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平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題14解説

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平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題14解説

問1 素材敬語と対者敬語

 敬語は以下の5つに分類されます。

素材敬語 尊敬語 相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて、その物を立てて述べるもの。
 例)いらっしゃる、おっしゃる、なさる、召し上がる、お使いになる、御利用になる、読まれる、始められる、お導き、御出席、(立てるべき人物からの)御説明、お名前、御住所、(立てるべき人物からの)お手紙、お忙しい、ご立派
謙譲語Ⅰ 自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。
 例)伺う、申し上げる、お目に掛かる、差し上げる、お届けする、御案内する、(立てるべき人物への)お手紙、御説明
対者敬語 謙譲語Ⅱ
(丁重語)
自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。
 例)参る、申す、いたす、おる、拙著、小社
丁寧語 話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。
 例)です、ます
敬語に準じるもの 美化語 ものごとを、美化して述べるもの。
 例)お酒、お料理

 上の表の素材敬語とは、話題の中の人物(素材)への敬意を表すものです。
 対者敬語はその場にいる人物(素材)に対するものではなく、自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるものです。

 文章中の「聞き手に対して丁寧な気持ちや態度を表すもの」は対者敬語、「文中に言及される人物への敬意を表すもの」は素材敬語(話題敬語)です。
 したがって答えは1です。

問2 謙譲語Ⅰ

 謙譲語Ⅰは、自分から相手に向かう行為、物事などに付いて、その向かう先の人物を立てて述べる表現のことです。

 1 「お呼びする」は自分が相手のために呼ぶので、謙譲語Ⅰです。
 2 「いただきます」は謙譲語Ⅰ。「もらう」の謙譲語です。「いただく」のは自分で、「招待」は相手の行為だからです。
 3 「お目にかかる」は謙譲語Ⅰです。相手の状態を「お目にかかる」のは自分なので。
 4 「風が吹いている」は自然現象なので、自分から相手に向かう行為ではなく、聞き手に対して丁重に述べる謙譲語Ⅱです。

 したがって答えは4です。

問3 言語使用場面の変化

 学習者の言語使用場面が変化すれば、授業で扱う内容も変わるということを言っています。

 1 留学生と日本人という関係から、日本で生活する者同士という関係に近づくことで話し方は変わります。よそよそしい距離を取るような話し方から、くだけた話し方という風にです。
 2 郵便局と銀行、商店とデパートを対比させた言い方をしていますが、この4つの場面はいずれも丁寧体や敬語を用いた表現が使われています。場面が変わってもそれほど言葉遣いは変わらないです。
 3 教室内の会話は学習者に伝わりやすいようなティーチャートークが用いられますが、教室外の日本人はそんな話し方をするとは限りません。フォリナートークかもしれませんし、遠慮せずどんどん話しかけてくるかもしれません。場面によって言葉遣いが変わります。
 4 単なる知り合いから親しい友人に変わると、丁寧体から普通体へと変わっていきます。

 選択肢2だけ場面が変わってもそれほど話し方が変わるわけではなさそう。
 したがって答えは2です。

問4 学習者特有の誤用

 1 「お言いになる」という言い方はありません。
 2 「おっしゃる」は「言う」の尊敬語です。
 3 「おっしゃられる」なら「おっしゃる」と「~られる」の二重敬語ですが、「おっしゃる」は正しい表現で二重敬語ではありません。
 4 正しいです。

 「おっしゃいました」が「おっしゃりました」になる誤用です。
 「おっしゃる」は「言う」の尊敬語で、マス形に活用する場合はイ音便化します。

 したがって答えは4です。

問5 話題の人物と話し手と聞き手の関係

 「佐藤部長は明日大阪にいらっしゃるそうです。」では、「いらっしゃる」で話し手の佐藤部長に対する敬意を、丁寧体「そうです」で話し手よりも聞き手の方が立場が上であることを表しています。3者の上下関係は佐藤部長>聞き手>話し手になります。

 「佐藤部長は明日大阪にいらっしゃるそうだよ。」では、「いらっしゃる」で話し手の佐藤部長に対する敬意を、普通体「そうだよ」で聞き手よりも話し手の方が立場が上であることを表しています。3者の上下関係は佐藤部長>話し手>聞き手になります。

 
 「話し手」と「佐藤部長」はどちらの言い方であっても「佐藤部長」のほうが立場が上です。なぜなら共通して「いらっしゃる」を使っているからです。
 しかし「そうです」と「そうだよ」の言い方の違いによって、話し手と聞き手の上下関係が変わってしまいます。話し手が丁寧体「そうです」を用いると自分が下である可能性があり、普通体「そうだよ」を用いると自分が上になるからです。

 したがって答えは1です。

 




コメント

コメント一覧 (3件)

  • お世話様です。
    問3「言語使用場面の変化」ではどのように変化しているか、という設問の主旨だと思いますが、正解の(2)はいずれも丁寧体で変化なし、ということで理解しました。しかし、選択肢(1)のご解答では「社会性の高い会話じゃなく、私的な会話が増えるはず」とあり、内容としては誤り、不適当なものになるのでありませんか。いかがでしょうか。ご回答のほどよろしくお願いいたします。

    • >山法師さん
      ご指摘ありがとうございます。こちらの問題、改めて見てみました。
      選択肢1は、2人の関係性が変わる(場面が変わる)ことで話し方も変わると思われます。関係が近づけばくだけた表現が増えるからです。学習者の生活場面でくだけた表現が増えるようになれば、教室でもそのような表現を導入していこうというそんな問題なんだと思います。

      選択肢の解説は全部修正しました!
      選択肢2だけ場面が変わっても話し方がそれほど変わらないように見えます。

  • おはようございます。
    得心いたしました。
    ご回答ありがとうございました。

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