかないと思います。
    同様に選択肢4もスクリプトが必要な分だけかどうか判断つかないと思います。

    それでも正解が4になる理由があるなら、ご説明頂けたら幸いです。

    • >Norikoさん
      コメントありがとうございます。
      改めてガイドラインと照らし合わせてみましたが、pdfには選択肢4が問題ないという直接的な記述はありませんでした。
      しかし他の選択肢が否定されていますので、答えは4ということになっています。解説は以前よりも詳しく修正いたします。
      ガイドラインをご覧いただき、ご自身でもご確認ください。

  • 用語の検索をしていたら、こちらにたどりつきました。
    問5の3におけるSNSは、複製権に加えて、公衆送信権にも引っかかる可能性があるかと思います。
    また、4が正解になる理由としては、選択肢の文章をどのように解釈するかに依存するのではないかという印象です。
    具体的には、「教師がスクリプトをコピーする」という部分で、
    (1)ニュース動画の提供者が用意したスクリプト全文をコピーしてそのまま配布
     →複製権の侵害になり得る
    (2)ニュース動画から教師自身が書き起こす場合、
     (2-1)全文の書き起こしと配布
     →複製権侵害(=手書きでも著作権法上は「コピー」にあたる)になり得る
     (2-2)一部だけを書き起こし、出典を明記した上で配布する
     →引用にあたる要件をすべて充足するかぎりにおいて、「引用」とみなすことができる
    となり、
    1~3は正解になり得る解釈がないのに対し、4には正解になり得る解釈があり得るため、消去法で4が正解なのではないかなと推測しました。

  • >じゅりさん
    ご指摘ありがとうございます。なるほど公衆送信権ですか。知りませんでした。
    コメントを一部拝借して解説を修正しておきます!

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