令和4年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅱ 問題3解説
1番 「か」→「は」
どうしても「かいがい」を「はいがい」と言ったように聞こえる。でも「は」の口腔断面図はありません。だとすれば「は」に近い「ふぁ」と言った可能性があります。ちゃんとした「ふぁ」には聞こえないけど、一応「ふぁ」の子音を表す口腔断面図はaです。公式も答えaって言ってるからまあしょうがない…
a [Φ]の口腔断面図 (ファ行)
b 硬口蓋摩擦音「ひ」の子音とか
c 軟口蓋摩擦音 日本語にない
d 軟口蓋鼻音 鼻音化した「が」かな
答えはaです。
2番 「よ」→「じょ」
「よみかた」を「じょみかた」と言いました。「じょ」じゃなくて「じ」を考えてみます。
「じ」の子音は2種類あって、語頭なら[dʑ]歯茎硬口蓋破擦音、語中なら[ʑ]歯茎硬口蓋摩擦音です。歯茎硬口蓋のあたりに舌がついているか、摩擦が起きるくらいとても近づいているのを選べばいいってこと。
a 歯茎破裂音かな? [t]とか[d]とか
b 歯茎硬口蓋弾き音 ラに近い音だと思う
c これが「じょ」の口腔断面図 歯茎硬口蓋についてます。つまり「じょ」は語頭として発音されてました。
d これも歯茎硬口蓋に舌がついてるけど鼻腔への通路が開いてるので歯茎硬口蓋鼻音で間違い
答えはcです。
3番 「ね」→「にぇ」
「ねこ」を「にぇこ」と言いました。「にぇ」ではなく「に」で見てみます。
「に」の子音は[ɲ]硬口蓋鼻音だから、硬口蓋のあたりに舌があって鼻腔への通路が開いてるやつを探します。
a 両唇鼻音 [m]かな
b これが「にぇ」 歯茎硬口蓋のあたりに舌があって鼻腔への通路が開いてます
c [ŋ]軟口蓋鼻音 鼻音化した「が」
d [ɴ]口蓋垂鼻音 語末の「ん」
答えはbです。
4番 「フィ」→「ピ」
「フィ」を「ピ」と言いました。
「ふぃ」の子音は[ɸ]無声 両唇 摩擦音
「ぴ」の子音は[p]無声 両唇 破裂音
この2つは調音法だけ違います。
答えはcです。
5番 「ツァ」→「チャ」
「ツァ」を「チャ」と言ってます。
「ツァ」の子音は[ts]無声 歯茎 破擦音
「チャ」の子音は[tɕ]無声 歯茎硬口蓋 破擦音
調音点だけ違います。
答えはaです。
6番 「ポスト」→「ポストゥ」
「ポスト」を「ポストゥ」と言ってます。
どちらも子音は[t]、母音だけ[o]と[ɯ]で違います。
[o] 円唇 後舌 半狭母音
[ɯ] 非円唇 後舌 狭母音
こうしてみると唇の円唇性と舌の高さ(口の開き具合)が違います。しかし唇の円唇性は選択肢にないので… おそらく
[u] 円唇 後舌 狭母音
これで発音していたんだと推測できます。唇の丸めを伴った「う」で、日本語の標準的な「う」よりもこもった「う」に聞こえるやつです。これなら舌の高さだけに絞られる。
したがって答えはdです。
7番 「じっけん」→「じっかん」
「じっけん」を「じっかん」と言ってます。
「け」と「か」はどちらも子音が[k]無声 軟口蓋 破裂音なので子音の違いはありません。あとは母音の違いだけ。
[e] 非円唇 前舌 半狭母音
[ɑ] 非円唇 後舌 広母音
舌の前後位置と舌の高さが違います。
答えはa。
8番 「ぶ」→「ふ」
「ぶくろ」と「ふくろ」と言いました。
「ぶ」の子音は[b]有声 両唇 破裂音
「ふ」の子音は[ɸ]無声 両唇 摩擦音
声帯振動するかどうかで対立してますし、調音法も違います。
答えはcです。
コメント
コメント一覧 (8件)
6番は「ポスト」が「ポストゥ」に聞こえたので、最後の「ト」の子音が脱落→bを選びました。
7番は「じっけん」が「じっかん」に聞こえました。母音がe:前舌半狭母音とa:中舌広母音で異なると思ったので、aを選びました!
>山田さん
ありがとうございます!
解説を修正いたしました。
いつもお世話になっております。
6番のところですが、私は[ポストゥ]のように聞こえて、
[ト][to]→円唇 後舌 中母音 無声 歯茎 破裂音
[トゥ][tu]→円唇* 後舌 高母音 無声 歯茎 破裂音
よってd、舌の高さに選びました。*私は円唇のように聞こえた。
7番のところですが、私は[ジッカン]のように聞こえて、
[か]→(前後区別なし) 低母音
[け]→前舌 中母音
よってa、舌の前後位置と舌の高さに選びました。
>外国人さん
ありがとうございます!
解説を更新いたしました。
1番の選択肢aって両唇だからフではないですか?
>山下勝弘さん
ご指摘ありがとうございます!
確かに「は」ですね… もしかしたら「ふぁいがい」と言ったのかもしれません。とすれば「は」を聴き間違えるのも納得できるし、両唇摩擦なのも説明できます。
いずれにしても市販の音声を聞かないと分からないので推測ですが…
この件解説に追記しておきます。
私は、1番はc(軟口蓋摩擦音[x])にしました。
軟口蓋摩擦音[x]は、「喉を強く擦る[h]」と解説されることがあります。
また、正しい発音[k]が軟口蓋破裂音であることを踏まえますと、
同じ調音点での、調音法の誤りと捉えることができます。
「ファ」ではなく、きちんと「ハ」と聞こえたので、
上記の解釈をしました。
>ねんねこさん
なるほど! 軟口蓋摩擦音なら日本人にとってハ行音に聞こえますね!
こちら大変参考になりました。解説を更新しておきます。ありがとうございました。