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平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(9)解説

平成27年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題1(9)解説

(9)動詞の項の数

 動詞の項とは、文脈に依存せず、その動詞が表す動き・作用・状態などを描写するために必要な補語のことです。必須補語などとも呼ばれます。この説明だと何が何だかだと思うので、「殴る」を例に簡単に説明します。

 (1)      殴る。
 (2)私が    殴る。
 (3)私が 彼を 殴る。

 (1)のような文は情報が不足しています。「殴る」という動詞が表す動きを表すには、誰が殴ったか、誰を殴ったかの情報が必要です。それがないから不完全だと感じるわけです。(2)の文もまた不完全です。誰が殴ったかの情報は文中に明示されていますが、誰を殴ったかは分かりません。(3)になってやっと情報が充足します。誰が殴ったかも分かるし、誰を殴ったかも分かります。つまり、「殴る」という動詞は「誰が殴ったか」という情報と「誰を殴ったか」という情報が最低限必要で、これらを表すために日本語では「~が」と「~を」を使います。(3)の「私が」が1つ目の項、「彼を」が2つ目の項です。「殴る」はこの2つの項を必要とする動詞だから、一般に二項動詞と呼ばれます

 こうした操作を各選択肢にかましてみます。

 1 二項動詞:AがBにぶつかる
 2 二項動詞:AがBを食べる
 3 二項動詞:AがBに刃向かう
 4 三項動詞:AがBにCを借りる
 5 二項動詞:AがBと結婚する

 選択肢4の「借りる」だけが三項動詞で、それ以外は二項動詞でした。
 だから答えは4です。




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