令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題11解説
問1 術語
術語は学術用語、つまり専門用語のこと。
選択肢1
学術用語なんで世界中同じだから国際性は薄くない。地域ごとに変わるなんてこともまずないです。例えば言語学で case と言ったら言語学を研究してる人たちはそれが何か一瞬で分かります。世界中が case と呼んでいますから地域ごとに変わることもありません。この選択肢は間違い。
選択肢2
スマホが振動してないのに振動してるように感じる現象を Phantom vibration syndrome と呼びますが、日本語ではこれがそのまま「ファントムバイブレーションシンドローム」などと外来語で入ってきています。
新型コロナウイルス感染症はいつのタイミングか「COVID-19」と名付けられて以来、報道機関がそれで呼ぶようになりました。これは術語ですが、新しい術語なので新語でもあります。
外来語や新語が使用される例は見られます。
選択肢3
これが正しい記述です。
術語は同じ分野を研究する人たちにとって効率的な意思疎通を可能にします。例えば「この地域方言では、進行中と結果の状態のアスペクトを形式上区別する」みたいな専門的な言い方をすると同じ研究者にははっきりと明確かつ正確に意味が伝わります。性質の異なるものを分類して名前をつけて… っていうのが学術の基本。
選択肢4
言語学の case は日本語で「格」と言われますが、「格」っていうのは一般語ではないですね。あいかわらず日本語の術語。
ファントムバイブレーションシンドロームは日本語で「幻想振動症候群」と呼ばれるらしいけどこれも一般語じゃない。
アスペクトだったら「動作の局面」みたいに一般語の組み合わせでなんとか説明できるけど…
全体として一般語に置き換え可能か?と言われたら難しい。
答えは3です。
問2 集団語
問題文にもありますが、集団語は「ある集団に特徴的な言葉」のこと。ある集団の中でよく使われる言葉のことです。
例えば私のビリヤード仲間の間では、次の手玉の配置が良い場所に来るように意識することを「ネクいし(ネクスト意識の略)」と呼んでます。これは私たちの造語だから他の人は誰も使ってないはず。「ネクいし」は私たちの集団が使う集団語です。
選択肢1
これは正しいです。その集団語をよく使うことで自分がその集団の成員であることを表現する感じ。
選択肢2
他集団に自集団の集団語を使うと、距離を取ることになります。
同じ集団語を使っている集団だったら距離が縮まるかもしれませんけどね。これは間違い。
選択肢3
例えば、言語学では「私の内省では(これは不自然です)」みたいな言い方がよくされます。これは一般語で言うと「私の言語感覚では(これは不自然です)」と同義です。この2つは同義なので境界はありません。別にどっち使ってもいいので。この選択肢は間違い。
選択肢4
集団語は基本的にその集団内で通じる言葉なので、外の人には通じにくい。
この選択肢は間違い。
答えは1です。
問3 職業語
職業語は「ある職業や業界から生じた語」のこと。
1 川田男爵という人が生み出したから「男爵いも」というのであって、職業語じゃないです。
2 家電業界で昔家電はほぼ白だったから「白物」って呼ばれてた説。これは職業語。
3 成長段階にある青い稲がある田のこと。職業語じゃないです。
4 「欠勤」は一般語です。
答えは2です。
問4 隠語
隠語は仲間内にだけ伝わり、他の人には分からない言い方のことです。
1 これ隠語です。本当にこんな言い方するんですか!?
2 「ぼちぼち」は大阪の方言で隠語じゃない。
3 すでに情報を共有しているときにこんな言い方ができるだけであって、隠語じゃないです。
4 コスパは「コストパフォーマンス」の略語で、隠語でも何でもない。
答えは1です。
問5 「ファイル」
「ファイルが」のアクセントは「高低低低」なんですけど、これ以外のアクセントが存在します。それは「ファイルが」(低高高高)です。いわゆるアクセントの平板化という現象で、他にも次のような例がよく挙げられます。
かれしが → かれしが (平板型)
バイクが → ばいくが (平板型)
選択肢4には「平板型になる」と書かれてます。これが平板化のこと。
答えは4です。
コメント