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平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題13解説

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平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題13解説

問1 標準語化

 文章中に「方言が接触すると、両者の使用領域に変化が生じる」とあります。これは方言の言語接触のことです。
 方言の言語接触によって起きる現象は以下の5つに分類されます。

取り替え
標準語化
既存の単語があるところに新たな同義の単語が伝播し、その新たな単語が既存の単語を追いやり取って代わること。
混交 既存の単語と新たに伝播した単語が合わさり、双方の一部分を残しつつ新たな単語が生まれること。
導入 混乱を避けるため、英語などのリンガフランカから全く新しい単語を導入すること。
棲み分け 既存の単語と新たに伝播した単語を多少異なるものとして役割を分担させ、共存させること。
維持 新しく伝播した語を受け入れず、元々の語を維持すること。

 1 セミリンガル
 二言語を使うバイリンガルのうち、どちらの言語も年齢相当のレベルに達していないタイプのことです。セミリンガルは差別的な意味を含むようなので、近年は限定的バイリンガルやダブル・リミテッド・バイリンガルと呼ばれるほうが多くなってきてます。

 2 モノリンガル
 1つの言語のみを使用する人のことです。

 3 中間言語化
 中間言語とは、第二言語学習過程における発展途上にある言語体系のことです。つまりその人が持っている第二言語の知識のことを指します。外国語は勉強すればするほど上手になりますので、自分が持っている中間言語は常に変化しています。
 中間言語化という言葉はあるんですか? 私には分かりません…

 4 標準語化
 上記の表でもあるように、標準語化は「取り替え」とも言います。

 したがって答えは4です。

問2 棲み分け

 言語接触で起きる現象は問1の表を参考にしてください。

 1 混交
 2 棲み分け
 3 導入
 4 維持

 したがって答えは2です。

問3 ネオ方言

 ネオ方言とは、標準語と方言の混淆形式として生まれた中間的な言い方のことです。標準語の「来ない」が関西方言の「けーへん」「きーへん」「きーひん」と混ざりあって「こーへん」が生まれた例が代表的。

 したがって答えは4です。

問4 ピジン? リンガフランカ?

 1 ピジン
 異なる言語を話す者同士が意思疎通するため、お互いの言語の要素を組み合わせて作られた接触言語のことです。お互い正しい意思疎通をするために文法が単純化されたり、一つの単語が多義的に用いられたり、発音も簡略化される傾向があります。

 2 リンガ・フランカ/共通語
 異なった言語を話す人や集団同士の意思疎通に用いられる共通語のことです。日本語を学習している中国人と韓国人が意思疎通するために日本語を使用するとき、日本語が彼らのリンガ・フランカにあたります。現代では英語が全世界に広く普及しているため、単に英語のことを指すことが多くなっています。

 3 ダイグロシア
 ある社会において高変種と低変種の二つの言語変種が存在し、それぞれが場面や状況によって使い分けられている状態のことです。高変種とはいわゆる公的な場面で使用される言語形式のことで、H(High)変種とも呼ばれます。低変種は口語や方言において現れる、より私的な場面で使用される言語形式のことで、L(Low)変種とも呼ばれます。

 4 クレオール
 ピジン言語が長期間使用されることによってその地域に住む人々の母語として定着し、話されるようになった言語のことです。ピジンよりも単語が多くなり、文法が整っている傾向があります。

 「異なる言語を話す人たちがコミュニケーション手段として使う、複数の言語の要素を取り入れて作られた共通語」とありますが、これはまさにピジンの説明だと思います。しかし、答えはリンガフランカでした。この問題はかなり混乱させられます。

 
 リンガフランカについて調べてみたところ…
 リンガ・フランカは元々、5世紀以降ゲルマン民族の大移動によってフランク王国に異なる母語を持つ人々が集まり、ドイツ語、フランス語、ラテン語、アラビア語、ロマンス諸語、ギリシャ語、アラビア語などの複数の言語の語彙や表現が混成した言語だそうです。原義は複数の言語の混成語だそうです。

 原義から見るとリンガ・フランカで正しそう。でもこれはピジンに近い…
 ただ文章中に「共通語」とありますので、これがリンガ・フランカかピジンかを分けるポイントになりそうです。

 したがって答えは2です。

問5 東京方言が影響を受けた地域

 かつて日本の中心が関西地域だったことから、東京方言は関西地域の影響を受けています。
 したがって答えは2です。




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