平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

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平成25年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

(1)後舌非円唇狭母音

 日本語の簡易的な母音表貼っておきます。

 [ɯ] は非円唇後舌狭母音。
 答えは3です。

(2)「シャ」の国際音声記号

 「シャ」を国際音声記号(IPA)で表すと [ɕa] と書きます。

 1 [ɕa] シャ
 2 [ça] 日本語にないけど、「ひゃ」に近い音
 3 [sja] 無理やり日本語で書くなら「すや」
 4 [sya] 無理やり日本語で書くなら「すぃあ」

 答えは1です。

(3)ラ行音

 日本語のラ行子音は [ɾ] で有声歯茎弾き音です。
 答えは3

(4)異音

 異音とは、ある言語において同一の音素に含まれる異なる複数の音声のことです。詳しくはリンク先から。

選択肢1

 ナ行子音は、母音 [ɑ][ɯ][e][o] の前では [n] が現れ、[i] の前では [ɲ] が現れます。
 つまりナ行子音 /n/ には二つの異音 [n] と [ɲ] があります。

選択肢2

 ヤ行は母音 [ɑ][ɯ][o] しかないですが、全ての母音において [j] が現れます。
 ヤ行子音 /y/ にはたった一つの音 [j] があります。(一つしかないから異音と言わない)

選択肢3

 マ行子音は、全ての母音の前で [m] が現れます。異音はありません。

選択肢4

 ハ行子音は、母音 [ɑ][e][o] の前で [h] になり、[i] の前で [ç] になり、[ɯ] の前で [ɸ] が現れます。
 すなわちハ行子音 /h/ には三つの異音 [h][ç][ɸ] が含まれます。

 異音が一番多いのは選択肢4.
 答えは4です。

(5)対立的分布

選択肢1

 中国語と韓国語では気音の有無(有気音と無気音)によって意味が区別されますが、日本語では声帯振動の有無(有声音と無声音)によって意味が区別されます。[k]と[g]は無声音と有声音なので、日本語では対立しますが、韓国語では対立しません。

選択肢2

 [p]は無声両唇破裂音で、[pʰ]は有気音の無声両唇破裂音です。中国語では中国語と韓国語では気音の有無(有気音と無気音)によって意味が区別されます。したがってこの2つは対立的分布をなします。

選択肢3

 [kita]は、母音[i]が無声子音[k]と[t]に挟まれているので、普通に発音するときは[i]が無声化します。これを母音の無声化と呼びます。[i]の下に丸がついているのは、[i]が無声化することを表しています。つまり、[kita]ははっきり「きた」と発音するのに対し、[ki̥ta]は、母音[i]が無声化するため、およそ「kた」と発音されます。
 しかしながら、「きた」と「kた」ではどちらも意味は同じで区別されません。つまり[kita]と[ki̥ta]、[i]と[i̥]は対立的分布をなさないということです。

選択肢4

 [íːst] と [fíːld] の母音は [í] でどちらも同じです。対立的分布をなしません。

 答えは1です。




コメント

コメント一覧 (2件)

  • IPA表示について
    いつもありがとうございます。
    ところで、IPA表示について、先生の「日本語の音素と音声の対応表」では、「ち」と「つ」を「ts(伸びている形)i 」「tsw」と表示されています。別の表では、「tc(下が丸まってる)」「ts」
    使い分けが必要なのでしょうか?

  • >マシュマロさん
    コメントありがとうございます。
    すいませんが、質問の意味が分かりません…。当サイト、毎日のんびり日本語教師には「日本語の音素と音声の対応表」というページは存在しません。ご質問の場所を間違えているのではないかと思います。

    私がまとめているIPA表記は「母音と子音の分類とIPA表記(https://nihongonosensei.net/?p=8737)」です。

    質問から推測してお答えします。
    日本語の「つ」の子音は無声歯茎破擦音なので、IPA表記は[ts]です。
    「ち」は無声歯茎硬口蓋破擦音で[tɕ]です。

    そして、日本語の母音は[a][i][ɯ][e][o]の5種類です。「ウ」は[u]ではなく、[ɯ]なので注意してください。

    ですから「つ」自体はIPAで[tsɯ]と表記します。
    同様に「ち」は[tɕi]です。

    マシュマロさんは「つ」を[tsw]と言っていますが、[w]ではありません。[ɯ]です。
    もしかしたら見間違えたのではないでしょうか。

    使い分けという言い方は正しくないような気がしますが…
    「タテト」は[t]、「チ」は[tɕ]、「ツ」は[ts]、それぞれ調音点、調音法が異なるので子音が違います。子音が違うと表記も変わります。ですからマシュマロさんが言う、”使い分け”は当たり前なのです。

    声帯振動、調音点、調音法のいずれかが違えば音も違い、表記も変わります。IPAを勉強する際はこういった点にご注意ください!

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