お昼過ぎ、2年生の牛さんが私に話をしてきました。
「この話は、先生は他の人に教えない。いい?」
つまり、秘密の話なので誰にも言わないでくれということらしい。何やら深刻な話が始まる予感がしたので、ぐっと構えて話の続きを促しました。
「インターネットで買い物をして、お金を奪われた。」
日本語が不自然なのでいつもなら訂正をしますが、その時だけは黙って聞いてました。
「1500元」
日本円でおよそ3万円。学生にとっては1ヶ月のお小遣いに相当する額です。
どうやらとっても安い服をたくさん買ってお金を払ったら、詐欺だったらしい。授業が終わったら警察に行って事情を説明すると言っていたんですが、彼女の元気のなさを見ると、恐らく犯人が捕まることはないんだろうなぁと直感しました。
日本でネットショッピングをしてお金を銀行やコンビニなどで振り込んだら、間違いなく商品は届きます。それは大手だろうが小売店だろうが関係ありません。日本にいるときは、ネットショッピングでの詐欺なんて毛頭考えていませんでしたが、中国では普通に存在しているようなのです。彼女だけではなく、他にも詐欺にあったという学生を知っています。金銭の貸し借りはあまり気が進まないのですが、「君が本当に本当に困ったら、私に言ってください」と伝えました。これを”授業料”と呼ぶにはあまりに可哀想ですね。
その後16時過ぎから1年生の王さん、曹さんと一緒に買い物。バスで10分~15分くらいでしょうか、”万达”という廊坊市の大型商業施設の近くにある”尚秀街”へ。目的は服です。尚秀街のほとんどが服のお店ですから、奇抜でない限り見つからないものはないでしょう。安いので学生からも人気のよう。
問題なのはここから。学生に通訳してもらいつつ、とある店内に入った時のことです。私の言葉が中国語でないことが分かったのか、女店員が学生にしつこく話しかけています。私でも聞き取れました。中国語で「彼はどこの国の人だ?」。学生たちは無言、というより無視。店員の顔が鬼の形相になって、接客に適していない声で何度も何度も聞いてきます。少し危険を感じたので店をすぐ出ました。
中国が一番嫌いな国は日本です。これは紛れも無い事実で、私自身も当然知っています。先日のタクシーでの出来事もありますから、この程度ならいつでも覚悟をしています。しかし今回は一つ気にかかることがありました。それは、同伴した学生が「彼は日本人です」と店員に言わなかったこと。学生達は「この女店員は日本人が嫌いなのだろう」と察知したのかもしれません。私にとっては悲しい配慮でした。「彼は日本人です」と、仮に店員を怒らせたとしても言って欲しかった・・・ そう思っている自分がいます。しかし、それを言わなかったのは学生達の配慮に違いありません。何気なく買い物をするだけで迷惑をかけている。日本人と日本語学生の肩身の狭さを痛感させられます。
買い物後の帰り道。次はバスの中での出来事です。曹さんが何やらカバンの中を確認しています。次第に焦っていく様子が見て分かり、そうこうしているうちに王さんが
「曹さんの携帯がなくなった。」
非常に驚きました。日本で携帯を落としても大体手元に戻ってきますが、中国で落とすということは間違いなく戻ってこないことを意味します。
「バスを降りて捜そう。」
私はそう言いましたが、彼女らは諦めの顔。
「バス停で待っているときに盗まれた。」
私は彼女の隣にずっと居ましたが、本当にまったく分かりませんでした。彼女はとても悲しそうな顔をしていたので、いつどこでどうやって無くしたのかという情報を聞くにも聞けず。友達の携帯を使って電話をしたら電源が切れていたようなのです。スリではなく彼女自身が携帯を落として、それを誰かが拾って電源を切った。だから「盗まれた」と表現したのかもしれません。彼女に何度も聞きました。
「本当に携帯は戻ってこないの?」
「絶対戻らない」
そういった携帯は一体どこに行くんでしょうか。端末は売られてお金になるんでしょうか。落ちている携帯を見つけたら、日本であれ中国であれ、ちゃんと警察に届けて欲しいものです。
今日は中国の闇の部分がよく見えました。携帯はここ、財布はここ、というように決めておいて、何か動作をするたびに確認する癖をつけておく必要があります。私も今後十分気をつけます。

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