あて字(当て字)
あて字とは、「ある語に対して漢字の字義を無視して(一部考慮する場合もある)、万葉仮名のように借音、借訓によって漢字をあてたもの」(銭谷 2023: 90)を指します。この例として「亜細亜」「倶楽部」などが挙げられています。銭谷(2023)はこれを狭義のあて字とした上で、広義には漢字の音訓をほぼ無視し、漢字の字義によって漢字を当てた「宇宙」「秋桜」も含むとし、広義のあて字が一般に定着すると「田舎」「浴衣」などの熟字訓となると主張しています。
(1) 心愛(ここあ)
(2) 七音(どれみ)
(3) 瞬間(とき)
(4) 現在(いま)
(5) 麦当劳(mài dāng láo) ※マクドナルド
(6) 肯德基(kěn dé jī) ※ケンタッキー
(7) 星巴克(xīng bā kè) ※スターバックス
あて字は例(1)(2)のように名前に用いられると一般にキラキラネームやDQNネームと呼ばれ、歌の歌詞においても(3)(4)のようなあて字の使用が見られます。中国語にも、McDonald’s や Kentucky を表すために原語である中国語の漢字を当てて(5)~(7)のように言うあて字もあります。上述したあて字の定義に照らせば、狭義の当て字にあたるものは(1)(5)(6)、広義のあて字にあたるものは(2)(3)(4)(7)です。
参考文献
木村義之(2012)「あて字」『朝倉漢字講座 1 漢字と日本語』80-125頁.朝倉書店
銭谷真人(2023)「近世近代における「あて字」と「熟字訓」-人情本の漢字表記を中心に-」『コーパスによる日本語史研究 近世編』89-113頁.ひつじ書房
田島優(2017)『「当て字」の日本語史』風媒社
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