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「切る」に対応するたくさんの中国語の動詞

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「切る」に対応するたくさんの中国語の動詞

 中国語の動詞についていろいろ勉強してたときに、「中国語では、同じ動きに見える動作を一つの動詞にまとめるのに対し、日本語では、動作によって意図される結果ごとに一つの動詞をあてる」(加藤: 16-17)という日本語と中国語の動詞に関する面白い考察を見つけました。その例として「切る」とそれに対応する中国語の動詞が挙げられています。例えば、ハサミで切るような動きには「剪」を使い、斧で切るような動きには「砍」を用いるけど、日本語ではいずれも動きには注目しないで全部「切る」としている、みたいな考察です。これに関してはうちには優秀な妻がいるので、日本語の様々な物理的な「切る」に対応する中国語を聞いて確認してみました。すると以下のような感じになりました。

日本語 中国語
切る (jiǎn) 二つの刃で挟み込んで切る
(qiē) 包丁などを上下させて切る
(huá) スーッと線を引くように切る
(gē) ナイフなどを水平方向に移動させて切る
(jù) ノコギリのように押したり引いたりして切る
(kǎn) 斧を振りかざすような動きで切る
(duò) 包丁や斧のようなもので力を入れて叩き切る
切割(qiēgē) レーザー、ウォーターカッターなどで切る

 中国語の動詞は動きに注目してまとめるけど、日本語の動詞は動きではなく、動きの結果に注目して動詞が用意されています。つまり日本語は二つに切断されていたりすれば「切る」が使えるということです。

剪(jiǎn)

 (1) 剪头发 jiǎn tóufa (髪を切る)
 (2) 剪指甲 jiǎn zhǐjia (爪を切る)
 (3) 剪到手指 jiǎn dào shǒuzhǐ (指をうっかり切る)

 ハサミのような二つの刃で挟み込んで切るときは「剪(jiǎn)」を使います。代表的なのは(1)の髪を切る。ハサミではないけど爪切りも二つの刃で挟み込んで切るという動きをするので(2)のように爪を切るときも「剪」を使います。(3)はハサミのようなものでうっかり切ることを表します。わざと切る場合は「剪手指」です。メタファー的な用法として動画を編集することを「剪视频」と言ったりもします。
 

切(qiē)

 (4) 切面包 qiē miànbāo (パンを切る)
 (5) 切蛋糕 qiē dàngāo (ケーキを切る)
 (6) 切到手指 qiē dào shǒuzhǐ (指をうっかり切る)

 包丁などを使って切るときは「切(qiē)」を使います。刃を上下に移動させて、野菜を切るような動きが「切」です。(7)の指の切り方はそのような刃物の上下の動きで切った場合に用います。

划(huá)

 (7) 划伤手指 huá shāng shǒuzhǐ (うっかり紙で指を切る)
 (8) 划线 huá xiàn (線を引く)
 (9) 划船 huá chuán (舟を漕ぐ)

 (7)は紙をスライドさせて指を切ったときに使う表現です。「划(huá)」は(8)からも想像できるように、スーッと線をつけるような動作を表します。紙で指を切るときも線を引くような動きをするし、また細い線のような傷ができます。「划」を使って日本語の「切る」に翻訳できる例は(7)しか見つからなかったので、(8)(9)はその他の用例を載せておきました。

割(gē)

 (10) 割伤手指 gē shāng shǒuzhǐ (指を切る)
 (11) 割头发 gē tóufa (髪を一束持って切る)
 (12) 割菜 gē cài (野菜を切る)
 (13) 割喉 gē hóu (喉を切る)

 (10)の指の怪我のしかたは、ナイフのようなものを水平方向に移動させて力を入れて切ることによる怪我です。水平方向の動きがポイントです。「切る」じゃなくて「刈る」ですが、人力で草を刈る時は鎌のようなもので水平方向に動きますし、あるいは円盤状の電動草刈りも水平方向に回転して刈るので、そちらも「割草」と言えます。(12)は野菜を料理するために切るのではなくて、畑で収穫するときのように根っこを切る動きがイメージされるみたいです。つまりこれも水平方向の動き。
 ちなみに「割豆腐(gē dòufu)」はどうかと妻に聞いたら、豆腐が硬め感じがすると言ってました。「割」は目的語に硬めのものを要求するようです。

锯(jù)

 (14) 锯手指 jù shǒuzhǐ (ノコギリのようなもので指を切る)
 (15) 锯木头 jù mùtou (木を切る)
 (16) 锯骨头 jù gǔtou (骨を切る)

 「锯(jù)」は主にノコギリのようなもので押したり引いたりを繰り返して切るような動作に使います。(13)は手動のノコギリでもいいですし、電動ノコギリでもいいですけど、前者の場合はじわじわ少しずつ切ることになるので怖いやつです。(15)は最も普通の使い方、(16)は死体を解体するような殺人鬼にはありえるかも。

砍(kǎn)

 (17) 砍树 kǎn shù (斧で木を切る)
 (18) 砍头 kǎn tóu (首をはねる)
 (19) 砍锁链 kǎn suǒliàn (鎖を切る)
 (20) 砍价 kǎn jià (値切る)

 「砍(kǎn)」は斧のようなもので木を切るような動きがイメージされます。(18)の日本語訳は普通「切る」ではなく「はねる」ですけど、一応斧を振りかぶって首を切り落とす場合はこのように言います。(19)も斧のようなもので鎖を切っているイメージです。(20)は比喩で、値段を斧で切る→値切るという感じです。妻曰く、「砍手指(kǎn shǒuzhǐ:指を切る)」の場合は指がとても大きい感じがすると言ってました。つまり「砍」はその目的語にある程度の大きさのあるものを要求するのかもしれません。

剁(duò)

 (21) 剁肉 duò ròu (肉をみじん切りにする)
 (22) 剁鸡肉 duò jīròu (鶏肉をみじん切りにする)
 (23) 剁手指 duò shǒuzhǐ (指をちょん切る)

 「剁(duò)」は包丁や斧のようなもので力を入れて叩き切る動きを表します。料理でいうと(21)(22)のように使えて、その場合は餃子の餡を作るかのようにみじん切りにする動きになります。指に対して使うと(23)、力を入れて一発振り下ろしてちょん切るみたいな意味になります。この表現は日常生活ではまず使いませんが、ヤクザ映画などでは使われます。

切割(qiēgē)

 (24) 用钢丝切割金属 yòng gāngsī qiēgē jīnshǔ (ピアノ線で金属を切る)
 (25) 用水刀切割石材 yòng shuǐdāo qiēgē shícái (ウォーターカッターで石材を切る)
 (26) 用激光切割玻璃 yòng jīguāng qiēgē bōli (レーザーでガラスを切る)

 「切割(qiēgē)」は「切(切る)」と「割(分ける)」からなる工学の専門的表現で、包丁などではなく、主に機械や工具を用いて工学的な技術で物を切るときに使います。「切る」というよりも、切断する、加工するみたいな意味を持つかもしれません。

参考文献

 加藤晴子(2014)「動詞・形容詞」『日本語ライブラリー 中国語と日本語』11-18.朝倉書店




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