平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題14解説
問1 素材敬語と対者敬語
敬語の一つの分類に素材敬語(話題敬語)と対者敬語があります。素材敬語は話題の人物(素材)への敬意を表すもので、対者敬語は話題の人物ではなく、話や文章の相手に対して丁重に述べるものです。文章中の「聞き手に対して丁寧な気持ちや態度を表すもの」は対者敬語、「文中に言及される人物への敬意を表すもの」は素材敬語(話題敬語)にあたります。
答えは1です。
問2 謙譲語Ⅰ
謙譲語Ⅰは、自分から相手に向かう行為、物事などについて、その向かう先の人物を立てて述べる表現のことです。なので自分の行為や物事に敬語が使われていて、かつその行為や物事が相手に向かっていれば謙譲語Ⅰと判断できます。
1 「お呼びする」は自分から相手に向かう行為なので謙譲語Ⅰ
2 「いただきます」は、「いただく」は自分の行為で、その行為が相手に向かうので謙譲語Ⅰ
3 相手の状態を「お目にかかる」のは自分で、その行為が相手に向かっているので謙譲語Ⅰ
4 「風が吹いている」は自然現象なので、自分から相手に向かう行為ではなく、聞き手に対して丁重に述べる謙譲語Ⅱです。
答えは4です。
問3 言語使用場面の変化
選択肢1
留学生と日本人という関係であれば、日本人は分かりやすい日本語を使ったり、あるいは媒介語を交えたりしてコミュニケーションをとるかもしれません。でも仲が良くなり、同じく日本で生活している者同士の関係に近づけば、日本人はくだけた話し方に変わります。この選択肢は学習者の言語使用場面の変化として適当です。
選択肢2
確かに来日直後は郵便局や銀行に用事があり、その後は商店やデパートでの会話が多くなりますが、いずれの場面でも丁寧体が使われるのでそれほど言語に変化はありません。この選択肢が答え。
選択肢3
教室内の会話は学習者に伝わりやすいようなティーチャートークが用いられますが、教室外の日本人はそんな話し方をするとは限りません。フォリナートークかもしれませんし、遠慮せずどんどん話しかけてくるかもしれません。場面によって言葉遣いが変わります。この選択肢は学習者の言語使用場面の変化として適当です。
選択肢4
単なる知り合いから親しい友人に変わると丁寧体から普通体へと変わっていきます。この選択肢は学習者の言語使用場面の変化として適当です。
答えは2です。
問4 学習者特有の誤用
この学習者は「言う」の尊敬語「おっしゃる」のマス形を誤っています。「おっしゃります」ではなく、正しくは「おっしゃいます」です。
五段動詞のマス形は動詞語幹に -imasu をつけて作ります。「書く(kak-u)」なら「書きます(kak-imasu)」です。これを「おっしゃる(ossyar-u)」に適用すると「おっしゃります(ossyar-imasu)」になるはずですが、実際は動詞語幹末尾の /r/ が脱落して「おっしゃいます(ossya-imasu)」となります。この活用の例外を知らないために「おっしゃります」と言ってます。
1 「言う」+「お~になる」で「お言いになる」という言い方はありません
2 「おっしゃる」は「言う」の尊敬語です
3 「おっしゃられる」なら「おっしゃる」と「~られる」の二重敬語ですが、「おっしゃる」は二重敬語ではありません
4 上述の通りこれが答え
答えは4です。
問5 話題の人物と話し手と聞き手の関係
「佐藤部長は明日大阪にいらっしゃるそうです。」では、「いらっしゃる」で話し手の佐藤部長に対する敬意を、丁寧体「そうです」で話し手よりも聞き手の方が立場が上であることを表しています。3者の上下関係は佐藤部長>聞き手>話し手になります。
「佐藤部長は明日大阪にいらっしゃるそうだよ。」では、「いらっしゃる」で話し手の佐藤部長に対する敬意を、普通体「そうだよ」で聞き手よりも話し手の方が立場が上であることを表しています。3者の上下関係は佐藤部長>話し手>聞き手になります。
「話し手」と「佐藤部長」はどちらの言い方であっても「佐藤部長」のほうが立場が上です。なぜなら共通して「いらっしゃる」を使っているからです。しかし「そうです」と「そうだよ」の言い方の違いによって、話し手と聞き手の上下関係が変わってしまいます。話し手が丁寧体「そうです」を用いると自分が下である可能性があり、普通体「そうだよ」を用いると自分が上になるからです。
したがって答えは1です。
コメント
コメント一覧 (3件)
お世話様です。
問3「言語使用場面の変化」ではどのように変化しているか、という設問の主旨だと思いますが、正解の(2)はいずれも丁寧体で変化なし、ということで理解しました。しかし、選択肢(1)のご解答では「社会性の高い会話じゃなく、私的な会話が増えるはず」とあり、内容としては誤り、不適当なものになるのでありませんか。いかがでしょうか。ご回答のほどよろしくお願いいたします。
>山法師さん
ご指摘ありがとうございます。こちらの問題、改めて見てみました。
選択肢1は、2人の関係性が変わる(場面が変わる)ことで話し方も変わると思われます。関係が近づけばくだけた表現が増えるからです。学習者の生活場面でくだけた表現が増えるようになれば、教室でもそのような表現を導入していこうというそんな問題なんだと思います。
選択肢の解説は全部修正しました!
選択肢2だけ場面が変わっても話し方がそれほど変わらないように見えます。
おはようございます。
得心いたしました。
ご回答ありがとうございました。