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令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題13解説

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令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題13解説

問1 協調の原理

 問題文でグライス(H.P.Grice)と出てきていますが、この人は語用論研究の権威です。1975年に協調の原理(cooperative principle)というのを提唱し、これについて以下のように説明しています。原典は参考文献からご覧ください。

 Make your conversational contribution such as is required, at the stage at which it occurs, by the accepted purpose or direction of the talk exchange in which you are engaged. (Grice 1975: 45)
 
 (会話の中で発話者は、自らの発話を、当該会話の当該段階において、その会話に参加している人たちによって受け入れられている会話の目的や方向に適うようなものにすること。)
 ※日本語訳は山岡ら(2018: 41)より引用

 この記述と同じのは4。
 答えは4です。

 参考文献
 山岡政紀・牧原功・小野正樹(2018)『新版 日本語語用論入門: コミュニケーション理論から見た日本語』41頁.明治書院
 Grice,H.P.(1975) Logic and Conversation, in Cole and Morgan, op. cit., 41-58

問2 「質の公理」に違反している返答の例

 協調の原理の下位規範は次の4つ。簡単に紹介しますね。

量の公理 必要とされる量の情報を与えろ。少なくても多くてもダメ。
質の公理 嘘とか根拠が乏しいことを言うな。
関係の公理 相手の発話と関係あることを言え。
様態の公理 明瞭に、簡潔に言え。

 それぞれの選択肢が何の公理に違反しているかを見てみましょう。

選択肢1

 鈴木さんにリーダーシップがあるかどうか聞いてるのに字の話をし始めて関係ない話をしています。
 関係の公理に違反した返答です。

選択肢2

 やりたくもない仕事なのに「楽しかったよ」と嘘を言ってます。
 質の公理に違反した返答です。これが答え。

選択肢3

 何時か聞いてるんだから何時何分と答えるべきなのに「早朝」としか言ってない。
 必要な量の情報を与えてないので量の公理に違反しています。

選択肢4

 何をしてたのか聞いてるから具体的に答えるべきなのに「外にいた」としか言ってません。
 必要とされる情報を与えてないから量の公理にも違反してますし、曖昧に言ってるから様態の公理にも違反してます。

 答えは2です。

問3 発話がどう解釈されるべきか

 発話は文脈によって異なる意味になることがあります。よく挙げられる例ですが、エアコンがめっちゃ聞いてる部屋で「寒いですね」って言うと、寒いという意味以外に「エアコンを消してほしい」っていう意味が出てきます。これが冬の屋外で「寒いですね」と言ったらエアコンを消してほしいなんて意味にはなりません。だって屋外にエアコンはないから。こんな具合に、発話はその発話がなされる文脈(周囲の状況など)が影響して解釈が変わってきます。こうした文脈(コンテクスト)まで含めた発話の解釈を研究するのは言語学の一分野である語用論です。

 1 言語学じゃないなーって雰囲気がする用語だから違う。
 2 これも言語学っぽくない
 3 概念化? なんか見たことある言葉だけど何だろう
 4 これが答え。

 この問題が語用論からの出題なので「文脈」や「コンテクスト」って言葉がヒントになります。「文脈化」については知らない…

 答えは4です。

問4 順番交替システム

 発話の順番を交代していくシステムときたら、会話分析の順番交替システム(turn-taking system)が思い浮かびます。基本的にはどんな状況であっても必ず複数の会話参与者は発話を交互に繰り返します。これを会話分析では順番交替とかターンテイキングと呼んでいます。

 1 普通の順番交替。これが答え。
 2 相手が相づちを打ったら相手が聞いてますよ!っていうことなんで、自分は話し手もおkです。これは間違い。
 3 相手が話しているときは相手にそのままターンを保持してもらうのが普通です。これは間違い。
 4 誰も話さないときは、それまでターンを持ってた人が話すのもいいし、誰かがターンを奪って話すのもいいです。これは間違い。

 答えは1です。

問5 隣接ペア

 会話参与者は普通直前の発話に対して妥当な発話で返答することが求められます。その発話の連鎖の中にはそのように発話するのが自然で、そのように発話しなければ逆に不自然になるような強い結びつきを持った発話のペアが見られます。例えば次のような例です。

 A:名前は何ですか?
 B:高橋です。

 「名前は何ですか?」と聞いたら普通名前を返答するように、この2つの発話は強い結びつきを持ったペアと考えられます。名前を聞いたから名前を返さないといけない、という強制力が働いているからペアになってるとも捉えられそうです。逆に名前を聞いてるのに「天気がいいですね」とか関係のない返答をしたら不自然。質問に対してはその質問に対して応答するのが自然なわけです。このようなカップリングを隣接ペアと言います。

 問題の会話文では、「このお魚、おいくらですか?」という質問があり、これに対する答えは「1尾500円です」です。この2つは隣接ペア。
 イとオ、つまり答えは2です。




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