平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説
(12)動詞によって変わる語順
選択肢1
「借りる」は通常は「~が~に」の語順です。「~に~が」だと有標の文脈で使われる言い方になります。この選択肢は間違い。
(1) 彼が 彼女に お金を 借りる。 <~が~に>
(2) 彼女に 彼が お金を 借りる。 <~に~が>
選択肢2
「変える」は普通「~を~に」の語順。逆にするとかなり厳しい。有標の文脈であっても無理かも。たぶん変化元から変化先への変化を表す動詞なので、変化元を先に示さないといけないんだと思う。この選択肢が答え。
(3) 悔しさを 力に 変える。 <~を~に>
(4)✕力に 悔しさを 変える。 <~に~を>
選択肢3
「行く」は普通「~が~に」の語順をとります。有標の文脈なら「~に~が」でもいけます。この選択肢は間違い。
(5) 息子が 学校に 行く。 <~が~に>
(6) 学校に 息子が 行く。 <~に~が>
選択肢4
「壊す」は「~が~を」の語順が普通。有標の文脈なら「~を~が」でもいけるけど。
(7) 子供が 窓ガラスを 壊す。 <~が~を>
(8) 窓ガラスを 子供が 壊す。 <~を~が>
答えは2です。
(13)副詞的な要素の語順
アスペクト、テンス、モダリティを表す副詞について、その語順はどうなるかという問題です。
文章中に「どうやら」「よく」「いつも」が挙げられていますが、「どうやら」はモダリティを表す副詞で、「よく」は反復のアスペクト、「いつも」は習慣のアスペクトだと思うんですけど… 時制を超越したものとしてテンスを表す副詞と考えるのかな? だと仮定して、「彼はラーメンを食べる」に異なる語順で接続してみましょう。全部で6通りあります。
(A) △彼はどうやらよくいつもラーメンを食べる。 <どうやら-よく-いつも>
(B) 〇彼はどうやらいつもよくラーメンを食べる。 <どうやら-いつも-よく>
(C) ✕彼はよくどうやらいつもラーメンを食べる。 <よく-どうやら-いつも>
(D) ✕彼はよくいつもどうやらラーメンを食べる。 <よく-いつも-どうやら>
(E) △彼はいつもどうやらよくラーメンを食べる。 <いつも-どうやら-よく>
(F) ✕彼はいつもよくどうやらラーメンを食べる。 <いつも-よく-どうやら>
私の内省だと、「どうやら-いつも-よく」の順番が最もしっくりと来ます。これはモダリティ、テンス、アスペクトの順番。
だから答えは4です。
(14)数量詞の位置で変わる意味
文章中には「数量詞は名詞を修飾する場合と、動詞を修飾する場合がある」と書かれています。各選択肢に含まれる数量詞の修飾する対象を変えてみて、意味が変わるかどうかを見てみます。
選択肢1
(1) 2000ccの車を買った。 <名詞を修飾>
(2)?車を2000cc買った。 <動詞を修飾>
動詞を修飾する形に変えてみると(2)になります。意味が変わるどころか、意味が分からなくなりました。
選択肢2
(3) 50段の階段を上った。 <名詞を修飾>
(4) 階段を50段上った。 <動詞を修飾>
動詞を修飾する形に変えてみると(4)になります。前者は50段しかない階段を上りきったことを表すのに対し、後者は50段だけ上ったものの、上りきったのかどうかは分かりません。これは意味が変わっていると言えます。
選択肢3
(5) 3cmの息子の身長が伸びた。 <名詞を修飾>
(6) 息子の身長が3cm伸びた。 <動詞を修飾>
「3cm」で名詞を修飾すると(5)になります。ちょっと聞き馴染みはないけど文法的にも間違ってるとは言い切れないし、意味も変わらず、理解できます。
選択肢4
(7) 彼は5人の子どもがいる。 <名詞を修飾>
(8) 彼は子どもが5人いる。 <動詞を修飾>
名詞を修飾する形に変えてみると(7)になります。意味は変わりませんでした。
よって答えは2です。
(15)基本語順の特徴
選択肢1
(1)a 風邪をひきました。だから明日は休みます。
b 風邪をひきました。明日は休みます。だから。
(2)a いいえ、違います。
b 違います、いいえ。
上記の例文では、接続表現「だから」と応答表現「いいえ」の語順を変えてみています。(1b)(2b)を見たらわかるとおり、これらは語順を変えることはできないようです。この選択肢は間違い。
選択肢2
指示表現を伴う名詞句ということで、例えば「この本」を例にして、動詞「返す」で考えてみます。「返す」は「~が~を~に」が基本語順なので、(3)の言い方が無標の語順です。選択肢によると、指示表現を伴う名詞句「この本」があると、これは基本語順で現れる位置よりも後に位置するらしいけど…
(3) 私は この本を 彼に 返す。 <基本語順>
(4) 私は 彼に この本を 返す。 <基本語順よりも後>
(5) この本を 私は 彼に 返す。 <基本語順よりも前>
(6) この本を 彼に 私は 返す。 <基本語順よりも前>
結果としては基本語順より前だろうが後ろだろうがどれでも良さそうです。この選択肢は間違い。
選択肢3
「授業とは関係のない」「日常生活の」「長い」という修飾部が同じ名詞「話」を修飾している文を作ってみます。
(7)〇授業とは関係のない 日常生活の 長い 話を聞かされた。
(8) 授業とは関係のない 長い 日常生活の 話を聞かされた。
(9) 日常生活の 授業とは関係のない 長い 話を聞かされた。
(10) 日常生活の 長い 授業とは関係のない 話を聞かされた。
(11) 長い 授業とは関係のない 日常生活の 話を聞かされた。
(12) 長い 日常生活の 授業とは関係のない 話を聞かされた。
どれが一番自然か考えると、私の内省では(7)が一番よさそう。選択肢が述べてるように、長い修飾部から順番に来るのが自然になりやすいようです。この選択肢が答え。
選択肢4
(13)〇彼は 友人と 公園へ 行きます。
(14)✕友人と 彼は 公園へ 行きます。
(15)✕友人と 公園へ 彼は 行きます。
「彼は」という主題化された要素の位置を色々変えてみましたが、やっぱり文頭に来るのが最も自然です。述語の直前に来ている(15)はちょっときつい。意味は分かるけど不自然。この選択肢は間違いです。
答えは3です。
コメント
コメント一覧 (8件)
C13番例文
どうやら彼は、さっき、コーヒーを飲んでゆっくりしていたらしい。
は、どうでしょうか?
>匿名さん
ご協力ありがとうございます!
「どうやら」がモダリティ的副詞、「さっき」がテンス的副詞ですね。「ゆっくり」は様態副詞なんですが、これがアスペクト的副詞ということなんでしょうかね… 私も本当に本当に分かってません。
c13例文 どうやらマツコは、いつも徐々に、オネエ言葉になるらしい。
どうでしょうか? どうやら、徐々にいつも、オネエ言葉になるらしい。より自然なような。。。
>くぅさん
コメントありがとうございます!
「いつも」と「じょじょに」を組み合わせるとよかったんですね。私はずっと「よく」と「じょじょに」で考えていたのでうまくいかなかったみたいです。
例文を拝借して解説を更新したいと思います。ご協力ありがとうございました。
すみません問13ですが、
「よく」「いつも」は時間や頻度を表す副詞なのでテンス的な副詞です。というのはどうしてでしょうか?
副詞なので修飾する動詞を考えると、
いつもーする、している
よくーする、している
どちらもテンスもアスペクト的要素もあると思いました。
>Saekaさん
コメントありがとうございます。この問題の「~的副詞」について書かれている書籍等を探している段階です。
はっきりと分かりましたら更新したいと思います。試験に間に合わずにすみません。
(14)について教えて下さい。
3息子の身長が3cm伸びた。
「3cm伸びた」は動詞を修飾していますが
名詞を修飾する文にした場合、「3cmの身長が伸びた」になるのではないでしょうか。
となるともともと身長が3cmだったの?という変な意味になるのですが。。
ご教示頂けますか。よろしくお願いいたします。
私もそう思いました!
一寸法師の話になっちゃうなあ☺️なんて思って解きました😂