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平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説

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平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説

問1 会話の構造や流れ

 この問題文は談話や会話分析についてですので、結論から言うと答えは2です。

 二人以上が参加する会話において、話し手が発話を始めてからその話者が交替するまでの発話のひとまとまりをターンと呼びます。会話では誰かが話し終わったら別の人が話し、また別の人が話し… という話者の交替が順番に起きます。この現象はターンテイキングと言います。ターンテイキングは文の終わりやイントネーションの変化、相槌、フィラー、ポーズ、ジェスチャー、アイコンタクト、声質、ディスコースマーカー、オーバーラップなどがきっかけとなって規則的に起き、その話者が交替する可能性がある時点のことをTRP(Transition relevance place)と言います。
 選択肢2の「言いよどんでいるとき」もTRPです。相手の言いたいことを察してターンテイキングが起こります。そうやって会話の構造や流れは作り出されています。

 したがって答えは2です。

 ちなみに選択肢1は敬語などの話で、この文章の内容とは合いません。
 選択肢3はグライスの協調の原理だと思います。文章中に「会話の構造や流れはお互いのやり取りを通じて作り出す」とありますが、協調の原理は会話を円滑に進めるための基準を示したもので、談話の作られ方を述べたものではありません。
 選択肢4は相手に伝わるような話し方をすることについて述べてます。談話の作られ方とは関係なさそうです。

問2 ターン・テイキング

 1 イメージ・スキーマ
 「『中』を絵で説明してください」と言われたら、大きな枠の中に〇を書いて「これが『中』です」と説明するはず。私たちはだいたい共通してそのような絵を描きます。
 でもでも、一言に「中」といってもいろんな使い方があります。箱の中、ペットボトルの中、水槽の中のように絵にしやすいものもあれば、夢の中、やり取りの中、コロナの中、雨の中など、絵にしにくいものもあります。これらは全部なんで「中」という言葉が使われているのかというと、認知言語学ではこれら全ての共通性を取り出しているからと考えます。大きさ、材料などは違いますが、共通しただいたいの位置関係のみを取り出し、私たちはそれを「中」と呼んでいます。夢と現実の間に境界線を引いて、夢という枠の内側が「夢の中」であると、やり取りしているときという時間的な枠の内側だから「やり取りの中」であると認識しているということです。
 共通性を取り出し、イメージとして貯えたものをイメージ・スキーマと言います。

 2 コード・スイッチング
 相手や場面、話題に応じて言語そのもの、あるいは同一言語内の言語変種を使い分けることです。

 3 ターン・テイキング
 会話では誰かが話し終わったら別の人が話し、また別の人が話し… という話者交替の現象のことです。

 4 発語行為(スピーチ・アクト)
 オースティン(J.L.Austin)が提唱した発話行為理論のことかな?

 談話について話しているので、関連する用語は3だけです。
 したがって答えは3です。

問3 前終結

 談話は開始部、主要部、終結部に分けられます。電話の談話、誘いの談話など目的によってその構成は変わりますが、ここでは対人場面での一般的な談話構成を示します。

開始部 会話の最も初めに位置する部分で、対人関係を円滑にするためのとりとめのない話題が扱われる。挨拶、天気の話、健康の話、最近の話、質問、自己開示など。
主要部 開始部の後に位置し、談話全体の中で核となる話題が提示される部分。話題転換を表す「そういえば」や「ところで」をきっかけに主要部に移行することもあれば、開始部での話題から自然に移行することもある。
終結部 前終結 会話を終結させることを、相手が同意するかどうか確認する手続きが行われる部分。同意しない場合は話すべき残された話題を提示し、同意した場合は最終交換へ移行する。
最終交換
最終発話交換
(終結)
異なる話者によって対となる発話がなされる手続きが行われる部分。ここでは会話が終結する。

 前終結では、普通直接言いませんが「もう話すことがないので終わりましょう」みたいなことを暗示して、相手がそれに同意するかどうかの手続きが行われます。例えば話したいことが大体終わって「じゃあそういうことでよろしくお願いします」と言った後に、相手が「はい、お願いします」と返したら、それは会話を終了させることに同意したということです。相手が「あっ、それから…」とまだ話したいことが残っていた場合は会話を終わらせることに同意しなかったことになり、残っている話を継続します。

 したがって答えは2です。

問4 学生の正しい発話・行動

 この学生は話を一気に切り上げて部屋を出たので、失礼な印象を与えています。一気に切り上げないような発話・行動にすべきです。

 1 ポーズを置くことで、自然な切り上げができます。
 2 正しいです。一言増やすと一気に切り上げる点が改善されます。
 3 正しいです。相手の発話を待つと一気に切り上げないで済みます。
 4 謙譲語にしたところで、一気に切り上げたら失礼です。

 したがって答えは4です。

問5 会話を相互行為として捉えた教育

 下線部C「会話を相互行為として捉えた教育」が重要です。会話参与者がお互いに自然な会話ができるかどうか、そういう活動・教育をすべきだと言ってます。

 1 文型を使った応答練習は自然な会話とは言えません。自然な会話ができるような場面を作るべきです。
 2 自由会話なので、自然な会話です!
 3 ペアワークの過程で学習者間で自然な会話が生まれます!
 4 相づちやフィラーをロールプレイで使わせるのは自然な会話を身につけさせるのに有効です!

 したがって答えは1です。




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