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「お祈りいたします」は二重敬語?

日本語Q&A

質問者さん
(日本)

「お祈りいたします」は、謙譲語Ⅰ「お祈りする」と謙譲語Ⅱ「いたす」の二重敬語だと思います。この理解は正しいでしょうか。

管理人

二重敬語は「一つの語に同じ種類の敬語を2つ以上くっつけたもの」を指します。「お祈りいたします」は、「祈る」に謙譲語Ⅰ「お~する」をつけ、さらに「する」を謙譲語Ⅱ「いたす」に変えたものです。「祈る」に謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱ、異なる種類の敬語をくっつけています。これは二重敬語とは言いません。

敬語の指針を見て!

 敬語の問題は絶対文化庁の『敬語の指針』を参考にしてください。

 まず二重敬語の定義ですが、30ページにはこのような記載があります。

 一つの語について,同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。

 例えば、「祈る」に尊敬語「お~になる」をつけて「お祈りになる」とすれば一重敬語ですが、さらに尊敬語「~られる」をつけて「お祈りになられる」とすると二重敬語になります。一つの語「祈る」に対して尊敬語を二重に使っているので。

 ただし、「お祈りいたす」は二重敬語ではありません。

 (1) 祈る
 (2) 祈りする  (謙譲語Ⅰ「お~する」)
 (3) お祈りいたす (謙譲語Ⅱ「いたす」)

 「祈る」に謙譲語Ⅰ「お~する」をつけて、この「する」をさらに謙譲語Ⅱ「いたす」に変えたものが(3)です。一つの語「祈る」に対して謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの両方が使われていますが、この2つは同じタイプの敬語ではないので二重敬語にあたりません。謙譲語Ⅰ「お~する」によって「祈る」という行為の向かう先である人物を立て、謙譲語Ⅱ「いたす」によって話や文章の相手に丁重に述べています。
 これについては文化庁の「敬語の指針」20ページの【補足イ】に詳しく書かれていますのでそちらを参考にされてください。

参考文献

 文化庁(2007)『敬語の指針




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