移動動詞はなぜ自動詞?

日本語Q&A

質問者さん
(日本)

他動詞と自動詞を見極めるときに「~を+動詞」なら他動詞、「~が+動詞」なら自動詞というのは分かりますが、「~を」が起点・経路を表す場合は自動詞になるってどういうことですか?

管理人

「家を出る」は「出る」の起点が「家」ですね。「交差点を曲がる」は「曲がる」の経路が「交差点」です。述語が移動を表す動詞(移動動詞)だったとき、その起点や経路は「を」で示されます。でも「を」があるからこれは他動詞だ!と思うと間違いです。他動詞はその物に何か変化を加えたり何らかの働きかけをします。「出る」「曲がる」は「家」や「交差点」の形状、位置、状況を変えているわけではないので他動詞じゃないんです。つまり、移動動詞はぜーんぶ自動詞です。

詳細

 他動詞は事物の形状や位置を変えたり、状況そのものを変えたり、事物に対して何らかの働きかけをしたりする動詞です。

 (1) 窓割る。     (形状変化の対象)
 (2) 荷物片付けた。  (位置変化の対象)
 (3) 部屋掃除した。  (状況変化の対象)
 (4) パソコン買った。 (働きかけの対象)

 他動詞はその事物を「を」で表します。上の例文の「を」の左側の名詞は変化や働きかけを受ける事物。この「を」で表された成分は対象です。こういうことから「を」があると他動詞ですよーって簡易的に教えるんです。
 
 でも移動を表す移動動詞を見てみましょう。

 (5) 家出る。      (起点)
 (6) 交差点曲がる。   (経路)
 (7) 楽しい一日過ごす。 (経路)

 これらの述語は「を」で示された名詞に対して何か変化を与えてますか? 「出る」という動作によって家が何か変化や影響がありますか? それがないんです。ただの移動の起点や経路であって、働きかける対象ではないから。だから移動動詞は他動詞じゃなくて自動詞。この「を」は対象の「を」じゃないんです。一般に起点の「を」、経路の「を」なんて呼ばれます。

 こういうことなんで「『~を』が起点・経路を表す場合は自動詞になる」「移動動詞は自動詞」と説明されます。




コメント

コメント一覧 (2件)

  • 違います。移動動詞は他動詞です。そもそも歩くの意味をwalkにしていること自体が間違えです。
    歩くの英訳はuse the road on foot.です。足を使って移動をするために道を利用するという意味です。
    移動動詞が他動詞である根拠として、受身形の存在があります。

    富士山は毎年多くの観光客に登られている。

    移動動詞を他動詞にした方が文法的例外がなく、あらゆる表現を矛盾なく説明できます。
    一方移動動詞を自動詞にした場合、「を」や「受身形」の存在など、例外が生じてしまいます。

    もちろん現行日本語文法では移動動詞が自動詞とされていることは認識しています。
    しかし、上を踏まえてもなお移動動詞を自動詞にしたがる根拠を知りたいです。
    学習のしやすさといったところでしょうか。

    • >tenzinさん
      毎日のんびり日本語教師です。コメントありがとうございます! お答えしますね。
      一般に「を」は3つの意味があると言われます。対象、経路、出発点です。

      (1) 窓を壊す。 <対象>
      (2) 橋を渡る。 <経路>
      (3) 家を出る。 <出発点>

      このうち(1)だけが他動詞だと説明されることが一般的ですが、これに関しての私の見方はこうです。
      (2)の「を」は「~を通って(移動する)」みたいな言い方に言い換えられますが、(1)(3)はそれができません。(3)の「を」は「~から」に言い換えられますが、(1)(2)はそれができません。だから(2)は経路、(3)は出発点の「を」となり、(1)とは区別されます。この違いにとって(2)(3)を他動詞と呼ぶことはできないんだと思います。

      ちなみに、他動詞の定義はおよそ2つあります。一つは「対象のヲ格をとる動詞」ですが、もう一つは「直接受身にできる動詞」です。tenzinさんご指摘の「富士山は毎年多くの観光客に登られている」は直接受身文ですので、この文に使われている「登る」を他動詞だとするのは2つ目の定義に基づくものです。そしてtenzinさんの”直接受身にできる移動動詞もあるみたいだ”という指摘は寺村(1982: 230-231)でも指摘されていますので、あわせてご覧いただければと思います。たとえば(4)のような文です。

      (4)a 何者かが 金庫室に 入った。
         b 金庫室が 何者かに 入られた。
      (5)a 彼が 教室に 入った。
         c *教室が 彼に 入られた。

      (4)も(5)も「入る」という動詞がありますが、対応する能動文を作ろうとすると(4b)は許容度が高いのに対し、(5b)は許容度が低くなってしまいます。(4)の「入る」はただの移動を表すだけではなくて、ここでは「侵入する」というような移動+他動の意味を持っていると考えられます。だから直接受身になるものと考えられます。一方(5)の「入る」は単なる移動の意味なので直接受身にならないものと考えられます。

      寺村(1982: 227- 230)は経路・出発点を「を」でとる移動動詞は基本的には直接受身にはできない傾向があるようだ、という論調で述べているので、他動詞のどちらの定義を用いても移動動詞は自動詞寄りであると言えそうです。たまに(4)のように他動性を含んだ移動動詞が文脈依存で現れることもあるんですけども。

      何かさらにご質問等ありましたらご返信ください!

      参考文献:寺村(1982)『日本語のシンタクスと意味Ⅰ』くろしお出版

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