「女王」はなぜ「じょうおう」?
学習者に「女王」はなぜ「じょおう」ではなく「じょうおう」と読むのかと聞かれました。いくつか辞書を調べたら「女王(じょうおう)」の項目はなく「女王(じょおう)」しかなかったんですが、確かにエリザベス女王、女王蜂、女王蟻なんていうときは「じょうおう」と長音が加えられて発音することがありますね… 歴史的な音韻変化に関係することは間違いないと思いますけど、なぜ長音が加えられたのかについて書かれてる書籍は見つからなかったです。知ってる方、もしよければコメントください。
その他の例
NHK放送文化研究所(2002)によれば、「女王(じょうおう)」のように元々の漢字の読みにはない長音が付け加えられる漢語には次のようなものがあります。
(1) 夫婦(ふふ→ふうふ)
(2) 詩歌(しか→しいか)
(3) 女房(にょぼう→にょうぼう)
(4) 披露(ひろ→ひろう)
「夫婦」はそれぞれの漢字を普通に音読みすると「ふふ」になるものとして考えられますが、実際は長音が挿入されて「ふうふ」となっています。このほか、「馬油(ばゆ→ばあゆ)」もありますね。
こういうのは長音添加、長音挿入、長音化みたいなキーワードで研究されていそうですが、調べた限り見つかりませんでした。「女王(じょうおう)」等は一応慣用音として扱えると思いますけど、「漁師」が「ぎょうし」ではなく「りょうし」と読まれたり、「既出」を「概(がい)」などからの類推で「がいしゅつ」と読んだりするような誤読から定着するケースの慣用音とは異なる感じがします。なぜなら「女」を「じょう」、「夫」を「ふう」と誤読するような動機が一見見当たらないからです。だから誤読によるものではなく、たぶん音韻変化なんだろうと思っています。
現代新潟方言の例
『越後文書宝翰集』には「所領」が本来「しよりやう」のところ「しゆうりやう」となっており、yo が yu に交替したうえで長音が添加されて表記されています(川野 2017: 59)。また、川野(2017: 60)は長音添加する語の例として現代新潟方言の語をいくつか挙げてます。新潟といっても広いので単に「新潟方言」とはくくれないものとは思いますけど、これらは音韻論的に「女王」「夫婦」などともしかしたら関係があるかもしれないので一応ここにまとめました。
(5) 醤油(ショーヨー)
(6) 長者(チョージョー)
(7) 歯(ハー)
(8) こすぎ(コースギ)
(9) 鶏(ニーワドリ)
(10) 鯨(クージラ)
参考文献
川野絵梨(2017)「中世東国文書に見られる音韻交替表記について」『東京女子大学論集』68(1): 47-63.
NHK放送文化研究所. “「女王」の読み | ことば(放送用語) – 最近気になる放送用語” . NHK放送文化研究所. 2002. https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/kotoba/term/067.html , (参照 2025-07-08) .

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