平成２８年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題８解説

平成２８年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題８解説

問１　Ｕカーブ仮説

　上の画像がＵカーブ仮説のＵカーブ曲線。これは新しい環境下で起こる人間の心理状態の変化、異文化適応過程を表した曲線です。

選択肢１

　短期の旅行が常に楽しいと感じるのはハネムーン期しか経験しないから。よってこの選択肢は間違いです。

選択肢２

　Ｕカーブは一般にハネムーン期から不適応期を経て適応へと向かうものとされていますが、不適応期は個人によって長さが異なります。つまり、場合によっては不適応期から脱することができない場合もあります。この選択肢は間違い。

選択肢３

　正しいです。異文化と自文化が似ている場合はカルチャー・ショックがあまりなく、カルチャー・ショック期の谷が浅くなります。文化が大きく異なる場合は強いカルチャー・ショックを経験するかもしれないので、よりはっきりしたＵ字型になります。

選択肢４

　年齢や性別、性格、経験、異文化と自文化の差などによって谷の深さの変わります。この選択肢は間違い。

　答えは３です。

問２　カルチャーショック

選択肢１

　同じ言語文化圏だとしても馴染んだ土地から離れてそれまでの生活が維持できなくなったりするとカルチャー・ショックは起こります。完全な異文化に行くよりは起こりにくいとは言えますが。

選択肢２

　異文化下での生活や習慣に慣れることによって適応期に入ります。なるべく経験しないように避けると慣れることができなくなるので、逆に適応に支障をきたします。この選択肢は間違い。

選択肢３

　カルチャーショックは精神的なものもありますが、食欲低下、疲労、頭痛、睡眠不足などの身体的なものもあります。この選択肢は間違い。

選択肢４

　私たちは異文化の習慣や考え方・常識が自文化と大きくかけ離れていることにストレスを感じますが、そのストレスが蓄積したときに耐えられなくなり、不適応を起こします。この選択肢は正しいです。

　答えは４です。

問３　リエントリー・ショック

　異文化に適応した後に母文化に戻ると、異文化での様式に慣れていたためにかえって母文化に馴染めないなどの不適応を起こすことがあります。これをリエントリー・ショックと呼びます。

選択肢１

　これはリエントリー・ショックの例です。なんで私の珍しい経験気にしてくれないの！みたいな気持ちですね。私もなんとなく分かります。

選択肢２

　リエントリー・ショックの典型的な例。外国での習慣に慣れた結果、母国の習慣に不満や違和感を持つようになります。例えば中国では公共の場面で大声で話をしてたって何にも気にすることなかったのに、日本に帰った途端それがしにくくなって閉塞感を感じたりしました。

選択肢３

　自身の価値観の変化に気づいているとリエントリー・ショックは起こりにくくなります。自分自身を客観的に見れているからです。

選択肢４

　自文化を理想として見ていると、帰国してその現実に触れたときにリエントリー・ショックが起こる可能性があります。

　答えは３です。

問４　コーピング

　ストレス要因やそれがもたらす感情に働きかけてストレスを除去したり緩和したりすることをコーピングと言います。飲みに行ったり、趣味に打ち込んだりすることがコーピングにあたります。

　答えは１です。

問５　ソーシャルサポート

　社会的関係の中でやりとりされる学習者への支援のことをソーシャルサポートと言います。詳しくはリンク先をご覧ください。

選択肢１

　出身国が異なる友人からの支援もサポートになります。同じく海外から来たという共通点があるので、いろいろ話し合えることもあります。

選択肢２

　出身国が同じ友人からの支援は特にいいサポートだと思います。母国も同じ、渡航先も同じ。こんなに同じ境遇の人が近くにいると一緒に頑張ったり、支えあったりできます。　

選択肢３

　ソーシャルサポートは一般に「道具的サポート」と「情緒的サポート」に大別されます。道具的、統合的は動機づけの話。この選択肢は間違い。

選択肢４

　家族からの支援もソーシャルサポートの一種です。困ったとき電話したり、話を聞いてもらったり、立派なサポートになります。

　答えは４です。