6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題12解説

目次

平成26年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題12解説

問1 リンガフランカ

 1 リンガフランカ(共通語)
 異なった言語を話す人や集団同士の意思疎通に用いられる共通語のことです。日本語を学習している中国人と韓国人が意思疎通するために日本語を使用するとき、日本語が彼らのリンガ・フランカにあたります。現代では英語が全世界に広く普及しているため、単に英語のことを指すことが多くなっています。

 2 スラング(俗語)
 ある特定の集団の中で用いられる、一般的に品の無いとして認識されている言葉のことです。

 3 スティグマ
 社会的に差別されることになる要因のことです。外見が異なる、言語が異なるなどが原因となって差別に繋がったりなど…。いじめとも関係が深そうです。
 
 4 ドメイン
 言語の使用領域のこと。あるいはネット上の住所のこと。

 文章中に「共通語」とあるのがポイントになります。
 したがって答えは1です。

問2 ピジン

 ピジンとは、異なる言語を話す者同士が意思疎通するため、お互いの言語の要素を組み合わせて作られた接触言語のことです。お互い正しい意思疎通をするために文法が単純化されたり、一つの単語が多義的に用いられたり、発音も簡略化される傾向があります。また、その単純化、簡略化される過程をピジン化(言語の単純化)と呼びます。

選択肢1

 複合語や繰り返しが何を指してるのかよく分かりませんが、ピジンは単語が少ないので、その限られた単語で意思疎通するために繰り返しが多くなったり、限られた単語を組み合わせて複合語を作るようなケースが多いのだと思います。

選択肢2

 母語が違う者同士の意思疎通のためにはできるだけ複雑な文法を使わないほうが良さそうです。言語を組み合わせる際、文法などは単純化され、伝わりやすく変化します。

選択肢3

 ピジン言語は単語の数が少ないので、限られた単語で意思疎通を行うために、一つの単語が多義的になります。意味範囲は広いです。

選択肢4

 母語が違う者同士の意思疎通のため、文法と同じく発音も簡略化されます。とにかく簡単、簡単なほうに変わっていくのがピジンです。

 したがって答えは3です。

問3 ダイグロシア

 1 バリエーション
 言語変種(variation)の英語です。言語変種とは同一言語の中の異なった言語形式のことで、標準語や方言、性差や年齢、立場、職業などの違いによって異なる言語形式を持つもの全てを指します。

 2 言語使用域/レジスター
 場面や状況、内容、人間関係、口頭か文書か等に応じて使い分けられる言語変種のことです。例えば、母親の前では「ママ」、学校などで母親について触れるときは「お母さん」、比較的改まった場では「母親」と呼んだりすることが挙げられます。つまり、同じ役割を持つ語を状況によって使い分け、それぞれの語がそれぞれの使用域を持っていると考えます。

 3 ダイグロシア
 ある社会において高変種と低変種の二つの言語変種が存在し、それぞれが場面や状況によって使い分けられている状態のことです。高変種とはいわゆる公的な場面で使用される言語形式のことで、H(High)変種とも呼ばれます。低変種は口語や方言において現れる、より私的な場面で使用される言語形式のことで、L(Low)変種とも呼ばれます。

 4 ダブルスタンダード
 同じ事柄を、二つの異なる基準で評価すること。日本語教育能力検定試験とは関係ない言葉です。

 「威信の高い言語と低い言語」が大ヒントで、分かりやすく高変種、低変種のことですね。
 したがって答えは3です。

問4 コード・スイッチング

 1 イマージョン・プログラム
 学校で二つの言語を使い分け、第一言語を維持しながら第二言語を習得させるとともに教科学習も行う教育のことです。(イマージョンは「浸す」の意)

 2 スピーチレベルシフト/スピーチスタイルシフト
 1つの場面で1人の話者が普通体から丁寧体、あるいは丁寧体から普通体へと切り替えて丁寧さの度合いを変化させることです。

 3 アコモデーション理論
 ジャイルズ (Giles)によって提唱された、相手によって自分の話し方を変える現象を説明するための理論です。

 4 コード・スイッチング
 相手や場面、話題に応じて言語そのもの、あるいは同一言語内の言語変種を使い分けることです。標準語も方言を言語変種のため、これらを使い分けることもコードスイッチングの一種です。

 「場面や状況に応じて二つの言語を使い分けている」という言葉がコードスイッチングですね!
 したがって答えは4です。

問5 連続バイリンガリズム

 2つの言語を使用するバイリンガルはいろんな種類に分けられます。

習得時期 達成型バイリンガル 子ども時代を過ぎてから第二言語を使用するタイプ。
獲得型バイリンガル 幼児期から第二言語を使用するタイプ。幼児期から二言語に触れることで同時に獲得したタイプを同時バイリンガル、1つ目の言語を習得してから2つ目の言語を習得したタイプを連続バイリンガルと呼ぶ。
母語との関係 付加的バイリンガル
加算的バイリンガリズム
第二言語習得によって母語や母語の文化が失われず、更なる価値観が得られるタイプ。
削減的バイリンガル
減算的バイリンガリズム
第二言語習得によって母語を失ったり、母文化を損なうタイプ。

 1 3言語話すのはトリリンガルです。
 2 連続バイリンガルの記述です。
 3 獲得型バイリンガルの同時バイリンガルです。
 4 削減バイリンガルの記述です。

 したがって答えは2です。




コメント

コメントする

目次