平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題15解説
問1 特別の教育課程
『学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知):文部科学省』の第2 留意事項の1にはこのように書かれています。
日本語の能力に応じた特別の指導(以下「日本語指導」という。)には,当該児童生徒の日本語の能力を高める指導のみならず,当該児童生徒の日本語の能力に応じて行う各教科等の指導も含むものであること。
選択肢2と全く同じ。
答えは2です。
問2 BICSとCALP
BICSとCALPはよく出題されるんで覚えておきたい用語です!
BICS (basic interpersonal communication skills)/生活言語能力
日常生活で最も必要とされる言語能力のこと。主に話したり聞いたりする能力が中心。日常生活の対人場面ではジェスチャーや表情、状況などの非言語情報が豊富にあるため、コンテクストに支えられているBICSの習得は認知的な負担が少なく、2年ほどで習得可能とされている。
CALP (cognitive academic language proficiency)/学習言語能力
教科学習などで用いられる抽象的な思考や高度な思考技能のこと。学習の場面では聞いたり話したりする能力も必要だが、BICSよりも読んだり書いたりする能力が特に必要になる。非言語情報があまりない低コンテクストの状態になりやすく認知的な負担が大きいため、習得には5~7年必要だとされている。
BICSは言語そのものが理解できなくても、相手の表情や態度、状況などの非言語情報から意味を推測できたりします。つまり高コンテクストで場面や文脈への依存度が高いです。
逆にCALPは学習場面で使う言語なので非言語情報が少なく、場面にあまり依存しない低コンテクストの状態になりやすいです。
したがって答えは4です。
BICS、CALPと認知的負担の関係については何度か出題されてます。
問3 CLARINET
『海外子女教育、帰国・外国人児童生徒教育等に関する総合ホームページ(CLARINET)について:文部科学省』にはこう書かれてます。
このホームページは、国内外におけるインターネット利用環境がめざましい進展を遂げていることから、文部科学省が中心となって、時間的・空間的な制約を克服した海外子女教育・帰国児童生徒教育関係の教育相談や情報提供並びに海外にある日本人学校・補習授業校と国内の学校及び日本人学校・補習授業校同士などの情報交換等が行えるような場を、広く一般にも提供していくことを目的としています。
CLARINETは上記のような目的があって作られたホームページです。
答えは1です。
問4 JSLカリキュラム
『Ⅱ 日本語支援の考え方とその方法』(魚拓)の14~15ページに書かれています。全部ここに書けないので、部分的に引用します。
選択肢1
14~15ページの「表現支援」のところに身体運動に関する記述はありません。この選択肢は不適当。
選択肢2
そのためにも、ステップを踏んで学習を続けていけば先々これができるようになるという学習の見通しを生徒に示すことが重要である。
15ページの「情意支援」のところにはこんな記述があります。具体例に関する記述と一致するのでこの選択肢は適当。
選択肢3
電子辞書やインターネットその他の各種メディアから情報を得る方法を知らせる。
15ページの「自律支援」のところにはこんな記述があります。具体例に関する記述と完全に一致するのでこの選択肢は適当。
選択肢4
事柄の関係性(因果関係、順次性、上位・下位など)を示して理解を促す
14ページの「理解支援」の「関連付け」のところにはこんな記述があります。具体例に関する記述と完全に一致するのでこの選択肢は適当。
答えは1です。
問5 夜間中学校
『中学校夜間学級等に関する実態調査の結果(概要)』(魚拓)にの1ページには、夜間中学校の在籍生徒数は1849名で、うち1498名が外国籍であると書かれています。また、2ぺージにはそうした日本語指導が必要な生徒に対する特別の教育課程の編成・実施が行われている学校が13校あると書かれています。
これは選択肢2の内容と一致します。
答えは2です。
コメント
コメント一覧 (3件)
詳しい解説ありがとうございます。
15ー2ですが、
生活言語能力はコンテクストの支えがある(←高コンテクストと言うことで良いでしょうか?)、学習言語能力は低コンテクストとのことですが、ここで使われる低コンテクスト、高コンテクストは日本語は高コンテクスト、欧米は低コンテクストと同じ意味と理解してよろしいでしょうか?
すみませんがよろしくお願い申し上げます。
>noliさん
生活言語能力とは、生活場面で使われる言語能力のことです。
例えば、食卓で指を指しながら「そこの醤油取って」と言う場面を考えてみると、「醤油」や「取って」が分からなくても、動作や状況、文脈から何をしてほしいのか推測できたりします。日常生活ではこのようなコンテクストの支え(文脈や状況が理解を促進する多くの要因)があるので、学習する際に余計な認知的負荷がかからない(習得しやすい)ということです。
「高コンテクスト」「低コンテクスト」は言語や文化の分類に用いられる表現であり、生活言語能力や学習言語能力と直接結びつくものではありません。
察し等がコミュニケーションに影響しにくく、言葉そのものが表す意味だけで意思疎通を行う低コンテクスト言語・文化の中でも、上記のような日常生活の場面では指差しなどでコンテクストの支えが発生したりします。それは一時的にコンテクストの支えが生じただけであり、高コンテクストと低コンテクストとは切り離して考えてください。
また、日本語は察しの多い高コンテクストの言語・文化ですが、欧米という広いくくりを全て低コンテクストと言い切るのは危険です。私自身把握していませんが、欧米の言語の中にも高コンテクストの言語や文化が存在するかもしれません。
解説ありがとうございます。
言葉は同じでも使われている分野が違うと意味が変わるのですね。
ありがとうございます。