平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説

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平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説

問1 名詞修飾表現における内の関係/外の関係

 内の関係外の関係については、詳しくはリンク先をご覧ください。簡単に言うと、名詞修飾節内の述語と被修飾名詞の間に格関係がある場合は内の関係、無い場合は外の関係です。

選択肢1

 「政府の中途半端な景気対策を批判する声」のうち、名詞修飾節内の述語「批判する」と被修飾名詞「声」の間には格関係がないので外の関係です。

選択肢2

 「留学生のキムさんが昨夜訪れたレストラン」のうち、名詞修飾節内の述語「訪れた」と被修飾名詞「レストラン」の間にはヲ格の関係があります。だから「留学生のキムさんは昨夜レストランを訪れた」と言い換えることができます。これは内の関係。

選択肢3

 「洋子と湘南まで海水浴に行った日曜日」のうち、名詞修飾節内の述語「行った」と被修飾名詞「日曜日」の間にはニ格ないしゼロ格の関係があります。だから「洋子は日曜日に湘南まで海水浴に行った」と言い換えることができます。これは内の関係。

選択肢4

 「個人情報流出問題について社長が行った会見」のうち、名詞修飾節内の述語「行った」と被修飾名詞「会見」の間にはヲ格の関係があります。だから「社長は個人情報流出問題について会見を行った」と言い換えることができます。これは内の関係。

 1は外の関係、2、3、4は内の関係。
 答えは1です。

問2 「という」が挿入できる場合

 外の関係において、名詞修飾節を構成するために「という」が名詞修飾節と被修飾名詞の間に挿入される場合とされない場合があります。

選択肢1

 (1) 【彼女が複数の男と関係を持っているという噂】を耳に挟んだ。

 「という」を挿入するほうが自然。この選択肢は間違いです。

選択肢2

 (2) 【先生の「授業中は静かにしろ」という注意】で学生は静まりかえった。

 「という」を挿入するほうが自然だからこの選択肢は間違い。

選択肢3

 (3) 【他人に迷惑をかけてはいけないという考え】があります。

 「という」を挿入したほうが自然なのでこれが答え。

選択肢4

 (4) 【キッチンから母が作るカレーの匂い】がする。

 「という」を挿入しないほうが自然なのでこの選択肢は間違い。

 答えは3です。

問3 アスペクト表現

 アスペクトとは、述語が表す事態の完成度を表す文法カテゴリーで、動作動詞が表す動きの局面を限定します。例えば「食べる」の後ろに「~ている」をつけた「食べている」はその動作が進行中の局面を表し、「~終わったばかり」をつけてばその動作の完了直後を表します。こんな感じで動きの局面を表す「ところ」を探しましょう

 1 逆接を表す文法「~たところで
 2 仮定の「ところ」
 3 場面や瞬間を表す「ところ」
 4 「つける」という動作の完了直後を表す「ところ」

 答えは4です。

問4 談話上の効果

 (1) 「生徒達は入学したばかりで緊張している。教室にはいると、(その生徒達が)私の方を一斉に見た」
 (2) 「教室に入ると、入学したばかりで緊張している生徒達が、私の方を一斉に見た」

 (2)の表現は(1)と比べてどんな談話上の効果があるか、という問題です。

選択肢1

 (1)の前件は「生徒達」を主語にしているので視点は「生徒達」。後件の主節も「生徒達」を主語にしているのでやっぱり視点は「生徒達」です。
 一方(2)は、前件の条件節は「私」が主語なので「私」視点ですが、後件の主節は「入学したばかりで緊張している生徒達」が主語で視点を「生徒達」においています。
 語りの視点を「生徒達」に固定しているのは(1)なので、この選択肢は間違い。

選択肢2

 (1)は「生徒達は入学したばかりで緊張している。」という一文で生徒が緊張しているという新情報を提示していますが、(2)の文では名詞修飾節「入学したばかりで緊張している」が「生徒達」を修飾する構造で、生徒が緊張しているという情報を旧情報のように扱っています。これにより(2)は後件の「私の方を一斉に見た」が強調されます。この選択肢が答え。

選択肢3

 (2)の文は視点が「私」なので主観的です。この点でこの選択肢は間違い。

選択肢4

 (1)は「生徒達は入学したばかりで緊張している。」と「教室にはいると、(その生徒達が)私の方を一斉に見た」の2つの文から構成されてます。節の主従関係を断ち切り、どちらの出来事にも焦点を当てた言い方をしているのは(1)です。

 答えは2

問5 名詞修飾表現のみで一文を構成する特殊な文体

 「ゴールを決めた中村選手」のような文は連体修飾節(名詞修飾節)と呼ばれるものです。

選択肢1

 例えばこういう写真の内容を描写するときは「海にぽつんと浮かぶ孤島」みたいな名詞修飾表現を用いることが多いです。「この孤島は海にぽつんを浮かんでいます」と表現したらちょっと違和感。写真のキャプションなどでは名詞修飾表現だけで紹介することが多いです。この選択肢は正しい。

選択肢2

 これも正しい。例えばドラマなどで新しい登場人物が出てきたとき、「若くして起業した天才」みたいに説明することがあります。

選択肢3

 報道番組の事件の発生を伝える場面、ニュースを読み上げるときは「です」「ます」を使うのでこの選択肢は間違いです。

選択肢4

 ト書きとは、脚本や台本などにおいて俳優が声に出す台詞以外の部分のことです。

 田中一郎:なんでそんなことするんだよ! (徐々に強まる声量で)

 この( )の中に書いてるのがト書き。名詞修飾表現で書かれることが多そうです。

 よって答えは3です。

 




コメント

コメント一覧 (3件)

  • 丁寧な解説に感謝しています。

    問2
    選択肢4
     【キッチンから母が作るカレーの匂い】がする。
     「という」を挿入しないほうが自然

     したがって答えは3です。

    理由が理解出来ません💧
    4じゃないんでしょうか?(正答は3になっていますが)

  • >ヤマグチさん
    コメントありがとうございます! お答えいたします。
    問2選択肢4では、「音、味、におい」のような感覚を表す名詞が主名詞になる場合のことを述べていますので、「キッチンから母が作るカレーの匂いがする」という例文を挙げました。選択肢4では「という」を挿入したほうが自然になると書かれていますが、「キッチンから母が作るカレーという匂いがする」とすると明らかに不自然です。したがって選択肢4は間違いということになります。

    • 早々に丁寧なお返事ありがとうございます。
      そうですね!

      「した方が」「しない方が」の選択肢のミスリードに釣られてしまい、
      理解不能に至っていたようです。
      お手数おかけしてすみませんでした。

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