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【敬語練習問題】(73)「二十歳にならせていただきました」

【敬語練習問題】(73)「二十歳にならせていただきました」

「二十歳にならせていただきました」が規範的な立場から見て不適切とされる根拠として最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
 
 1 不要な使役形が含まれているから
 2 自分側の行為に対して尊敬語を用いているから
 3 誰かの許可を得て二十歳になったわけではないから
 4 行為の向かう先の人物が想定できないから











解説

 「二十歳にならせていただきました」には「~(さ)せていただく」が用いられています。この形式は「敬語の指針」の40ページによると、①相手側の許可を受けて行う場合、②その行為によって自分が恩恵を受ける事実や気持ちがある場合、の2つの条件を満たしているときに適切に感じやすいとされています。「工場を見学させていただけますか」のようなのが典型的で適切に感じられる例です。相手に見学してもいいかと許可を得て、さらに見学することで自分が恩恵を受けます。①と②のどちらも満たしているので適切に感じられます。

 しかし「二十歳にならせていただきました」は①の条件を満たしていないと思われます。誕生日が来れば誰でも自動的に20歳になるわけで、誰かの許可を得て20歳になったわけではありません。②の条件は一応満たしていると考えられます。20歳になったことで「大人になってやれることが広がった」のような何らかの恩恵を受けると考えられるからです。よって選択肢3が正しい記述です。

選択肢1

 「ニ十歳にならせていただきました」の使役形「~させる」を取り除くと「ニ十歳になっていただきました」となり、これもまた不適切。選択肢1の理由は関係ありません。

選択肢2

 「~させていただく」は自分から相手に向かう行為に用いる謙譲語Ⅰの形式です。「二十歳になる」という自分の行為に対して謙譲語Ⅰを用いています。尊敬語は用いていません。

選択肢3

 これが答え。

選択肢4

 「~させていただく」は相手に行為を許可してもらったときに使う表現です。したがって、<行為をする人>と<それを許可する人>が2人います。「ニ十歳にならせていただきました」にも<二十歳になった自分>と<「二十歳になること」を許可する人物>がいます。後者は「二十歳になる」という行為が向かう先の人物です。行為の向かう先の人物は想定されています。

 答えは3です。




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