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ソーシャルサポートとは?

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ソーシャルサポート(social support)

 ソーシャルサポート(social support)とは、「個人が取り結ぶネットワークの成員間で、個人のウェル・ビーイングを増進させる意図で交換される心理的・物質的資源」(田中: 1997)のことです。日本語教育においては、異文化接触で生じた学習者の様々なストレスを取り除いたり緩和したりするための社会的支援としてソーシャルサポートが研究されています。

ソーシャルサポートの分類

 ソーシャルサポートは研究者によって様々な分類がなされていますが、およそ共通の認識として、個人が抱える問題を直接ないし間接的に解決することに役立つ「道具的サポート」と、個人の心理的な問題を軽減したり解消したりする「情緒的サポート」の2つに大別されると考えられています。ソーシャルサポートの代表的な研究でもあるHouse(1981)はそうした先行研究をもとにソーシャルサポートを次の4つに分けました。この分類についてHouseはそれぞれ異なる原因と結果を持っているため区別が必要であると述べています。

 1.Emotional Support(情緒的サポート)
 2.Appraisal Support(評価的サポート)
 3.Informational Support(情報的サポート)
 4.Instrumental Support(道具的サポート)

Emotional Support(情緒的サポート)

 尊敬、共感、思いやり、信頼、愛情などを提供して情緒面に働きかけるサポートが情緒的サポートです。悩みやニーズに対して熱心に関心を示し、積極的に耳を傾けるような行為もこれに含まれます。人によって抱えている問題は異なるので求めているサポートも当然異なりますが、それでも情緒的サポートは4つのサポートの中で最も重要であると考えられています。さらに、他の3つのサポートの中にも情緒的サポートは何らかの形で含まれていることがあります。

Appraisal Support(評価的サポート)

 肯定したり、フィードバックを行ったり、他者と比較して能力などを評価するサポートが評価的サポートにあたります。このタイプのサポートは情報的サポートと同じく、情報の伝達のみによって実現するサポートです。行動や成績に対してふさわしい評価を与えること自体が評価的サポートですが、結果として励ましたり、動機づけを高めたりする情緒的サポートにも繋がります。

Informational Support(情報的サポート)

 問題に対処するために必要な情報や知識をアドバイス、提案、指示などの形で提供するサポートを情報的サポートと言います。例えば、アルバイトをしたがっている留学生に求人情報を教えたり、早くアルバイトを見つけるコツなどを教えることがこれにあたります。

Instrumental Support(道具的サポート)

 物やお金を貸したり、仕事や作業を手伝ったりするような直接助けることを目的とした行動を道具的サポートと言います。例えば、手続きの仕方が分からない留学生に対して同伴して助けたり、車で買い物に連れていったりするような具体的なサポートを指します。

参考文献

 House, J.S. (1981) work stress and social support. Reading: Adison-Wesley.
 田中宏二(1997)「ソーシャル・サポート」日本健康心理学会編『健康心理学事典』実務教育出版
 水野治久・谷口弘一・福岡欣治・古宮昇(2007)『カウンセリングとソーシャルサポート―つながり支えあう心理学』ナカニシヤ出版




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