平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題15解説

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平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題15解説

問1 訪日外客数

 日本政府観光局(JNTO)では、2003年からの月別・年別の訪日外客統計資料を掲載しています(こちら)。これによると、2013年の訪日外客数上位3位は韓国、中国、台湾でした。

順位 国名 累計(人)
韓国 2,456,165
台湾 2,210,821
中国 1,314,437

 答えは1です。

問2 過去時制を表す動詞の語形変化

 ここでは問われていませんが、日本語は過去時制を表す際に動詞が語形変化します。「書く」に対する「書いた」、「脱ぐ」に対する「脱いだ」にみられる /-ta/ と /-da/ が過去時制の接辞です。インドネシア語、韓国・朝鮮語、中国語にはこのような語形変化があるかどうかを見ていきます。

 まずインドネシア語ですが、インドネシア語は時制を表す動詞の語形変化はありません。Saya は「私」、makan は「食べる」、nasi は「ご飯」です。sudah は「すでに」「もう」という意味の副詞なので、動詞の語形変化ではなく、副詞によって時制を表しています。(1)の文は<現在>でも<未来>でも<過去>にでもなれますが、時間を表す語や文脈に頼ることで時が分かります。

 (1) Saya makan nasi.
 (2) Saya sudah makan nasi. (私はご飯を食べた)

 次に韓国語。苏・兰(2015: 62)には次のように書かれているので、韓国語は動詞の語形変化で時制を表します。
 参考文献:苏茜茜・兰媛媛(2015)『韩语入门王』62頁.北京:中译出版社

 韩语的过去时,要在谓词词干后加上过去时制词尾 ”았,었,였“ 这样来表示。使用方法分别为: 当谓词词干末音节的元音为 ”아,오“ 时,后面加 ”았“ ; 当谓词词干末音节为 ”아,오“ 以外的其他音节时,后面加 ”었“; 当谓词词干末音节为 ”하“ 时,后面加 ”였“ 。
 (韓国語の過去は、動詞語幹の後ろに過去時制接辞「았,었,였」をつけて表す。それらの使い分けは、動詞語幹末尾音が「아,오」のときは後ろに「았」をつけ、動詞語幹末尾音が「아,오」以外のときは後ろに「었」をつける。動詞語幹末尾音が「하」のときは後ろに「였」をつける。)

 最後に中国語ですが、中国語は語形変化しません。動詞「吃」の後ろに「了」をつけることで過去を表します。

 (3) 我吃饭。  (私はご飯を食べる)
 (4) 我吃饭了。 (私はご飯を食べた)

 まとめると、インドネシア語は語形変化せず、韓国・朝鮮語は語形変化し、中国語はしない
 答えは4です。

問3 日本語指導が必要な外国人児童生徒への言語支援

 2014月1日に学校教育法施行規則の一部を改正する省令等が施行されました。
 参考:学校教育法施行規則の一部を改正する省令等の施行について(通知)

 この改正によって、「海外から帰国した児童生徒や外国人児童生徒,その他主たる家庭内言語が外国語であるなど日本語以外を使用する生活歴がある児童生徒のうち,学校生活を送るとともに教科等の学習活動に取り組むために必要な日本語の能力が十分でないもの」を対象に特別の教育課程を実施できるようになりました。特別の教育課程では、日本語の能力に応じた特別の指導(日本語指導)が行われます。

 答えは3です。

問4 ポルトガル語・スペイン語を母語とする児童生徒数の増加

 1990年6月の出入国管理及び難民認定法の改正施行に伴い、「定住者」の在留資格が創設されたことで日系三世までの就労が可能となり、ポルトガル語・スペイン語を母語とする日系人の来日が増えました。
 答えは1です。

問5 日本語教育の推進

 詳しくは『日本語教育の推進に当たっての主な論点に関する意見の整理について(報告)』を参考にしてください。

選択肢1

 76ページにはこのような記述があります。

 カリキュラム案等の活用について,研修を実施したり,モデルを作成したりするほか,カリキュラム案等について指導する人材の確保や生活者事業を通して広く活用してもらうことや,コーディネーターによる日本語教育実施団体へのフォローなど多面的に検討を行っていく必要があるのではないか。その際,カリキュラム案等の活用状況や改善に関する希望について継続的に実態把握を行うことが必要である。
 また,カリキュラム案等の活用のターゲット(対象や活用の仕方等)を明確にする必要があるのではないか。その上で,その内容や示し方等の改善について検討することが必要ではないか。

選択肢2

 102ページにはこのような記述があります。

 地域により日本語教室の開設状況や人材確保の状況は大きく異なる。人材について,ボランティアの果たす役割は大きいが,高齢化等の理由により,確保が困難なところが出てきており,教える側に若い人や外国人などが参加し,継続的に日本語教育を行えるように検討することが求められる。また,ボランティアとして日本語指導やコーディネートに関わる人の知識や経験,属性等は多様であるが,実態の把握,整理を行った上で,その役割や待遇,配置などについて検討が必要ではないか。

選択肢3

 59ページにはこのような記述があります。

 外国人の定住化が進んだことを受け,来日当初の生活に必要な日本語に加え,読み書きや子供の教育に関わるための日本語や就労のための日本語など,よりレベルの高いものが求められるようになっている。しかし,地域における日本語教育では来日当初の生活に必要な日本語や初級段階の日本語学習機会の提供にとどまっていることが多いのではないか。

選択肢4

 82ページにはこのような記述があります。

 地域における日本語教育において,外国人がどのようなニーズを持っているかということを踏まえた上で,日本語教育に関する人材に求められる内容について整理することが必要である。
 また,実態として日本語教育に関する人材の基準は多様であり,地域によって日本語教室やそこで日本語を教える者,コーディネーターの捉え方は大きく異なるが,地域における日本語教育に関する新たな資格を設定することは適切か,さらに,ボランティア(日本語教育能力検定試験の合格者や大学で日本語教育について学んだ者等も含む)が大きな役割を担っている現状に照らして一定の線引きを行うことは,問題がないか検討が必要である。
 その上で,新たな資格を作るのがよいか,それとも既にあるものをより充実したり,活用したりするのがよいか検討が必要である。仮に新たな資格を作るとなった場合は,実施者についての検討が必要である。

 コーディネーターについて触れてはいますが、コーディネーターの資格を設定する話はありません。

 答えは4です。




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