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平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説

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平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説

(16)規範主義と記述主義

 ことばについて考えるときに、それが正しいか正しくないかの指標で捉える立場規範主義と言います。規範主義は過去のある時点の文法を「あるべき姿」として考えて、それと比較して同じ場合は正しい、違う場合は正しくない、という評価を下します。例えば「書かさせる」のようなさ入れ言葉は昔存在しなかった言い方だから間違っているというふうに捉えます。日本語教育ではこの立場で教えられることが多いです。

 規範主義に対立するものとして、言語は変化するものであると考え、言語実態を重視する立場記述主義と言います。日本語教育で記述主義の立場を取るのは珍しいですが、学問においては記述主義でなければいけません。

 だから   ア   に貼るのは「規範」、   イ   に入るのは「記述」で答えは3です。

(17)規範主義と記述主義②

 学習者の発言に対して、規範主義と記述主義のどちらの立場で判断すればいいのか迷うケースを選びます。

選択肢1

 規範主義では文法的な正しさを重視するので、「全然」に対して否定表現が呼応していない言い方は間違いだとみなされます。でも、実際の言語運用の場面において「全然」に肯定表現が呼応することが多くなってますので、記述主義ではこれを重視します。
 学習者に「全然おいしかった」と言われると、日本語教師はどちらの立場で判断すればいいのか迷いますから、先生は立場を決めておかないと。これが答え。

選択肢2

 イ形容詞のタ形は「イ形語幹+かった」、ナ形容詞は「ナ形語幹+だった」で作ります。この表現はイ形容詞とナ形容詞の活用を混同している誤用で、過剰般化と呼ばれます。これはただの誤用ですので、規範主義においても記述主義においても誤用と判断されます。

選択肢3

 イ音便化して「置いて」と言うべきですから誤用。このケースも判断に悩みません。

選択肢4

 「大事」はナ形だから「大事なもの」や「大事なの」としなければいけません。これも誤用。判断に悩みません。

 答えは1です。

(18)コーパス

 コーパスとは、自然言語処理の研究に用いるための基礎資料として、書き言葉や話し言葉の文章を集積したデータベースのことです。いろんな使い方ができるんですが、その一例としてこんな使い方もできます。「可及的」ということばには「速やか」しか続かないのかを調べたいとき、コーパスで「可及的」と調べると「可及的」が含まれる用例がたくさん出てきます。その用例に「速やか」だけが続いているのかを見れば当初の問題を解決できます。日本語教育でもまあまあ使える。

 1 コーパスは参考文献を見つけるためじゃなくて、実際使われた言葉を集めたデータベースです。
 2 その通り。調べたことの用例がたくさん見れます。
 3 コーパスは言葉のデータベースなので、質問とその答え方とか関係ありません。
 4 実際に使われた言葉をまとめているので、文法的に正しいものもあるし、非文法的なものもあります。

 答えは2です。

(19)コロケーション

 学習者が「傘を使った」と言ってますが、日本語母語話者であれば「傘を差した」という可能性が高いです。「傘」と「差す」は高確率で共起する語と語の組み合わせであり、このような組み合わせをコロケーションと言います。その組み合わせは絶対的なものではないので、「傘を差す」じゃなくて「傘を使う」といっても間違いではありません。崩して使ったとしても問題はないんですが、ただ最も共起する確率が高いものが「傘」と「差す」というだけです。

 1 簡単にいうと、言外の意味
 2 高確率で共起する語と語の組み合わせ
 3 交流
 4 混淆、混交

 答えは2です。

(20)文体の統一

選択肢1

 「すごい」は話し言葉で、他は書き言葉的。文体は統一されていません。

選択肢2

 「けど」は話し言葉で、他は書き言葉です。文体は統一されていません。

選択肢3

 「奥さん」は話し言葉で、他は書き言葉です。文体は統一されていません。

選択肢4

 文体は統一されています。「ご参考されたい」はゆるい場面ではあんまり言わないですが、先生方が講演や学会などで言ったりしますね。

 答えは4です。




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