6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

カルチャー・アシミレーターとは?

カルチャー・アシミレーター(culture assimilator)

 カルチャー・アシミレーター(culture assimilator)とは、文化の違いを感じさせるエピソードに対する複数の解釈を通じて、人々の解釈の違いを学んでいく形式の異文化トレーニングの一種です。異文化接触で生じた問題とそれに対する解釈を数通り提示し、研修者は与えられた解釈から自分の考えに合う最も適当と思われる解釈を一つ選びます。不適当なものを選んだ場合は再び問題を読み直して解釈し直すよう指示され、適当な解釈が選ばれるまで繰り返されます。この一連の手順によって文化の違いによる問題の本質に触れることができ、事態への対処を学び、人によって異なる多様な見方への気づきを促します。カルチャー・アシミレーターは一人でも行うことができますが、グループで行い、解釈が異なる研修者たちの間で話し合うことでより効率的に学ぶことが可能となります。

 カルチャー・アシミレーターでは次のような事例を通して解釈の違いを学びます。

 <事例>
 中国から来た李さんは日本人の友達がなかなかできないことに悩んでいましたが、あるとき佐藤さんに誘われ、佐藤さんを含む数人の日本人と李さんで食事をして、カラオケに行くことになりました。初めは緊張していた李さんでしたが、一緒に食事をして歌ううちに仲良くなってタメ口で話すようにもなり、佐藤さんとの距離が縮まったと感じました。しかしその翌日、佐藤さんは昨日の佐藤さんの様子とは全く異なり、距離があるかのように丁寧に接してきました。李さんはもう友達になったと思っていましたが、佐藤さんはそう思っていなかったのだと落ち込みました。

 <質問>
 なぜ佐藤さんは距離があるかのような丁寧な態度を取ったのでしょう?

 解釈1 佐藤さんは友達であっても丁寧に接するべきだと思っているから
 解釈2 佐藤さんは遊ぶときとそれ以外のときで接し方を変えるべきと思っているから
 解釈3 日本人は一度打ち解けただけではなかなか親しくなれない傾向があるから
 解釈4 日本人は友達であっても丁寧に接するのが普通だから

 この事例と解釈は自作なので質は悪いですが… だいたいこのような感じです。なお答えは3のつもりで作りました。

参考文献

 石井敏・久米昭元・遠山淳・平井一弘・松本茂・御堂岡潔(1997)『異文化コミュニケーション・ハンドブック』226頁.有斐閣
 原沢伊都夫(2013)『異文化理解入門』135-137頁.研究社




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