平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説
(16)日本語の音素数と理解語彙
現代日本語の音素は「母音音素が5個、子音音素が14個、半母音音素が2個、特殊音素が2個、計23個の音素がある」(天沼ら 1978: 77)ようです。各音素の異音については本書をご覧ください。
母音音素 | /a/, /i/, /u/, /e/, /o/ |
---|---|
子音音素 | /p/, /b/, /t/, /d/, /c/, /k/, /g/, /m/, /n/, /ŋ/, /r/, /h/, /s/, /z/ |
半母音音素 | /y/, /w/ |
特殊音素 | /N/, /Q/ |
音素の認定は研究者によって多少異なって幅があると思いますが、ここでは23個という答えが得られました。したがって ア に入るのは 20~30 です。選択肢1と3に絞られます。
それから、理解語彙とは、その人が読んだり聞いたりして理解できる語のことです。真田(1977: 127)には義務教育終了時点の15歳には 40,462語の理解語彙を持っているとあります。 イ には 40,000 はないんですけど、3,000 はありえないので近似値の 30,000 が答えです。
答えは1です。
《参考文献》
天沼寧・大坪一夫・水谷修(1978)『日本語音声学』77頁.くろしお出版
真田信治(1977)「基本語彙・基礎語彙」『岩波講座日本語9 語彙と意味』127頁.岩波書店
(17)言語の二重分節性
人類の有する自然言語は、意味を持つ最小の言語形式「形態素」と意味のない言語の最小単位「音素」があります。文を分解すると意味を持つ最小の単位である形態素が抽出でき、さらに形態素を分解すると意味を持たない音素が抽出できます。これを言語の二重分節性と呼びます。(文から形態素を抽出する過程を「第一次文節」、形態素から音素を抽出する過程を「第二次文節」と言います)
つまり、有限の音素の組み合わせから無限ともいえる形態素を作り出すことができ、その形態素を組み合わせて無限にある現象を文として表すことができる。これが言語の二重分節性の特徴です。
したがって答えは1です。
(18)言語の超越性
言語の超越性とは、言語が持つ、物理的に存在していないものや、目の前にない過去や未来のものについて話題にすることができる性質のことです。これによって過去を振り返ったり、将来の夢などについて語ることが可能になってます。
したがって答えは4です。
(19)言語の生産性
1 言語の普遍性
全ての自然言語には3つの共通した特徴があると言われています。それは①主語、動詞、目的語という成分があること、②文法を持っていること、③音声を媒介とすること。これが普遍性です。
2 言語の恣意性
言語の文字や音声(シニフィアン)が、それが指し示す意味内容(シニフィエ)との間に必然的な繋がりがないことです。例えば、赤くて丸い果物を「りんご」と書いたり、[riŋŋo]と呼んでいるのは、昔からそのように呼んでいるからに過ぎません。日本語では[riŋŋo]と発音するんですが、別の言語では別の呼び方をされてるのは恣意性があるためと考えます。
3 言語の生産性/言語の創造性
言語が持つ、初めて見る物体や物事を言語化することができ、新しい言語表現を際限なくいくらでも作れる性質のことです。
4 言語の文化的伝承性
言語はその共同体で使用されている言語の話し手を通じて生後学習し習得され、次の世代へと文化的に伝承されていく言語の性質のことです。
したがって答えは3です。
(20)言語の優劣
選択肢1
日本語や英語などの多くの言語は音声言語であり、同時に文字言語でもありますが、地域方言などには文字で音声を表す術を持たない言語も見られます。音声言語と文字言語が発達しているものもあれば、音声言語だけ発達しているものもあります。また、手話は音声も文字もない言語なので、やっぱりこの選択肢は間違い。
選択肢2
ピジンのほうが文法規則が単純で、クレオールは複雑。この選択肢は間違いです。
選択肢3
その通り。どんな言語でも等しく複雑な内容を表せます。
選択肢4
言語の文字数が等しいということはありえません。ありえないありえない。
音節文字を持つ日本語は、清音、濁音、半濁音、拗音、特殊拍をあわせて100以上あります。一方、音素文字を持つ英語のアルファベットは26文字(大小区別すればその2倍)。
答えは3です。
コメント
コメント一覧 (2件)
こんにちは。特殊モーラの表示がn,q ,hと書かれています。hではなくrではないでしょうか?また、ヒューマンの市販のテキストには大文字で書いてありますが、小文字表示で良いのでしょうか?いつもありがとうございます。
>匿名さん
間違えていました!
おっしゃる通り、特殊拍は/N/, /Q/, /R/です。これは必ず大文字で書きます。