国家資格日本語教員試験 聴解問題対策
『国家資格日本語教員試験 聴解問題対策』という、日本語教員試験や日本語教育能力検定試験の聴解問題に対応した対策本を書きました! 問題作るの大変でした…
この本は次の5章からなっていて、特に音声・音韻、文法に関する短文聴解問題を扱っています。
第1章 アクセント … 拍ごとの高低を見極める問題(50問)
第2章 発音 … 拍、イントネーション、プロミネンス等の問題(50問)
第3章 音声 … 子音や母音に関する問題(50問)
第4章 口腔断面図 … 子音の口腔断面図を見極める問題(50問)
第5章 文法 … 形態・統語的な誤りを含む誤用の問題(50問)
<第1章>
拍ごとの高低を聞き取るアクセント問題は、日本語教員試験で採用されている、上がり目を「/」、下がり目を「\」で表す表記法で50問作りました。試験ですと3問くらいしか出題されないんですが、私個人的には、このアクセントの知識は教育現場で非常に活躍するので、通過点である試験ではなくて、その先の現場で役立つような練習が必要だと思って、多めに50問用意しました。
<第2章>
「ジャングル」が「ジャグル」になったりすると、撥音が脱落して拍の長さが短くなっています。納得「そうですか⤵」が「そうですか⤴」となる場合は文末が上昇調イントネーションになる誤りと言えます。「いつ」と聞いているのに、「8月に行きます」の「行きます」と強調してしまう場合はプロミネンスに誤りがあります。などなど、音韻的な問題をまとめたのがこの2章です。こちらも50問用意しました。
<第3章>
「ありがとう」が「あにがとう」になっている誤りを聞いて、「り」の子音である有声歯茎弾き音[ɾ]と「に」の子音である有声硬口蓋鼻音[ɲ]を比較し、調音点と調音法に誤りがある、という具合に子音や母音の違いを見極める問題がこの第3章です。ここがおそらく鬼門になっている人が多いと思われますので、子音や母音に関する基礎知識の説明から始まり、実際に50問の練習を通して解き方を学ぶような構成にしました。
<第4章>
口腔断面図を体系的に学べる試験対策本というのは、私の管見の限りほとんどありません。でも試験ではぬるっと出題されて、何の知識もないと何がなんだかさっぱり分からないというのがこの口腔断面図の問題です。なので、この本が試験対策本の中で最も詳しい口腔断面図の解説がある本になるよう、めちゃくちゃ力を入れました。実際解説ページだけで12ページくらいあります!
子音の口腔断面図、例えば、特定の音声環境で現れる子音[k]の口腔断面図を書こうと思ったら、その後ろに何の母音が来るかによって舌の状態が異なるので、それも考慮しなければ正確な口腔断面図は描けません。つまり、同じ子音である「か」「き」「く」「け」「こ」は正確に描こうと思えばそれぞれ異なる口腔断面図になってしまいます。でもそうすると、日本語の母音は5つで、仮に子音が10個あれば、全50通りもの口腔断面図を覚えなければいけません。それでは試験対策としては効率的とは言えないので、口腔断面図で見るべきポイントだけを示して、考えなくてもいいところは考慮しないことにし、最も単純化して18種類の口腔断面図だけにまとめました。これでもまだ多いと感じる方には申し訳ないのですが、この18種類の特徴を覚えることで試験の口腔断面図問題は大丈夫になります。そういう方針でこの章を書きました!
<第5章>
ここは最も問題数が多くて100問。例えば「嬉しいなことがありました」のような聴解問題では、その誤りの場所を特定して、なぜその誤りが起きているのかを判断する必要があります。誤りの部分は日本語母語話者であればぱっと気づくんですが、日本語教師の仕事はその先で、その誤りの原因を特定しなければいけません。この場合、イ形容詞である「嬉しい」が名詞を修飾する際には何も介在させないんですが、ここではナ形容詞が名詞を修飾するときに介在する「な」が現れていて、イ形容詞「嬉しい」をナ形容詞だと思っているのでは?という予測が立ちます。したがって、イ形容詞とナ形容詞の混同が見られるという結論になります。この章は音声学的な問題ではなく、聴解問題で出題される文法系の問題を扱っています。
全体を通して…
全体として意識したのは、①現場に役立つものを重視していることと、②解説を重視したことです。
アクセントの誤りは学習者に合えば必ず生じますし、訂正する必要もでてきます。発話させれば音声上の問題が生じますから、場合によっては口腔断面図などを利用して訂正できれば、とても分かりやすい訂正になります。こんなにも教育現場で使える知識が試験では数問しかなかったりするので、私はちょっと試験と現場の乖離を感じています。なので、試験の出題頻度に比例して重要度を決めるのではなくて、私は私の感覚で、教育現場で重要だと思ったものを取り上げました。そのため、出題数が少ない問題であっても、ちゃんと50問用意しました。
あとは、とにかく解説を多めに…と心がけました。特に第5章はホントに多め。学習者の発話を聞いてどこが間違っているかは日本語母語話者ならほぼ誰でも分かりますが、その原因を特定するには文法的な知識が必要です。ここが日本語教師の技の見せ所なんです。原因を特定すれば効果的な指導ができますが、誤用の原因が分からなければ正しい表現を提示するだけになってしまうので… その誤用の原因をとにかく詳しく書きました。
本書の弱みと強み
日本語教員試験の聴解問題では音声や文法問題も出ますが、長文聴解問題では”この教師が使っている教授法は何か?“みたいな、音声でも文法でもない問題も出題されます。そうした問題は本書では扱っていません。本書は特に音声・文法に焦点を当てていて、それを学ぶにあたって最も良い形式は何かということで、短文聴解問題という形を取りました。長文聴解問題でも音声・文法問題は出題されますが、ある誤用を出題するなら長文である理由はありませんから、そうしたものは全て短文聴解問題に集約しています。
したがって、編集者の方にはあんまり正直に言わないでいいかもって言われたんですけど、正直なところ、この1冊でいわゆる「聴解問題」全てに対応できるわけではありません。むしろ、基礎試験と聴解を含む応用試験、全ての試験における音声、文法に関する対策本という立ち位置が正しいです。
つまり、現場がどうであるかは置いといてまず試験対策としてやりたいという方、聴解問題を全体的に対策したいという方のニーズはあまり満たせないのでご注意ください! 一方で、読解や聴解などの出題形式は問わず、音声・文法が苦手という方には非常におすすめです。

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