日本語Q&A
質問者さん(中国)
管理人
「つまる」は「つまらない」を五段動詞ナイ形とみなして作られた

本来「つまらない」はこの形でイ形容詞の辞書形です。イ形容詞のナイ形は辞書形に現れる派生接辞 -i を -kunai に置き換えることで作るので、「つまらない」のナイ形は「つまらなくない」とするのが規範となります。
つまらない(tumarana-i) → つまらなくない(tumarana-kunai)
しかし、イ形容詞辞書形「つまらない」の語末には既に anai が含まれていることがきっかけとなり、これを動詞のナイ形に現れる派生接辞 -anai とみなしてその派生接辞を取り除き、動詞の辞書形に現れる派生接辞 -u に置き換えることでこれまで存在しなかった動詞「つまる」を生み出しています。いわゆる類推というものです。
つまらない(tumar-anai) → つまる(tumar-u)
こうした語の造り方を逆成と呼びます。
もう少し形態的な話をすると、「つまらない」から「つまらなくない」を作る場合の「つまらない」の形態素境界は tumarana と i の間にありますが、「つまらない」から「つまる」を作る場合の「つまらない」の形態素境界は tumar と anai の間にあるとみなされています。派生接辞を -i とみなす場合は「つまらない」はイ形容詞辞書形として扱えますが、-anai とみなす場合は「つまらない」が五段動詞のナイ形であると類推され、逆成によって動詞辞書形「つまる」が造られているわけです。まとめるとこんな感じ。

「つまらない」みたいに五段動詞ナイ形とみなせるイ形容詞
「くだらない(kudarana-i)」「つたない(tutana-i)」「幼い(osana-i)」「儚い(hakana-i)」「おっかない(okkana-i)」などのナイ形は規範的には「くだらなくない(kudarana-kunai)」「つたなくない(tutana-kunai)」「幼くない(osana-kunai)」ですが、これらも「つまらない」と同じく anai が含まれているので、この部分を五段動詞ナイ形に現れる派生接辞 -anai であるとみなして逆成し、(理論上)新しい五段動詞を作れそうです。
くだらない(kudar-anai) → くだる(kudar-u)
つたない(tut-anai) → つつ(tut-u)
幼い(os-anai) → おす(os-u)
儚い(hak-anai) → はく(hak-u)
おっかない(okk-anai) → おっく(okk-u)
「くだる」は聞いたことがありますが、「つつ」と「おす」は現時点で私は聞いたことがないです。感覚的に「つつ」は語形が短すぎて「つたない」との直感的な関連が感じられにくくなってる感じがします。「幼い」「儚い」の「おさな」「はかな」部分は漢字「幼」「儚」が当てられているので anai を派生接辞としてみなすことが難しいかもしれませんし、また「押す」「吐く」と音が衝突しているので「おす」「はく」の逆成は回避されるかもしれません。
一段動詞ナイ形とみなせるイ形容詞
派生接辞を -i とみなす「せわしない(sewasina-i)」「極まりない(kiwamarina-i)」が規範的ですが、仮に語末の nai を一段動詞ナイ形に現れる接辞とみなした場合、その動詞辞書形は次のようになります。これも現状聞いたことはないですが今後もしかしたら…?
せわしない(sewasi-nai) → せわしる(sewasi-ru)
極まりない(kiwamari-nai) → 極まりる(kiwamari-ru)
※「~ない」で終わるイ形容詞は「少ない(sukuna-i)」「切ない(setuna-i)」などもありますが、これらの語末 nai を派生接辞とみなした場合、形態素境界は suku-nai、setu-nai のようになります。これらは動詞語幹が u で終わっていて、語幹が i もしくは e で終わるという一段動詞の形態的特徴を満たしていません。したがって「すくる(suku-ru)」「せつる(setu-ru)」という一段動詞を逆成することはできないはずです。

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