日本語Q&A
質問者さん(日本)
どんなときに対立し、どんなときに対立しないのでしょうか。
管理人
例えば、「着る」は対象に影響を及ぼす度合いが低いので「赤い服を着ている女性」と「赤い服を着た女性」のように意味が同じなんですが、「食べる」はその度合いが高いので意味が異なります。
「ている」と「た」
角田(2009)は世界の諸言語の二項をとる述語の格フレームを調べて、二項述語階層というのを提唱しました。二項述語階層はここでは説明しきれないので、詳しくは参考文献をご覧ください。で、この二項述語階層における動作が対象に及ぶ度合いが高い述語は、名詞修飾節の中の「ている」と「た」がアスペクトで対立し、意味が異なる傾向が見られることを指摘しています(角田 2009: 121)。
(1)a 彼が殺している人 (進行中)
b 彼が殺した人 (完了)
(2)a 彼が壊している窓 (進行中)
b 彼が壊した窓 (完了)
(3)a 彼が食べているご飯 (進行中)
b 彼が食べたご飯 (完了)
例えば、「殺す」は相手の命を奪い、「壊す」は形状を大きく変化させ、「食べる」は口に運んで体に取り込むことを表す動詞で、いずれも対象に対して影響を与える動きを表しています。このような動詞は(1)~(3)のように名詞修飾節内の「ている」で進行中、「た」で完了を表し、意味が対立します。
(4)a 赤い服を着ている女性
b 赤い服を着た女性
(5)a 財産を持っている人
b 財産を持った人
(6)a 母に似ている妹
b 母に似た妹
一方、「着る」「持つ」「似る」のように対象に影響を及ぼす度合いが低い動詞は、名詞修飾節内の「ている」と「た」が対立せず、同じ意味を表す傾向があります。(4)~(6)のaとbはいずれも意味が同じです。
動作が対象に及ぶ度合いが高い動詞は動きを表す動詞だから動作局面が明確に存在しますが、その度合いが低い動詞はどちらかというと状態を表す動詞なので動作局面が見出しにくかったり、あるいは完全に無かったりするようです。だから前者は意味がアスペクト表現に応じたものに変化するのに対し、後者はそのような意味の変化が見られないということなんでしょう。
参考文献
角田太作(2009)『世界の言語と日本語 改訂版―言語類型論から見た日本語』100-102,121頁.くろしお出版

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