平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説
問1 会話の構造や流れ
この問題は会話分析の話をしています。なので会話分析に関する記述を選択肢から探しましょう。
選択肢1
日本語においては、目下が目上に対して敬語を用いることが要求され、敬語を用いることで相手に不快な思いや違和感を与えずに済みます。なのでこの選択肢は適用なように見えますが、会話分析では敬語の使い方などは論じられません。この選択肢は不適当です。
選択肢2
相手が言いよどんでいるときは、もう片方がターンを奪って相手の言おうとしていることを予測して代わりに言ったりするのは日本語でよく見られます。このような会話の流れは会話分析の対象なので、この選択肢が答え。
選択肢3
グライスの協調の原理の内容に似ている、というかほとんど同じ。これは会話分析ではなく語用論の領域だからこの選択肢は不適当。
選択肢4
やさしい日本語のような話をしています。相手に伝わりやすい表現は何かという観点で述べています。これは会話分析とは関係ないので不適当。
答えは2です。
問2 ターン・テイキング
A:今日はありがとうございました。
B:来ていただいてよかったです。
A:いえ、こちらこそ。楽しかったです。
B:よかったです。また来てくださいね。
A:はいぜひ、今日はありがとうございました。
B:お疲れ様でした。
A:お疲れ様でした。
適当に作った例ですけど、日本語の会話の終わりはこんな感じですよね。こんな会話でもちゃんとターンのやり取りをしてお互い順番に話をし、会話の流れを作って終わらせています。この問題は会話分析に関する問題なので、 ア に入るのは ターン・テイキング 。
答えは3です。
問3 前終結
問題文によると、会話の終わりは「前終結」の段階と「終結」の段階の2つに分けられるそうです。前終結はどんな特徴があるでしょうか。
選択肢1
「もう話をしないでください」みたいなことを言って会話の終結に持っていくのは日本語ではありえないのでこの選択肢は不適当。
選択肢2
A:今日はありがとうございました。
B:来ていただいてよかったです。
A:いえ、こちらこそ。楽しかったです。
B:よかったです。また来てくださいね。
A:はいぜひ、今日はありがとうございました。
B:お疲れ様でした。
A:お疲れ様でした。
問2で挙げた例ですが、「お疲れ様でした」の終結の前は特に当たり障りのない話が並んでいます。ここでは新しい話題を導入しないような、はっきり言ったら薄っぺらいやりとりが続いてます。こうすると話が広がらないので終結に向かいやすくなります。この選択肢は適当。
選択肢3
会話の終わりに、相手に「何か話してください」みたいな提案をするのは日本語ではありえないです。仮にその提案を受け入れたら新しい話が始まってしまって終結に向かわなくなってしまいます。この選択肢は間違い。
選択肢4
「会話は終わりました」みたいに終結したことを明示的に言うのは日本語ではないです。この選択肢は間違い。
答えは2です。
問4 学生の正しい発話・行動
問題文の会話例では、学生が突然「はいありがとうございます、失礼します」と急に終結の段階でいう発話をしました。できれば「申し訳ありませんでした。無理を言って」や「申し訳ありません。どうかよろしくお願いします」みたいなクッションを入れてから「失礼します」と終結に繋げたほうがよさそうです。話を一気に切り上げて部屋を出たので、失礼な印象を与えてしまいました。一気に切り上げないような発話をすればいいので、そのような選択肢を探します。
1 ポーズを置くことで、自然な切り上げができます。
2 正しいです。一言増やすと一気に切り上げる点が改善されます。
3 正しいです。相手の発話を待つと一気に切り上げないで済みます。
4 謙譲語にしたところで一気に切り上げたら失礼です。
答えは4です。
問5 会話を相互行為として捉えた教育
会話は相互行為。つまり、自然なコミュニケーション。
選択肢1
文型を使った応答練習は自然な会話とは言えません。自然な会話ができるような場面を作るべきです。
選択肢2
自由会話なので自然な会話です! これは適当。
選択肢3
ペアワークの過程で学習者間で自然な会話が生まれそうです。これも適当。
選択肢4
相づちやフィラーをロールプレイで使わせるのは自然な会話を身につけさせるのに有効です。これも適当。
答えは1です。
コメント