平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説

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平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説

問1 共同発話

 <会話例>ではXが「気候の変化が激しくて‥‥。」と文を途中で終わる言い方をしていますが、その後Yがその後のことばを補完するのように「体がついていかないですよね。」と続けています。まるで2人で一文を完成させたかのような話し方。これは「共同発話」と呼ばれる現象です。

 答えは3

問2 高コンテクスト文化

 XとYには「共話」が見られます。話が完全に終わる前に相手の話を引き取って、引き取った人がその話の続きをし、複数人で一つの話を完結させるような話し方です。「最近、気候の変化が激しくて、体がついていかないですよね」はもともと1人で話す内容だったんですが、Yさんは相手の言いたいことが分かるので話を引き継ぎました。

 共話を可能にするためには、相手の言いたいことが分かっている必要があります。天気の話題を扱っているのがそれを実現させていると言っても良さそう。なぜなら日本語は会話のはじめに天気の話をするという慣習があるからです。こういう何気ない会話をスモールトークと呼んでいます。この日本語のスモールトークの存在によって相手の言いたいことが分かり、共話が起こっていると…

 これは高コンテクスト文化に関係ありそうですね。
 したがって答えは1です。

問3 聞き手行動

選択肢1

 相手の発話が曖昧で理解できないときに、曖昧な部分を明確にするよう要求することを明確化要求と言います。この行動は聞き手の行動。

選択肢2

 聞き手が相手の話を遮って中断させるような発話を割り込みと言います。これは常に聞き手が行う行動。

選択肢3

 話のターンを保持し続ける行動は話し手の行動だからこの選択肢が答え。

選択肢4

 話し手の発話に聞き手の発話がかぶることをオーバーラップと言います。オーバーラップは聞き手の行動。

 答えは3です。

問4 リペア

 リペア修復)とは、会話において聞き間違え、言い間違え、言葉探し、誤解などの問題が生じたときに、その問題を取り除こうとする発話行為のことです。詳しくはリンク先をご覧ください。

選択肢1

 学習者は母語話者の訂正を受け手「見ました」と修正しています。学習者はリペアを行いました。

選択肢2

 リペアはありません。ただどこか分からなくて聞き返しているだけで、言い間違えたわけでも、聞き間違えたわけでも、言葉そのものが理解できなかったわけでもありません。

選択肢3

 母語話者はガレリアが何か分からなくて聞き返していて、母語話者は修復連鎖を開始しています。でも学習者は自分が言い間違えていることに気付いていません。学習者によるリペアは行われていません。

選択肢4

 リペアしてません。月曜日が8日かどうか確認しているだけです。言い間違えでもなく、理解できなかったわけでもありません。

 よって答えは1です。

問5 コミュニケーション

選択肢1

 聞き手に徹するのではなく、話し手の練習も混ぜたほうがいいです。

選択肢2

 上昇調の「そうですか」と下降調の「そうですか」は意味が違うので、ちゃんと使い分けられないと相手から誤解されたりする可能性があります。ちゃんと教えないといけません。

選択肢3

 その通りです。このような相づちはコミュニケーションを円滑にするので、使えるようにちゃんと指導したい。

選択肢4

 「は?」は「え?」よりも失礼な感じを与えることを知っておくのは重要です。区別しないで使うと、相手から勘違いされたりするかもしれません。

 答えは1です。

 




コメント

コメント一覧 (3件)

  • いつも本当にありがとうございます。試験勉強に助かっております。
    そして、細かいところだけコメントして恐縮です。
    オーバーラップは、「=割り込み」というより、発話の文の一部、あるいは全体が重複すること、という定義のように見受けられます。ターンを取ってしまうこともあれば、あいづちに近いような進行を遮らないものもある、という研究をされている方もいるようです。ちゃんとした引用でなくすみません。相手が言い終わっていないのに、共感として重なって話してしまうことないですか。解釈が様々な言葉かもしれませんが、検定試験を作る方は、「割り込み」と分けているということでしょうか。

    • >マサさん
      コメントありがとうございます。
      毎日のんびり日本語教師の高橋です。改めてお調べいたしました。ひつじ書房の『会話分析の基礎』を参考にしております。
      オーバーラップは偶発的な発話の重なり、割り込み(interuption)は意図的な発話の重なりだそうです。
      口論するときはわざと相手の話を遮る(interupt)ようなことをして主張を一方的にぶつけるような言語行動を取ったりします。これが意図的な発話の重なりで割り込みです。
      一方日常的な会話では相づちが部分的に相手に発話に重なったり、全体的に同じ内容の発話が重なったりします。意図的ではなく偶発的に、言い換えると無意識的に行われる発話の重なりはオーバーラップだそうです。

      解説もそのように更新いたしました。
      ご指摘ありがとうございました。

  • 高橋様
    気づくのが大変おくれ、ごめんなさい。丁寧なご返答、再解説、ありがとうございます。さすがです、よく分かりました。
    個人的なことですが、おかげさまで、昨年の日本語教育能力検定試験に合格することができました。こちらのblogにも何度もお世話になりました。改めて、お礼申し上げます。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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