平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題10解説
問1 認知ストラテジー
言語学習ストラテジーと言えば、オックスフォード(Rebecca L. Oxford)の6分類のほうが有名です(有名だと思っています)が、ここで出題されてるのはオマリーとシャモー(J.M.O’Malley & A.U.Chamot)の言語学習ストラテジーです。こっちは問題文にも書かれているようにメタ認知ストラテジー、認知ストラテジー、社会・情意ストラテジーの3つに分類されるものです。ややこしいんでオックスフォードのほうだけから出題してくれませんか…
メタ認知ストラテジー | 学習プロセスを管理するストラテジー。学習を計画したり、モニタリングしたりする活動。 |
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認知ストラテジー | メモ取ったり、繰り返し練習したり、情報を整理したりするような活動。 |
社会・情意ストラテジー | 他者に質問したり、協力したりする活動や自分の感情を管理する活動。 |
1 メタ認知ストラテジー
2 社会・情意ストラテジー
3 認知ストラテジー
4 情意ストラテジー
したがって答えは3です。
問2 メタ認知ストラテジー
ここでは学習ストラテジー以外にも、コミュニケーション・ストラテジーについての選択肢も含まれてるので、これも一緒に覚えておきましょう。これは自分の言語能力が不足しているときにコミュニケーションを達成するために学習者が用いるストラテジーです。以下の6つに分けられます。(taroneの分類)
言い換え | 言えない表現を本来正しくないけど似ている表現で表したり、作り出した語で表したり、特徴や要素を描写して表すこと。 |
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借用 | 言えない単語や文全体を母語や他の言語を使って表すこと。(意識的転移) |
援助の要請 | 言えない表現を質問して教えてもらうこと。 |
身振りの使用 | 身振り手振りなどの非言語手段を用いること。 |
回避 | 使い慣れない形式や自信のない形式を使わないようにすること。より簡単な自信のある表現を選ぶこと。表現できなくなり、途中で言うのを中断すること。 |
1 コミュニケーション・ストラテジーの言い換え
2 明確化要求っぽい。 taroneの分類には含まれない。
3 オックスフォードの言語学習ストラテジーの補償ストラテジー
4 自分自身をモニターするような行動を取っているのでメタ認知ストラテジー
したがって答えは4です。
問3 社会情意的ストラテジー
1 社会情意的ストラテジー
2 コミュニケーション・ストラテジーの身振りの使用(ジェスチャー)
3 これはまあ… 分かりません。こういうのに名前がありますか?
4 メタ認知ストラテジー
社会的ストラテジーは、他の人と協力したり、助けてもらったりするストラテジーです。各選択肢のうち、他者と関係しているのは1です。
したがって答えは1です。
問4 ストラテジー・トレーニング
1 どちらも大事です。
2 どのように推測したかをクラスで共有することは、補償ストラテジーのトレーニングになります。
3 自分がどのストラテジーを使えているのか、使えていないのかを知ることは、ストラテジー・トレーニングの一環となります。
4 内容を予測するのは、補償ストラテジーのトレーニングになります。
したがって答えは1です。
問5 コミュニケーション・ストラテジーが言語習得に有利に働く理由
当該コミュニケーションで生じている問題を切り抜けるために用いるストラテジーをコミュニケーション・ストラテジーと言います。例えば相手が自分の言っていることが分からない様子だったら、ことばではなくジェスチャーを使って伝えようとすると伝えられるかもしれません。あることばが思い出せなくて、あるいは分からなくてことばが出てこないというときは、似ている意味のことばを使ったり、母語を使って伝えることも有効です。コミュニケーション・ストラテジーはこのようなストラテジー全般を指します。
しかし、問題によるとコミュニケーション・ストラテジーは言語習得に不利に働くこともあるそう。
選択肢1
コミュニケーション・ストラテジーに言い換えというストラテジーがあり、これは学習者がどう言えばいいか分からないとき、似ている意味の語を使ったり自分で造語したりして言うことです。このストラテジーを用いると相手から正しい言い方を教えてもらえるかもしれません。どのような言い方が正しいかの仮説検証に貢献できるので、この選択肢は有利に働く例です。
選択肢2
援助要請というストラテジーを用いて分からないことを聞き手に直接尋ねると、それまで理解できなかったインプットが理解できるようになります。この選択肢は有利に働く例です。
選択肢3
ことばが分からないときにそれを話すこと自体を避ける回避というコミュニケーション・ストラテジーは、分からないことを分からないままにして放置することになります。それは言語習得を促進するわけではないので不利に働きます。この選択肢が答え。
選択肢4
意味が分からないときに体を使ったり、言い換えたり、母語を使ったり、相手に聞いたりと… いろんなコミュニケーション・ストラテジーを用いることができれば、それだけ意味交渉に参加できる機会が増えます。これは有利に働く例です。
答えは3です。
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