平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題5解説
問1 ビジターセッション前に行う目的
ビジターセッションでは母語話者と学習者がペアになって話し合います。その前に学習者同士で話し合う、というのが1回目の活動です。この1回目の活動はどうしてビジターセッション前に行う必要があるんでしょうか。
選択肢1
学習者は母語話者と話し合う際に正確な日本語でスピーチする必要はありません。活動の目的は情報交換なので、つたなくても伝わればおk。実際<資料2>では正確な日本語が使われていませんし。この選択肢が答え。
選択肢2
1回目の2で、1回目の1で練習した内容を実際に使う機会が得られます。
選択肢3
事前に学習者同士の話し合いで練習しておくことで、表現できることとできないことを明確にさせられます。すると表現できないことをビジターセッション前に改善しようという意欲が生まれるかも。
選択肢4
事前に学習者同士の話し合いで練習しておくことで緊張感を緩和させられるかもしれません。
答えは1です。
問2 効果的ではないもの
田中さんは「しょ、く、ぶ、つ、えん」と言いましたが、チャイさんはそれが分かりませんでした。このときにチャイさんに「しょくぶつえん」を理解させるための方法としてダメなものは何でしょう。
1 絵を描いて説明するのは効果的
2 相手はタイ出身の初級者だから、「植物園」の漢字が理解できないと考えるべき
3 分かりやすいように言い換えるのは効果的
4 直接意味を指し示すのは効果的
答えは2です。
問3 終助詞「よ」
チャイさんは下線部Cの場面では「そうですね」と「ね」を使って相手の話に同意するのが正しいですが、「そうですよ」と言ってしまいました。この「よ」はどうしてダメか、という問題です。
(1) こうしたほうがいいですよ。 <情報提供>
(2) この歌はとても良いですよ。 <情報提供>
「よ」は自分の意見を伝えたり、聞き手の知らない情報を話し手から提供するときに使います。田中さんは植物園の良いところについて「レストランが多いところ」「駅の近く」「食べるのが好き」といくつか理由を挙げ、それに対してチャイさんは「そうですよ」と言ってしまいました。つまりチャイさんは田中さんが述べた情報を、「よ」を用いて田中さんに提供してしまったわけです。だからだめ。
よって答えは4です。
問4 不自然な点に対する教師の対応
学習者は「そうですか」と言うべき場面で「そうですよ」と言ったり、<資料2>の最後に「あー、いいです。」と意味の通じない言葉を言っています。会話全体を通して、学習者と母語話者の意思疎通はあまりできていないように伺えるので、まずは文法の正確さよりも円滑なコミュニケーションを身につけるべきです。それはこの授業の活動の目的でもあります。
また、この授業では母語話者と学習者がペアとなってビジターセッションを行います。この会話中に教師がその都度誤用を訂正するのは会話の流れを著しく妨げることになりますので好ましくありません。活動後に訂正すべきです。
だから答えは3です。
問5 アドバイス
1 相手は初級者ですので、モダリティ表現を多用することは望ましくありません。
2 初級の段階では擬音語や擬態語をほぼ学ばないので使わないほうがいい
3 初級でも簡単な外来語は学びますが、わざとできるだけ使うようにする必要はなし
4 初級では省略形を身につけていない場合が多いので、円滑なコミュニケーションのためにも完全な文を使って話すべき
答えは4です。
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