平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3B解説
(6)状態動詞
動詞にも状態性を有するものが存在する、と問題文にあります。これは状態動詞と呼ばれることがあります。典型的な動詞は動きを表しますが、この種の動詞は動きは表さないので動きの局面もなく、つまりアスペクト表現がつけられないという文法を持ちます。例えば「ある」は動きではないので、動きの開始局面「~はじめる」や動きの進行中の局面「~ている」、動きの終了直前の局面「~終わるところ」などのアスペクト表現はつけられない傾向があります。「ありはじめる」「あっている」「ありつつある」「あり終わるところだ」など… こういう動詞が状態性の動詞です。
状態性の述語のもう一つの特徴として、ル形で<現在>を表します。非状態性の述語(動作性述語)はル形で<未来>を表す点で対立します。この問題はこのテンスの観点から見るといいと思います。
1 英語を教える <未来>
2 文句を言う <未来>
3 文法を知る <未来>
4 山が見える <現在>
「見える」はル形で<現在>の解釈ができるので状態動詞です。状態性の述語は発話時点における事物の状態を表すので、ル形で<現在>の解釈になります。
ちなみに可能を表す動詞、例えば「英語を話せる」などもル形で<現在>を表します。これも状態動詞。発話時点において可能の状態を有しているという意味を持ちます。「見える」は可能を表す動詞だから、この観点から言っても状態動詞。
よって答えは4です。
(7)品詞
1 want(動詞) - 欲しい(形容詞)
2 need(動詞) - 要る(動詞)
3 sick(形容詞) - 病気だ(名詞+助動詞)
4 different(形容詞) - 違う(動詞)
品詞を見てみると2だけが動詞-動詞で共通しています。
答えは2です。
(8)状態動詞の特徴
問題文には、代表的な状態動詞の例として「ある」をあげているので、「ある」を使って検証してみましょう。
選択肢1
存在を表す「ある」は「~が~にある」のように2項型の文型を取ります。三項型の文型を取るのは「教える」「与える」「あげる」などの、物や行為の授受を表す動詞たちなどがあります。この選択肢は間違い。
選択肢2
「ベッドに猫がいる」において、存在主体「猫」の存在場所はニ格で表されます。「を」を使うことはありません。場所を表す「を」を使うのは一部の移動動詞。例えば「家を出る」「交差点を曲がる」などは、出発点、経路としての場所を「を」で表します。
この選択肢は間違い。
選択肢3
「~に~が」の文型をとることは選択肢1で説明しました。この選択肢が答えです。
選択肢4
0項型の文型は、個人的には日本語には無いと考えています。
もちろん「ある」は二項動詞なのでありえない。
答えは3です。
(9)状態動詞と非状態動詞のテンス
状態動詞は主節においてル形で現在を表します。
(1) 机の上にコップがある。 <現在>
(2) 遠くに山が見える。 <現在>
(3) 彼は私より劣っている。 <現在>
一方、非状態動詞は主節においてル形で未来を表します。
(4) 明日から本気出す。 <未来>
(5) ニューヨークに行く。 <未来>
答えは1です。
(10)非状態動詞の用法
状態動詞「ある」のル形のテンスの解釈が異なるものを問う問題です。問題(9)で状態動詞は主節においてル形で現在を表すことが分かっていますので、現在を表さないものを探します。
1 ~桜並木がある <現在>
2 ~雪がある <現在>
3 ~蔵がある <現在>
4 ~祭りがある <未来>
つまり選択肢4の「祭りがある」は「ある」ですけど動作動詞「開催する」の感じで使われています。動作動詞のル形は未来を表すのが原則ですから、ここでも未来になっています。
1、2、3のテンスは<現在>で4だけが<未来>。つまり選択肢4の「ある」は非状態動詞。
答えは4です。
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