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平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(9)解説

平成29年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(9)解説

(9)形容詞の格

 形容詞がとる「が」は主体のときもあれば対象のときもあります。
 この2つの「が」は見極めが一般に難しいと思われがちなんですけど、単文における文型から見ると分かりやすいかも?

 〔~が形容詞〕型
 (1) 空明るい   (主体)
 (2) 彼カッコいい (主体)
 (3) 番組面白い  (主体)

 こんな感じで格助詞を〔~が〕しかとらない形容詞は、その形容詞が表す性質を保有している主体を「が」で表します。だからこれらの「が」は主体です。

 〔~が~が形容詞〕型
 (4) 私コーラ好き(なこと)  (主体、対象)
 (5) 私ギターできない(こと) (主体、対象)
 (6) 私料理得意(なこと)   (主体、対象)

 (4)~(6)のように〔~が~が〕型になる形容詞は、最初の「が」が主体、2つ目の「が」が対象にあたります。例えば例文(4)なら、「好き」という感情を持っている主体を「が」で表し、その「好き」という感情の向かう先である対象も「が」で表します。

 〔~が〕型なら主体、〔~が~が〕型なら主体と対象、みたいに見極めてみてください。

選択肢1

 「私が故郷が恋しい(こと)」というように〔~が~が〕型をとります。このとき「私」が主体、「故郷」が対象です。
 選択肢1の「が」は対象を表しています。

選択肢2

 単文で「私が魚がうまい」とは言えません。この文は「私が魚がうまいと思う」みたいに複文になっています。「うまい」は「魚がうまい」などと〔~が〕型をとります。こういうやつの「が」は主体。「うまい」という性質を持った主体を「が」で表すもの。
 選択肢2の「が」は対象を表しています。

選択肢3

 「私が太陽がまぶしい」とは言えないです。この文は「私が太陽がまぶしい(と感じる)」みたいに複文になっていて単文ではありません。単文であれば「太陽がまぶしい」と〔~が〕型をとります。つまり「まぶしい」という性質を持った主体を「が」で表しています。
 選択肢3の「が」は対象を表しています。

選択肢4

 「私が水が欲しい(こと)」などと「欲しい」は〔~が~が〕型をとります。「水」は「欲しい」という感情の向かう先であるので、2つ目の「が」は対象。
 選択肢4の「が」は対象を表しています。

選択肢5

 単文で「私が薬が苦い」とは言えません。この文は「私が薬が苦い(と思う)」という複文になってます。単文においては〔~が〕型をとり、この「が」は主体です。つまり「苦い」という性質を持っている主体が「薬」という意味。
 選択肢5の「が」は対象を表しています。

 まとめると次のようになります。

 1 対象の「が」 → 「恋しい」という感情が向けられる対象が「故郷」
 2 主体の「が」 → 「うまい」という性質を持っている主体が「魚」
 3 主体の「が」 → 「まぶしい」という性質を持っている主体が「太陽」
 4 対象の「が」 → 「欲しい」という感情が向けられる対象が「水」
 5 主体の「が」 → 「苦い」という性質を持っている主体が「薬」

 はい、この問題は問題不成立です。
 公式の答えは4ですが、1も対象。問題不成立。




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