平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3C解説
(11)「極限」を表す取り立て助詞
文中にない情報を暗示して意味を加える助詞を取り立て助詞と言います。「極限」を表す取り立て助詞は、例えば「水さえ飲めない」のような「さえ」で、これは「水」と同類のもの、お茶、コーヒー、コーラ、ビールなどの中で「水」が最も極端であることを表します。具体的には「水」のように最も基本的な飲み物でさえも飲めない、という意味です。極限の意味を持った取り立て助詞を例文を作って探します。
選択肢1
程度「くらい」:野球はできないが、キャッチボールくらいはできる。
累加「など」:チョコなどの甘い物が好き。
極限「まで」:部屋の隅まで掃除する。
選択肢2
累加「なんか」:チョコなんかの甘いものが好き。
程度「くらい」:野球はできないが、キャッチボールくらいはできる。
限定「ばかり」:チョコばかり食べる。
選択肢3
特立「こそ」:彼こそ英雄だ。
極限「さえ」:子どもさえもできる。
限定「ばかり」:チョコばかり食べる。
選択肢4
極限「さえ」:子供さえもできる。
極限「でも」:子供でもできる。
極限「まで」:部屋の隅まで掃除する。
選択肢4は極限の取り立て助詞の組み合わせです。「子供さえもできる」「子供でもできる」は、最もできないと思われる存在の「子供」を極限の存在として扱って、そんな存在でもできるという意味を表します。「部屋の隅まで掃除する」も「部屋の隅」という通常掃除が行き届かない極限の場所まで掃除する、という意味です。
だから答えは4。
(12)格助詞を伴う取り立て助詞で、基本的に明示されない格助詞
選択肢には4つの格助詞「が」「で」「から」「を」が出てきてます。これらの格助詞の後ろに取り立て助詞をつけられるかどうか例文を作って検証してみます。取り立て助詞は何でも良いですけど、ここでは「さえ」を使ってみます。
(1)a 〇彼が分かっている。
b ✕彼がさえ分かっている。
(2)a 〇外でゲームする。
b 〇外でさえゲームする。
(3)a 〇親から怒られる。
b 〇親からさえ怒られる。
(4)a 〇ケーキを食べる。
b ✕ケーキをさえ食べる。
問題文にある”格助詞を伴う要素”とは、(1)~(4)の「彼が」「外で」「親から」「ケーキを」を指します。これを取り立て助詞で取り立てればいいので、格助詞の後ろに「さえ」をつけてみました。すると、格助詞「が」と「を」の後ろには「さえ」をつけられませんでした。もし正しく言うなら、「彼さえ分かっている」「ケーキさえ食べる」みたいに格助詞を消しちゃわないといけません。
つまり、格助詞「が」「を」を伴う要素を取り立て助詞で取り立てる場合は、「が」「を」が基本的に明示されません。
だから答えは4です。
(13)取り立て助詞の後に格助詞が現れる場合
通常は「格助詞+取り立て助詞」の順番ですが、逆になることもあります。
(1)a 〇家でしか勉強しない。 <格助詞+取り立て助詞>
b ✕家しかで勉強しない。 <取り立て助詞+格助詞>
(2)a 〇家でも勉強する。 <格助詞+取り立て助詞>
b ✕家もで勉強する。 <取り立て助詞+格助詞>
(3)a 〇家でだけ勉強する。 <格助詞+取り立て助詞>
b 〇家だけで勉強する。 <取り立て助詞+格助詞>
(4)a 〇家でなんて勉強しない。 <格助詞+取り立て助詞>
b ✕家なんてで勉強しない。 <取り立て助詞+格助詞>
取り立て助詞「だけ」に格助詞がつく場合は、前後どちらでも大丈夫でした。
答えは3です。
(14)格助詞としても取り立て助詞としても働く場合
格助詞には終点を表す「まで」があり、取り立て助詞も極限を表す「まで」があります。これを見極める問題です。
●意味的に判別するなら、格助詞「まで」は述語の終点を表し、取り立て助詞の「まで」は極限を表します。
●統語的に判別するなら、格助詞「まで」の前は必ず名詞ですが、取り立て助詞の「まで」の前は名詞以外もありえます。
1 睡眠時間以外の時間も活用していることを表してるので、文中にない情報を暗示する取り立て助詞
2 バイト代以外も取り上げられたことを表してるので、文中にない情報を暗示する取り立て助詞
3 病気ではないうちは頑張るという意味なので、文中にない情報を暗示する取り立て助詞
4 「頑張る」の終点が「制限時間ぎりぎり」だから格助詞の「まで」
答えは4です。
(15)連体修飾節内の要素
「連体修飾節(名詞修飾節)」と書いてありますので、まず各選択肢の主節と従属節を見極めましょう。
選択肢1
名詞修飾節:関係者以外は入れない
主節:部屋にうっかり入ってしまった
名詞修飾節内に「は」がありますので、この選択肢が答え。
選択肢2
名詞修飾節:おじいちゃんにもらった
主節:息子はぬいぐるみを離さない
名詞修飾節はありますが、名詞修飾節内に「は」がありません。
選択肢3
副詞節:宵っぱりで
主節:私は朝なかなか起きられないことが多い
「宵っぱりで」は主節の理由・原因を表すので副詞節です。
この文にはそもそも名詞修飾節がないので間違い。
選択肢4
引用節:お得な店だと
名詞修飾節:料理が安くておいしい
主節:ここは評判です。
名詞修飾節はありますが、名詞修飾節内に「は」がありません。
答えは1です。
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