平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説
問1 パターン・プラクティス
パターン・プラクティスといえばオーディオリンガル・メソッド。流暢かつ正確な口頭能力を養成するために、パターン・プラクティスという練習をたくさん行います。
答えは3です。
問2 モデル会話
モデル会話は、その授業で学ぶ文型や語彙が含まれている会話例のことです。だいたいどんな課でも何人か登場人物が出てきて何か話してたりするんですけどそれがモデル会話。レベルに合わせて簡略化されたりするんですが、簡略化されてもできるだけ自然になるように作られています。
選択肢1
モデル会話は文型や語彙の学習項目が含まれていることは最低条件です。それを組み込みつつモデル会話を考えるんですが、新しく導入する学習項目以外は既習のものだけを使うというのもまた一つのルールです。使える表現には制約があるのでどうしても不自然になってしまうことはありますが、不自然になってもいいということはありません。展開はもちろん自然なほうが良いです。
この選択肢は間違い。
選択肢2
モデル会話はその課で学ぶ表現形式を簡略化して含むように作ります。
例えば「~てしまう」を導入する課のモデル会話では「壊してしまいました」などのよく使われる形で表現が現れたほうがいいです。でも「壊してしまわないように気をつけてください」みたいに、「~てしまう」に「~ないように」などをつけたりして複雑にしてしまうと「~てしまう」に対して思うように焦点を当てられなくて学習者に注意させることができなくなってしまいます。これではよくない。
複雑になってもいいということはありません。この選択肢は間違いです。
選択肢3
ユニークではなく、より一般的な場面でモデル会話を設定すべきです。
初めて恋人と行った水族館でイルカショーを見た、みたいなユニークな場面は限定的すぎ。もっと学習者が遭遇しやすい場面でモデル会話を作ったほうがいいと思います。この選択肢は間違い。
選択肢4
正しいです。できるだけ簡略化して、できるだけ自然なほうがいい。
したがって答えは4です。
問3 シラバス
シラバスは学習項目を一覧にしたもののことです。この問題では「家族について話す」「趣味について話す」「教育について話す」をシラバスの内容にしたみたい。このシラバスは話す話題に焦点を当てて作っているように感じます。今日のテーマは「家族」、今日のテーマは「趣味」みたいに、話題を中心としてそれに関係する文型や語彙を導入していく感じです。話題に焦点を当てて作られたシラバスは話題シラバス(トピックシラバス)と呼ばれます。
選択肢1
談話技能シラバスとは、談話、つまり「話す」ということに焦点を当てた技能シラバスのことです。間違えるならこれ。
確かに全て「話す」という活動をしているんですが、「話す」に焦点を当てているというよりは話す内容「家族」「趣味」「教育」などに焦点を当てています。技能シラバスではなく、やっぱり話題シラバスです。この選択肢は間違い。
選択肢2
場面シラバスは買い物、レストラン、タクシーなどの具体的な場面に焦点を当てたシラバスです。
「家族」「趣味」「教育」などは場面じゃないのでこの選択肢は間違い。
選択肢3
これが答えです!
選択肢4
機能シラバスは依頼する、慰めるなどの言語の機能に焦点を当てます。
「家族」「趣味」「教育」は機能じゃないので間違い。
答えは3です。
問4 フィラー
フィラーは簡単にいうと、「あのう」「そのう」「えっと」などの言い淀み、言葉を探しているときに発せられる言葉のことです。
よく出題されてる。
1 これは相槌
2 フィラー(言い淀んでます)
3 感動詞
4 相槌
答えは2です。
問5 OPI (Oral Proficiency Interview)
OPI (Oral Proficiency Interview)とは、ACTFLが開発した外国語の口頭表現能力を測定するための試験です。タスクと機能、場面/話題、正確さ、テキストの型の4つの基準からレベルを判定します。受験者のレベルの下限と上限を見極めるために難易度を調整しながら行われるのが特徴で、30分間の試験ではインタビューやロールプレイなどを行います。
選択肢1
N5からN1の5段階は日本語能力試験(JLPT)のこと。これは間違い。
選択肢2
難易度調整! これがOPIです。
難易度を調整しながら受験者がどのレベルなのかを把握していく形をとります。
選択肢3
自己評価を加味するテストなんて存在するんですか… ありえなくないですか? 客観的にやらないと。
選択肢4
OPIはインタビューもあるので間違えるならこの選択肢。でもOPIのインタビューは口頭表現能力を測るためのものです。言語知識を測定するために行うんじゃありません。
答えは2です。
コメント
コメント一覧 (3件)
先生
いつも、先生のブログを参考に勉強させて頂いております。
問3について質問させてください。
回答は「あるトピックについて話す」ことであるため、話題シラバスとなっております。
しかし、令和元年Ⅰの問題5 問1は書くことに特化していたので、技能シラバスという回答でした。
https://nihongonosensei.net/?p=17967
したがって、本問も話すという技能に特化しているので、答えは技能シラバスと考えてしまいました。
令和元年度の問題との違いや、考え方をご教授頂けないでしょうか。
お手数お掛け致しますが、どうぞ宜しくお願い致します
>あきさん
コメントありがとうございます! 質問はこうで間違いないですか?
令和Ⅰ 問題4 問1 選択肢1は「書く」が共通しているので、「書く」に焦点を当てた技能シラバス。
29年度 問題4 問3も「話す」が共通しているので、「話す」に焦点を当てた技能シラバスじゃないかってことですよね。鋭いご指摘です。
ここでは「家族について話す」「趣味について話す」などで、学生が興味ありそうな話題を提示して皆で話しませんか? みたいな授業を作りたいんだなーと思い、話題を提示してるので話題シラバス。私はこんな感じで考えました。
「話す」に焦点を当てた技能シラバスは発音、アクセント、イントネーション、流暢さなどのことを指していると思っています(私は)。こう考えると話題シラバスと「話す」の技能シラバスが区別できるんです。間違っていましたらごめんなさい。
先生
早々にご回答頂き有り難うございました。
確かに、回答が技能シラバスになるのであれば、
問いの内容がかわるのでしょうね。
よく理解できました。
問われていることを、よく考えるようにします。
日本語教育能力検定試験は問いをよ~く考えないと
間違えそうですね(>_<)
ご教授頂き、誠に有り難うございました
あき