平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題9解説
問1 ステレオタイプ
ステレオタイプ(stereotype)とは、「ある特定の集団に対して人々がもっている信念を、その集団に所属しているすべての個人に共通の特徴であると考える傾向」(藤本・東 2004: 7)のことです。
1 一度ステレオタイプが定着すると、情報が与えられても修正・変化されにくくなります。
2 逆です。自分が所属する集団以外の集団に対するステレオタイプは単純になりがちです。
3 ステレオタイプには肯定的なものも含まれます。
4 ステレオタイプにとらわれないで人を見ようと意識することがかえってステレオタイプを強めることもあります。
答えは4です。
《参考文献》
藤本忠明・東正訓(2004)『ワークショップ人間関係の心理学』7頁.ナカニシヤ出版
問2 偏見
藤本・東(2004: 7)によると、ステレオタイプのうち、望ましくないステレオタイプが憎悪や敵意の感情と結びついている場合、それを「偏見(prejudice)」と呼ぶそうです。
1 正しいです。あまり親密じゃないなら偏見が強まるかも。
2 偏見は、認知的な要素よりも感情的な要素の方が強いです。
3 正しいです。そもそもステレオタイプがあまり相手を知らないことに起因していますね。
4 正しいです。そういうこともある。
答えは2です。
《参考文献》
藤本忠明・東正訓(2004)『ワークショップ人間関係の心理学』7頁.ナカニシヤ出版
問3 偏見と差別
参考文献は見つからないのですが…
偏見が具体的な行動を伴うようになると「差別」というようです。
よって ア に入るものは 偏見 、 イ に入るものは 差別 。
答えは2です。
問4 ステレオタイプの形成・維持
選択肢1
逆です。一度ステレオタイプが形成されたら、それとは一致しない情報は記憶されにくくなります。
選択肢2
逆です。少数派の人は目立つ行動をすると、その行動のもととなる原因が集団全体の特徴のように思われやすいです。
選択肢3
「中国人は卓球がうまい」というステレオタイプを持つ人が中国人と話をして、その中国人が「私、卓球やったことあります」と言うと「やっぱりそうなのか」と思うでしょう。自分のステレオタイプと目の前の情報が一致することでステレオタイプは維持されやすくなります。「やったことがある」と言うだけではうまいかどうか分かりません。ただ「卓球」という言葉が出てきただけでステレオタイプが活性化していまいます。
選択肢4
逆です。勢力者は非勢力者に注意を向けやすいので、非勢力者のステレオタイプを形成しやすくなります。
答えは3です。
コメント
コメント一覧 (3件)
問1の選択肢4「ステレオタイプに基づく反応を避けようとする」という意味がよくわかりません。自分で、ステレオタイプに人を見ないようにする、という事ですか? 努力しないより、努力したほうがいいように思うのですけど、意識しすぎて…という事なのでしょうか。
>町川さん
お答えします。私の理解ですが…
例えば「プログラマーは論理的で、感情的な話ができない」というステレオタイプを持っている人がいるとします。プログラミングには論理的思考が必要なので、このようなステレオタイプが形成されてもおかしくありません。
この時、目の前にプログラマーがいたら「この人はもしかしたら感情的な話ができないかもしれない」という考えが出てきて、その尺度で相手を測ろうとします。これが「反応」です。
しかしステレオタイプは必ずしも正しいものではないと客観的に認識できている場合は、意識的にその「反応」を避けようとします。「プログラマーといっても感情的な話ができる人もいるはずだ」みたいなことです。
ところが、こうやって考えるとかえって相手の論理的な面に目が行ってしまい(意識しすぎて)、「プログラマー」と「論理的」の結びつきを強くしてしまいます。これが選択肢4のステレオタイプ化の促進です。
具体的な例を出していただいて、よくわかりました。
ありがとうございます。