平成28年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題8解説
問1 ディクトグロス
1 教師が読む文章を聞いてメモをとり、メモをもとに読み上げた文章を個人で復元する活動(→ディクトコンポ)
2 ディクトコンポの復元活動をペアやグループで行う活動(→ディクトグロス)
3 聞いた音声を聞いたまま書き取る活動(→ディクテーション)
4 ???
<資料1>の活動は教師が読む文章を聞いてメモをとり、メモをもとにしてグループで元々の文を再現する活動をしています。これはディクトグロス。
答えは2です。
問2 テクストを選ぶ際の留意点
選択肢1
既習の語や表現ばかり使って簡単に覚えられるような文を使ってディクトグロスをさせると復元する際の難易度が下がります。ある程度注意深く聞かないと理解できないような文章にしたほうがよさそう。この選択肢は間違い。
選択肢2
選択肢1と同様に、簡単に記憶できる長さの文章だったらディクトグロスが簡単になってしまうので、グループで復元作業をしてやっとできるっていうくらいの文章の長さにするといいと思います。この選択肢は間違い。
選択肢3
新出語を20%含んだほうがいい、という数字の根拠が不明です。100文字の文章なら20文字、200文字の文章なら40文字の新出語を含めたテクストがディクトグロスに向いているとする根拠もない。この選択肢は間違い。
選択肢4
このクラスは中級前半レベルの 文法 ・読解クラスなので、文法項目に焦点を当てたテクストを用意すべき。
答えは4です。
問3 活動の流れ
選択肢1
参加者は中級前半レベルだから、その中でさらにレベル分けする必要なし。この選択肢は間違い。
選択肢2
活動の流れ①に「普通のスピードで」と書かれているので、テクストは調整せずに普通のスピードで読み上げます。この選択肢は間違い。
選択肢3
中級前半だから話し合いのすべてを日本語で話せるとは限りません。そういう学習者には場合によって母語を使いながら文章の復元をさせてもよし。この選択肢が答え。
選択肢4
毎回同じグループで文章を復元させると、復元のストラテジーが固定化してしまいます。継続的に行うのであれば、毎回違うペアやグループで行ったほうがいいし、その方が変化があって盛り上がりやすい。この選択肢は間違い。
答えは3です。
問4 文法に関わる産出上の問題
「入られていない」は正しくは「入っていない」
「ねずみがねこにだました」は正しくは「ネコがネズミにだまされた」
「ねこにおしえられました」は正しくは「ネズミに~教えられました」
「神さまはおこった」は正しくは「神様に怒られ」
こんな感じで学習者は受動表現に問題があります。
答えは1です。
問5 期待される効果
選択肢1
学習者が自分でメモしたキーワードから文章を復元する際に文法や規則性を意識することになり、これが暗示的な指導を実現します。答え合わせの段階で教師は文法について説明するので、これが明示的な指導にあたります。この選択肢は適当。
選択肢2
テクストを聞くのがインプット、文章を再構築するのがアウトプット。この選択肢は適当です。
選択肢3
学習者がキーワードをもとに文章を復元します。この過程で言語形式に意識を向けることにはなりますが、自動化は促進されません。自動化は文法とか単語とか考えなくても口から出るような状態、処理が自動的に行われる状態を指します。ディクトグロスでは自動化を促すようなことはかなり難しい。
選択肢4
自分で作り上げた文章と答えの文章を比較することによって、学習者自身の中間言語と目標言語の違いを比較でき、気付かせることができます。この選択肢は適当。
答えは3です。
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